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第一章 幼少期編
45.冒険者ギルド
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冒険者ギルド。
地球の読み物の中に時々出てきた組織だ。
街中のおつかいや薬草の採取から行商の護衛や魔物の討伐まで、様々な仕事をこなす所謂何でも屋だ。
ギルドには等級が存在し、低級の者が簡単な仕事をこなして信用と実力を得れば等級が上がっていく。
等級を上げて実力を付ければ、億万長者も夢じゃない! みたいな夢のある組織だったと思う。
「なるほど、冒険者ギルドか……確かにそんな組織があれば、薬草の安定供給も可能にはなるだろう。しかしそうなると少し話が大きくなりすぎるな……」
確かに、新たにギルドを作るなんて簡単に出来ることではないだろう。
特にガリウスと対立するのは目に見えている。
「しかし発想としては面白い。少しその案で考えてみるとしよう。先ずは人員だが――」
そうして父さんは俺の案を基に動き出すことにしたようだ。
一方俺の知っていることは全て父さんに話したので、俺が現段階で出来ることはないそうだ。
各方面との話し合いは、俺の事情を話すのでなければ俺がいるのは不自然だからな。
ダヴィンロード男爵の時の様に断られることもあるだろうから、とりあえずは父さんだけで動くことにするらしい。
◇◇◇◇
「と言う訳で、ちょっと郊外の林に出て実地訓練でもしようか」
「いや、どういう訳っすか。というか、領主の孫がそんな簡単に街の外をぶらついて良いんすか?」
俺の提案に、護衛として付いているジャックスが口を挟んでくる。
父さんが冒険者ギルド設立の為に動いている間、俺は自分の訓練に勤しむよう父さんに言いつけられた。
父さんはこの冒険者ギルド設立に際し、医薬ギルドだけではなく商業ギルドや他のギルドも巻き込む算段でいるらしい。
しかしその際、おそらく俺の契約魔法の力も必要になると考えている様だ。
だから今俺がすべきなのは、地力を少しでも上げて能力の向上を図ることらしい。
契約魔法の熟練度に関しては、現在お祖母様がブリオン王国で契約書を使用してくれていることに期待するとして、残りは従属契約についてか。
『己よりも下位の存在』と契約出来るらしいから、俺はその存在を上げて行きたいのだが……。
とりあえずは、属性魔法の習得と、放置気味になっていたライムの能力についての検証だな。
「大丈夫大丈夫。これは父さんからの指示でもあるから。うちの兵士の人たちと母さん連れていくなら問題ないだろうってさ」
「まぁ、マリアンヌ様が一緒なら怪我しても大丈夫でしょうけど……」
心配そうな顔をするジャックスに、ソフィーネが首を傾げて尋ねる。
「……ジャック……ビビッてる?」
「ビビってねぇよ! アル様が怪我しねぇか心配してただけだ!」
「……わかった。そういうことにしといてあげる」
そう言って、ジャックスの肩をポンポンと優しく叩くソフィーネ。
「いや、ぜってぇ分かってねぇだろ! ていうかお前分かって言ってるだろ!?」
「……ジャック、落ち着いて。戦いを怖れることは別に恥じゃない。それを乗り越えてこそ、一人前の戦士になれるというもの」
「ほんっとお前、人をおちょくる時は饒舌だな!?」
煽られるジャックスに、にっこりと嬉しそうに微笑むソフィーネ。
「二人とも分かったから。ソフィもあんまり煽っちゃだめだよ」
「……主、別に煽っていない。ちょっと馬鹿にしてるだけ」
「一緒だからな!?」
「はぁ……」
二人のいつものやり取りにため息をつきつつ、俺は林に行く準備をすることにした。
◇◇◇◇
林に行く馬車の中、俺とマリアンヌ母さん、そしてジャックスとスライムのライムが向き合って話をしている。
「こうしてアルと一緒に林に行くのも久しぶりね。ライムちゃんと契約した時以来だから、半年ぶりかしら?」
「うん、そのくらいかな? あの時は結局ライムの強さは把握出来なかったから、一度確認しておきたかったんだ。それに僕の属性魔法の練習も、中庭ではそろそろ難しくなってきたからね」
ライムは現在ホーンラビットの姿に変身した状態で、母さんの膝の上に座っている。
前回は主従契約の確認だけで時間が無くなってしまった。
その後も奴隷の事や各貴族との対応、それから自分の訓練で手いっぱいで中々外に行く機会が無かったのだ。
「しかしスライムのテイムなんて、本当にアル様の契約魔法は突き抜けていますよね」
向いに座ったジャックスが少し丁寧な言葉遣いで俺に声を掛ける。
母さんが同席しているため、少し気を遣っているのだろう。
言っている内容は失礼だと思うが。
「ふふ、ジャック君。そんなに気を遣わなくて大丈夫よ? あなたはもう私たちの家族みたいなものなのだから。もっと気楽にして頂戴」
「い、いえ。流石にそれは……」
母さんの言葉に、ジャックスが顔を赤らめ慌てて俯く。
マリアンヌ母さんは美人だからなぁ。ジャックスの反応も分からなくはない。
そんな彼の反応を見て、馬車の外で乗馬して並走しているソフィーネが声を掛けてくる。
「……初心?」
「お、お前っ……!」
反論しようとするジャックスだが、母さん同席していることを思い出し慌てて口を噤む。
そんな二人を見てクスクスと笑い出すマリアンヌ母さん。
一方のジャックスは余計に身体を小さくしてしまった。
現在ソフィーネは馬車に同席はせず、外で索敵要員に駆り出されている。
彼女の種族であるエルフ族は、人族と比べて五感や魔力に優れている。
逆に力は他種族に比べて劣っている様だ。
ソフィーネはその五感に加えて魔力視のスキルを所持している。
このスキルは人や魔物の魔力を視覚として把握することが出来、遠くの魔物でも色の変化で察知することが出来るらしい。
サーモグラフィーの様なものだろうか。
一方ジャックスが馬車に同席しているのは、いざという時の盾役らしい。
彼は超回復というスキルを所持しており、少々の怪我ならすぐに回復してしまう。
また身体強化魔法も既に習得しており、盾の技量もそれなりにあるそうだ。
奴隷を盾役にすることに若干の忌避感を感じる部分もあったが、ジャックスに“三歳児にそんな気を遣われると情けなくなるんでやめて下さい”と言われてしまった。
確かに戦闘になれば、それぞれの役割に分かれて戦うことになるんだから、そいうものだと割り切るしかないだろう。
「二人とも、これからもアルの事よろしくお願いしますね」
「「……はい」」
マリアンヌ母さんに優しくお願いされ、素直に返事をする二人。
これからも二人が喧嘩をし始めたら、母さんに仲裁を頼むのがいいかもしれないな。
地球の読み物の中に時々出てきた組織だ。
街中のおつかいや薬草の採取から行商の護衛や魔物の討伐まで、様々な仕事をこなす所謂何でも屋だ。
ギルドには等級が存在し、低級の者が簡単な仕事をこなして信用と実力を得れば等級が上がっていく。
等級を上げて実力を付ければ、億万長者も夢じゃない! みたいな夢のある組織だったと思う。
「なるほど、冒険者ギルドか……確かにそんな組織があれば、薬草の安定供給も可能にはなるだろう。しかしそうなると少し話が大きくなりすぎるな……」
確かに、新たにギルドを作るなんて簡単に出来ることではないだろう。
特にガリウスと対立するのは目に見えている。
「しかし発想としては面白い。少しその案で考えてみるとしよう。先ずは人員だが――」
そうして父さんは俺の案を基に動き出すことにしたようだ。
一方俺の知っていることは全て父さんに話したので、俺が現段階で出来ることはないそうだ。
各方面との話し合いは、俺の事情を話すのでなければ俺がいるのは不自然だからな。
ダヴィンロード男爵の時の様に断られることもあるだろうから、とりあえずは父さんだけで動くことにするらしい。
◇◇◇◇
「と言う訳で、ちょっと郊外の林に出て実地訓練でもしようか」
「いや、どういう訳っすか。というか、領主の孫がそんな簡単に街の外をぶらついて良いんすか?」
俺の提案に、護衛として付いているジャックスが口を挟んでくる。
父さんが冒険者ギルド設立の為に動いている間、俺は自分の訓練に勤しむよう父さんに言いつけられた。
父さんはこの冒険者ギルド設立に際し、医薬ギルドだけではなく商業ギルドや他のギルドも巻き込む算段でいるらしい。
しかしその際、おそらく俺の契約魔法の力も必要になると考えている様だ。
だから今俺がすべきなのは、地力を少しでも上げて能力の向上を図ることらしい。
契約魔法の熟練度に関しては、現在お祖母様がブリオン王国で契約書を使用してくれていることに期待するとして、残りは従属契約についてか。
『己よりも下位の存在』と契約出来るらしいから、俺はその存在を上げて行きたいのだが……。
とりあえずは、属性魔法の習得と、放置気味になっていたライムの能力についての検証だな。
「大丈夫大丈夫。これは父さんからの指示でもあるから。うちの兵士の人たちと母さん連れていくなら問題ないだろうってさ」
「まぁ、マリアンヌ様が一緒なら怪我しても大丈夫でしょうけど……」
心配そうな顔をするジャックスに、ソフィーネが首を傾げて尋ねる。
「……ジャック……ビビッてる?」
「ビビってねぇよ! アル様が怪我しねぇか心配してただけだ!」
「……わかった。そういうことにしといてあげる」
そう言って、ジャックスの肩をポンポンと優しく叩くソフィーネ。
「いや、ぜってぇ分かってねぇだろ! ていうかお前分かって言ってるだろ!?」
「……ジャック、落ち着いて。戦いを怖れることは別に恥じゃない。それを乗り越えてこそ、一人前の戦士になれるというもの」
「ほんっとお前、人をおちょくる時は饒舌だな!?」
煽られるジャックスに、にっこりと嬉しそうに微笑むソフィーネ。
「二人とも分かったから。ソフィもあんまり煽っちゃだめだよ」
「……主、別に煽っていない。ちょっと馬鹿にしてるだけ」
「一緒だからな!?」
「はぁ……」
二人のいつものやり取りにため息をつきつつ、俺は林に行く準備をすることにした。
◇◇◇◇
林に行く馬車の中、俺とマリアンヌ母さん、そしてジャックスとスライムのライムが向き合って話をしている。
「こうしてアルと一緒に林に行くのも久しぶりね。ライムちゃんと契約した時以来だから、半年ぶりかしら?」
「うん、そのくらいかな? あの時は結局ライムの強さは把握出来なかったから、一度確認しておきたかったんだ。それに僕の属性魔法の練習も、中庭ではそろそろ難しくなってきたからね」
ライムは現在ホーンラビットの姿に変身した状態で、母さんの膝の上に座っている。
前回は主従契約の確認だけで時間が無くなってしまった。
その後も奴隷の事や各貴族との対応、それから自分の訓練で手いっぱいで中々外に行く機会が無かったのだ。
「しかしスライムのテイムなんて、本当にアル様の契約魔法は突き抜けていますよね」
向いに座ったジャックスが少し丁寧な言葉遣いで俺に声を掛ける。
母さんが同席しているため、少し気を遣っているのだろう。
言っている内容は失礼だと思うが。
「ふふ、ジャック君。そんなに気を遣わなくて大丈夫よ? あなたはもう私たちの家族みたいなものなのだから。もっと気楽にして頂戴」
「い、いえ。流石にそれは……」
母さんの言葉に、ジャックスが顔を赤らめ慌てて俯く。
マリアンヌ母さんは美人だからなぁ。ジャックスの反応も分からなくはない。
そんな彼の反応を見て、馬車の外で乗馬して並走しているソフィーネが声を掛けてくる。
「……初心?」
「お、お前っ……!」
反論しようとするジャックスだが、母さん同席していることを思い出し慌てて口を噤む。
そんな二人を見てクスクスと笑い出すマリアンヌ母さん。
一方のジャックスは余計に身体を小さくしてしまった。
現在ソフィーネは馬車に同席はせず、外で索敵要員に駆り出されている。
彼女の種族であるエルフ族は、人族と比べて五感や魔力に優れている。
逆に力は他種族に比べて劣っている様だ。
ソフィーネはその五感に加えて魔力視のスキルを所持している。
このスキルは人や魔物の魔力を視覚として把握することが出来、遠くの魔物でも色の変化で察知することが出来るらしい。
サーモグラフィーの様なものだろうか。
一方ジャックスが馬車に同席しているのは、いざという時の盾役らしい。
彼は超回復というスキルを所持しており、少々の怪我ならすぐに回復してしまう。
また身体強化魔法も既に習得しており、盾の技量もそれなりにあるそうだ。
奴隷を盾役にすることに若干の忌避感を感じる部分もあったが、ジャックスに“三歳児にそんな気を遣われると情けなくなるんでやめて下さい”と言われてしまった。
確かに戦闘になれば、それぞれの役割に分かれて戦うことになるんだから、そいうものだと割り切るしかないだろう。
「二人とも、これからもアルの事よろしくお願いしますね」
「「……はい」」
マリアンヌ母さんに優しくお願いされ、素直に返事をする二人。
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