冷たい彼と熱い私のルーティーン

希花 紀歩

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彼の手と私の手

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私が近づくと、機械に手をかざそうとしていた春野さんはわずかに驚いた顔になった。

そんな彼の手を掴むと、氷でも握りしめていたのではないかと思うくらいすごく冷たかった。

驚きから怪訝な表情になった彼の手を恋人繋ぎのようにしてぎゅっと握りしめる。

私の手は一年中カイロのように温かい、いやむしろ熱いから、これで彼の手も血行が良くなり、静脈認証が出来るのではないか、と考えたのだ。ちなみに出退勤時刻の打刻が出来ないと、社内システムから時刻を申請して上司の承認を得なければならない。

誰かに見られるのではないか、ということは全く頭に浮かばなかった。彼も私の手の熱さを感じて、私がなぜ突然こんなことをしたのか理解したようで、手を握り返してくるようなことはないものの、抵抗することはなかった。

しばらく手を繋いでいてから手を離す。春野さんが手を機械にかざすと『ピンポン♪』と音がして『管理部IT課 春野はるの颯晴そうせい 9:12  出勤』と表示された。
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