辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三

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第一章 幼少期編

48.属性魔法③

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 それは土魔法の中級を教えてもらった時のこと。
 土魔法の中級には、ストーンアローという魔法が存在する。
 一般に、サンドボールはバレーボール大の土を押し固めてハンドボール大の大きさに圧縮した球で、ストーンアローはサンドボールを更に押し固めて出来た矢だと考えられている。
 
 実際、風、火、水魔法では、その方法で魔法を圧縮して矢を作りだすらしい。
 しかし土魔法では、何故か最初から石の矢を直接発現するのだそうだ。
 俺がその違いに気が付き、先生役の兵士さんに聞いたところ、

「俺も先輩からそういう風に教わっただけですからねぇ。何故って聞かれても分からないです。でも確かに言われてみれば不思議ですね。なんでなんでしょう?」

と逆に尋ねられてしまった。
 彼は俺に言われるまで、他の属性のアロー系も、ストーンアローと同様直接作り出すものだと思っていたらしい。

 確かにこの世界の人たちは、自分の属性以外の魔法を学ぶことはほとんどない。
 だからこの違いに気が付かなかったのも仕方が無いのかもしれないが……。

 石とは、溶岩が冷え固まって出来たものが細かくなった状態だ。
 そして石が更に細かくなったのが砂で、砂に色んなものが混ざった状態の物を土と呼ぶ。
 だから、土を固めたからといって石にはならないはずなのだ。
 ストーンアローを直接発現させるのは、そういった理由からだろう。

 そこまで考えたところで、俺は一つ閃く。

 土魔法は、土を発現させる魔法だと考えられている。
 しかし実際、土だけではなく石の矢も生み出せているのだ。
 つまり、もしかしてこれ……

 ――『属性の権能』内であれば、イメージと魔力次第で何でも生み出せるんじゃないだろうか?

 流石に我ながらそれは無茶苦茶かとも思ったが、実際魔法という存在が既になんでもありな状態なのだ。
 だからあながち間違いでは無いだろう、と取り敢えず納得し、手始めに氷を作れないか試してみる事にした。
 水の権能内という括りで、もしかしたらと思い取り組んだのだ。
 結果、一週間ほどで氷を生み出す事が出来るようになった。

 そこからは水魔法の時と同様の手順で訓練を重ね、そしてついに先日、氷魔法を習得することに成功したのだった。

 このことをジャックスたちに伝えると、

「はぁ、アル様ってほんと滅茶苦茶っすね。氷魔法って、確か水魔法の超級の更に向こうとかって言われてて、しかも北方の国の人しか習得出来ない魔法っすよ……」

と呆れられた。
 何故水魔法の超級の更に向こうなどと呼ばれているのかは分からないが、北方の人たちが使えるのは理解出来る。
 つまりはイメージしやすいのだろう。
 北国であれば、水が冬場に凍るところを目にすることもあるだろう。
 だからそのイメージを魔法に生かすことが出来るのだと思う。
 イメージが足りないと、必要魔力が多くなったり、習得の際の壁が高くなるのではないだろうか。

 元々俺は給水魔法で温度調節をあまり苦労する事なく行えていた。
 そして水が氷になる分子のイメージ像も、地球の動画の知識として持っている。
 そのおかげもあって、水魔法超級の更に上などと大層に言われている氷魔法を使えるようになったのでは無いかと思う。

 どうやらこの辺りの温暖な地域では、氷魔法はかなりレアらしい。
 しかも、水魔法超級の更に上とかいう訳の分からない誇張までついている。
 全ての属性を万遍無く上げるのも悪くは無いが、俺はしばらくの間、この氷魔法をメイン武器として使っていこうと決めたのであった。


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