甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩

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Love gauge:0 塩過ぎるイケメン

*6*

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翻訳会社エージェントの人に言うことじゃないけど、本当にくだらないな、このゲーム。」

仕事の開始日は猛暑日・酷暑日が続いている中で更に記録的な暑さとなった日だった。景色がゆらいで見えそうなくらい猛烈な暑さの中オフィス兼寮に到着し荷物を置いて挨拶が終わると、先に着いていた若泉さんは嫌悪感たっぷりの表情でそう言い放った。

その歪んだ表情ですら絵になっていて思わず見とれてしまうほど美しい顔をしていた。色白の小さな顔、眉下まであるラインが曖昧な前髪からチラリと覗く凛々しい眉毛、長いまつ毛に縁取られている涙袋が少し膨らんだ奥二重で切れ長の目、小ぶりで筋の通った高い鼻、そして小さめで唇が薄い口。アラサーなのにまるで読者モデルをしている大学生のようだ。

登録用に撮られていた写真よりも実物の方がずっと格好良い。イケメンでも写真写りが悪かったりするんだと思った。

「そもそも恋愛自体がくだらないし。結婚も。人生に不要なものだよ。」

彼の口調は静かで温度が感じられなかった。

「はぁ・・・。」

「何が『胸キュンラブストーリー』だよ。男に夢見過ぎ。不自然な展開と寒い台詞ばかりだし。それにこんな外見整った男達いるわけないだろ。」

「えっと、わりと目の前にいらっしゃいます・・・。」

「何?」

「い、いえ、何でも・・・。」

個性的な人だなと思うと同時に安心した。男性──しかも超イケメン──と24時間二人きりだなんて、どうしたって意識しないわけがない、と思っていたけれど、こういう人だとわかれば、100%ビジネスモードで接することができる。私は彼のように恋愛嫌いというわけではないけれど、仕事関係の人に特別な感情を抱いてしまうのはもう二度とごめんだった。
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