2月31日 ～少しずれている世界～

3月11日(水)

＊6＊

『それは、その同期の方がいた世界にいるあなたが作ったツールが原因です。』

───！？私が元の世界で一緒にいた茉結が作った！？

『私の仲間の報告では、彼女は受付の仕事をしながら研究を続けていて、腕時計型のパラレルワールド間を移動するツールを作っていたそうです。でも彼女は理論立ては得意だが実践に関してあなたほどの能力はなかった。時計を身につけた本人ではなく、近くにいる昏睡状態の人物を移動させてしまったのです。』

私も茉結も地方出身で会社が用意してくれた独身寮に住んでいた。別々のマンションだが最寄駅は同じだった。

『仲間はそのツールを回収し、彼女に我々の研究に加わってもらうよう打診し同意を頂いています。』

『そうですか・・・。』

『我々の集団にいるのは研究者だけではありません。法律家もいてパラレルワールド間の、研究に関係のない個人的な移動を禁止する法律を整備しようとしています。』

『え・・・。』

茉結の反応は硬いものだった。

『移動することで世界がめちゃくちゃになってしまう。現になっている。我々はそれを修正しようとしているのです。』

『そ、それってつまり・・・。』

茉結の声は動揺で震えていた。

『そう、現在あちこちで他世界間で繋がってしまっているネットワークを順次切断しているところです。同時に移動した人々を元の世界に戻しています。』