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終わりと始まりと

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 私のために用意されたパーティー会場は屋敷の大広間。27歳ということもあり、身内のみでやろうということになってはいたが、誕生日パーティーということで、広間へはいつもより着飾って向かっていた。この日のために新たに下ろした薄桃色のドレスはパールがあしらわれていて、とても綺麗だ。メアリーに結わいでもらいつけてもらった花飾りがゆらゆらとゆれているのを感じながら、大広間までの廊下を一人で歩く。いつもは使用人たちのいる廊下だけれども、何故だかこのときばかりは人気がないのを不思議に思いながらも、気が付けば目的の大広間の扉の前に着いていた。

 木製でできた扉に少し力をかければ、すーと音もなく開いて、広間の中央付近にいる人物と目が合った。それは、父と母、そして弟でもなく……。

「誰?」

 見知らぬ男性……いや、少年というべきか。整った顔の造形をしているが、まだ少し幼い印象を受ける。おそらく、年は20も数えないのではないだろうか。

 亜麻栗色の髪に宝石のように澄んでいるエメラルドグリーンの瞳。切れ長の二重瞼が涼し気だ。白いタキシードのような服を纏い、身なりはきちんとしている。身長は高く、スラリとしている。180センチほどだろうか。そんな“彼”は、私を認めてスーと目を細めたかと思うと、次の瞬間にはぱぁと花の咲いたような笑みを浮かべた。
 
「貴女に“再び”お会いできるのを楽しみにしていました」

 “彼”はそう言いながら私の方へゆっくりと近づいてくる。優雅な歩きに気圧されながらも

「以前お会いしましたか?」

どうにかそれだけ尋ねる。彼は「えぇ」と頷いて私の前に立ち止まる。まるで僥倖の女神に出会ったかのような表情を浮かべ私をまじまじと見る。

一体、どういう状況なのだ!?と盛大に混乱していると

「え?」

今度は突然片膝をついて私を見上げ、“彼”は自らの左手で私の左の手を優しく掴んだ。

「お忘れですか?」

くすっとどこかいたずらめいた表情を浮かべる“彼”。

「あなたと10年前に結婚の約束をしたレイ……『レイ・ガルシア』ですよ」

そういって、『レイ・ガルシア』と名乗る少年は私の左手の甲に口づけをした。


♢ ♢ ♢


婚約者は『突然に』。
彼との再会から私の人生は大きく変わることになった。
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