辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三

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第一章 幼少期編

7.現状把握

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「それで、改めて聞くが……アル、お前は俺たちの言葉が分かると言う事でいいんだな?」

「あー」

 父の改まった質問に、俺も正直に答える。
 ここまでバレてしまえば、ここで誤魔化すのはかえって拙いだろう。

「そうか。ではマリーが話して聞かしていたことも、全て理解していると言う事でいいのか?」

「あー。あぶ?」

 語彙の少なさがもどかしい。
 母の言う事は、大体理解出来る。出来るのだが、時々俺の知らない常識を前提に話されることがあるのだ。
 
「んー、それは肯定なのか? 否定なのか?」

 やっぱり伝わらなかった様だ。
 なら簡単に肯定で答えておけばよかったか……。
 そんな風に俺が悩んでいると、隣から母が口を開いた。

「アルは多分、全部は分からないって言いたいんじゃないかしら。私もまさか本当にもう理解出来ているなんて思ってなかったから、時々話を端折りながら話してしまっていたから……」

「あー。あー」

 母のナイスフォローに、俺は全力で肯定の意を表す。
 そんな俺たちを見て苦笑しつつも、父は言葉を続けた。

「なるほどな。ではお前は今の状況の事を、大体は理解出来ていると言う事で良いんだな?」

「あー」

「よし。では改めて簡単にまとめるぞ。先ずは――」

 そう言って、父さんは現在の俺たちが置かれている状況を改めて語りだした。
 俺がテイルフィラー家の長男の息子で、フィリップ父さんが次期当主としては余り期待されていないこと。
 父さんには二つ年下の腹違いの弟がいて、そいつが父さんよりも次期当主として目されていること。
 そんな状況のため、父さんと母さんは本邸ではなく、同じテイルフィル領領都内にあるこの別邸で現在住んでいること。
 父の弟であるガリウスは、父と違い火魔法が得意としており、またバックにはガリウスの妻の実家であるビューノウ公爵家という帝国でも屈指の大貴族が付いていること。
 父はこのままガリウスに家を継いでもらっても良いと考えてはいたが、息子である俺にスキルが三つもあると分かれば、話が一気に変わってくると言う事。
 五歳になる年には俺は貴族の息子としてスキル判定を受けねばならず、その時までに今後の方針と対策を用意しておかなければならないと言う事。

 そう言ったことを、とても分かりやすく教えてくれた。
 やはり辺境伯長男として育てられただけあり、その父の姿はとても凛々しく、威厳があった。

 因みに何故俺のスキルがすでに判明しているかというと、生まれてすぐに父がスキル判定の魔道具を使用してくれたらしい。
 この魔道具というのはダンジョンと呼ばれる魔物が蔓延る迷宮からのみ産出されるらしく、しかもスキル判定の魔道具はそこそこ珍しく使い捨てらしい。
 その分お値段もかなりお高めで、数に限りがあるから貴族と言えど無暗に使えるものでは無いらしい。

「アルは生まれてすぐに高熱に侵され、薬も処方出来ないためにマリーに魔法をかけてもらうしか手立てがなかったんだ。しかしスキルの中には、治癒魔法を弾いたり、逆に状態を悪化させるものまであると聞いていたからな。咄嗟にスキル判定の魔道具を使ったんだよ」

 俺の命を繋ぐために、高価な魔道具を使ってくれた両親に、俺は思わず感動してしまう。
 ちなみに、母さんは光魔法が得意だそうで、治癒魔法はその中に含まれているらしい。
 ただ治癒魔法は本来傷を癒す魔法であり、病魔に対しては余り効果が無いらしい。
 それでも俺の体力を回復させ、何とか持ちこたえさせようと、母が付きっきりで世話をしてくれたそうだ。
 本当にこの人たちには頭が上がらない。

 あと、なんで生まれてすぐにこの魔道具を使わないのかと言う事についてだけど、四歳まではスキルが発現していないこともあるかららしい。
 四歳を過ぎてから発現した例は今まで無いから、五歳の年にスキル判定をするのが通例になっている様だ。

「とまぁこんな所だ。どうだアル、理解出来たか?」

「あー」

 俺の肯定の言葉に、父さんは頭を掻きながら苦笑する。

「全く、お前の頭は一体どうなってんだろうな。まぁいい。ではこれからどういった方針をとっていくかについてだが……先ずはあるのスキルの確認からだ。アルが今俺たちの言葉を理解出来ているのは、言語理解のスキルの能力ってことで良いんだよな?」

「あー」

「赤ん坊にも関わらず、俺たちと会話出来ているのも、そのスキルのおかげか?」

「あー……あぶぅ」

 俺の返答に、父さんが怪訝な表情を見せる。

「ん? 違うのか。では他のスキルの影響なのか?」

「あぶぅ……」

 前世の知識を引き継いだ、と言う事は、正直に伝えた方が良いだろう。
 この知識は将来きっと役に立ってくれるはずだ。
 それをこの人たちに隠したままでは、宝の持ち腐れになってしまう。

「ふむ……まぁ今のアルじゃ、俺たちにその理由を伝えることは出来ないか。よしアル、お前が話せるようになれば、必ず理由を教えてくれよ?」

「あー」

 多分この四人とは、一蓮托生になるだろう。
 フォルコとミリーが父さんたちとどのような信頼関係を築いているかは分からないが、今この場に同席させているのが信頼の証だろうから。

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