辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三

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第一章 幼少期編

26.初めての○○Part2①

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 三歳の誕生日を目前に控えた冬のある日、俺は父さんと母さん、そして従魔のライムと一緒に夕食を摂っていた。
 今日の夕食は、何かの魔物の肉のステーキと、コーンスープの様な甘いスープに白パンとサラダだ。
 肉には塩と胡椒の様な調味料が掛かっていて、中々香ばしくて美味い。

 ここテイルフィラー辺境伯領では主に小麦を主食として栽培しているが、人口に対して作物の量がまだまだ十分ではない。
 というのも、元々未開の土地であるため開墾に通常以上の人手を要してしまうらしく、現状を維持するので精一杯らしい。
 それに魔物が出没する頻度も高く、畑を広げてもそこを守るための十分な戦闘要員を用意出来ないのが現状のようだ。
 その結果、今も尚ブリオン王国からの輸入に頼ることで生活を成り立たせている。
 この問題も、いずれは何とかしないとなぁ。

 そういえば先日使用人たちと契約を交えた際、面白い発見をした。



 アルフォンス=テイルフィラー
  言語理解 ステータス 契約魔法

  主従契約者 
   ライム 消化吸収 変身 分裂
  
  契約者 
   マリアンヌ=テイルフィラー 光魔法
   フィリップ=テイルフィラー 魔力消費軽減
   フォルコ          暗殺術
   ミリー           暗視
   ……
   ピア            調理
   …… 



 使用人など四十人以上と一気に契約したことにより、ステータスが滅茶苦茶長くなってしまった。
 皆のスキルも調べてみたかったので、契約対象は俺にしている。
 その中で発見したのが、ミリーの夜目スキルとピアというおばちゃんメイドの調理スキルだ。
 フォルコの暗殺術も含め、効果は以下の様になっていた。

 

 暗殺術
  暗殺動作時身体能力を一時的に向上可能
  その際魔力消費を軽減し効率よく行う
  理を理解することにより更に効果上昇
  効果は練度を高めることにより増大


 暗視
  暗闇での視力向上可能
  その際魔力消費を軽減し効率よく行う
  理を理解することにより更に効果上昇
  効果は練度を高めることにより増大


 調理
  調理時食材の魔力を活性化させ一時的に旨味を向上可能
  その際魔力消費を軽減し効率よく行う
  理を理解することにより更に効果上昇
  効果は練度を高めることにより増大


 
 どのスキルも、二文目以降は共通している。
 そして暗殺術と暗視に関しては、身体強化魔法の特化型だろうと父さんは言っていた。
 父さん曰く、身体強化魔法を行うことで、暗殺術や暗視と同じ効果を得られるらしい。
 これも属性魔法スキルと同じで、魔力効率に差が出るスキルなのだろう。

 暗視についてミリーに教えてやると、

「うわぁ、私ってスキル持ってたんですねぇ。黒豹族はみんな夜目が効くんで、そういうものなんだと思ってましたよ」

と呑気に言っていた。
 黒豹族は魔力感知が出来る以前から、ある程度夜目が効くらしい。

 始めこの話を聞いた時、俺は黒豹族が無意識のうちに身体強化魔法を使えているのではないかと考えた。
 しかしフォルコが、

「私も幼いころから、人を殺める際に身体がとても動かしやすいと感じていました。後日自分にスキルが有ると知り、驚くと同時に納得したことを覚えております」

と言ったことでその考えを改める。
 言っている内容はともかくとして、人間であるフォルコも無意識化でスキルが発動していたらしいのだ。

 つまり黒豹族に限らず、俺たちは皆無意識化で魔力を使用しているのではないだろうか。
 人間が無意識に筋肉をつかって心臓を動かし呼吸をしているのと同様に。
 つまり身体強化魔法と呼ばれている魔法は、その無意識化で行っているものを、能動的に無理やり活発化させる動作なのでは無いだろうかという結論に至ったのだ。

 そう考えると、フォルコとミリーが無意識化でこれらのスキルを使いこなせていたことに説明が付く。
 二人ともその分野での魔力消費が少ない分、効率的に能力の向上が行えていたのだろう。


 一方で、おばちゃんメイドピアのスキルはちょっと特殊だ。
 これは自分の体内ではなく、外部に対して効果を発揮するスキルだからだ。

 彼女も家で料理はするらしいが、人と比べて特別美味しく作れたなどと感じたことはないらしい。
 つまり調理スキルは俺のステータスや契約魔法同様、名前を知り意識的に使用しないと効果を発動しないタイプなのだろう。
 おそらく魔力を外部に作動させる魔法やスキルは、意図して使用しないと効果がないんだろうな。

 彼女には今調理場での仕事に移ってもらい、このスキルを積極的に使ってもらっている。
 まだ効果はそれほど無いみたいだが、練度を上げて是非とも美味しい料理を提供してもらいたい。



 そんな事を一人考えていると、フィリップ父さんが思い出したように口を開いた。

「あ、そうだアル。そろそろお前も奴隷を買いに行こうか」

「ぶほっ」

 余りに突飛な父さんの発言に、俺は思わず口の中身を吹き出してしまった。
 ……一体この人はいきなり何を言いだすんだよ。






 
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