甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:90 赤過ぎるふたり

＊11＊

私達は付き合っているわけではない。そもそもビジネスパートナーである。彼が私のことをどう思っているかはっきり言葉で聞いたわけでもない。なのに先に進んでしまっていいのだろうか。

───ちゃんと気持ち伝えてトキのも聞いてそれからにしないと・・・。

ドラマや漫画で恋人でもない二人が、お酒の勢いだとかその場の流れで一つになる場面を見て、なんでそんなことをするんだろうと嫌悪感を覚えていた。

どんなに対策をしたってリスクのある行為だ。そんなに軽々しくしてしまってはならない。学生時代に初めて付き合った彼氏は、私がまだその気持ちになれないからと数回断ったら別れを切り出してきた。そんな人に初めてを捧げなくてよかったと心から思った。

そして次に付き合ったあの男性とは、私の中では将来まで考えていた。だから彼を受け入れた。なのに───私の初めては、彼女と触れ合えない寂しさを埋める為に使われたのだった。私とひとつになりながら彼が想っていたのは私ではなくあの頃の私の容姿の元となった彼女だ。彼女が原本、私はただのコピーだった。

付き合っているからと言ってそこに愛があるかと言えば必ずしもそうではないのだ。逆もまたしかりで、あの男性と付き合っていた頃に幾度となく繰り返した触れ合いより、今ここまでのトキとのそれの方が何倍も愛のこもった幸せなもののように感じていた。

とはいえ正直、トキの気持ちを聞くのは怖かった。もしも私の勘違いだったらと思うと・・・。ただひとつ自分の中にあるのはトキともっと触れ合いたい、一秒でも早く一緒に先に進みたいという驚くほど強い想いだった。