辺境の契約魔法師~スキルと知識で異世界改革~

有雲相三

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第一章 幼少期編

3.スキル

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 さて、母の魔法に驚いてからしばらくも、母は俺に色んな話を聞かせてくれた。
 家族の事、この国の事、そしてこの世界の事。
 
 俺の名前はアルフォンス=テイルフィラー。
 テイルフィラー辺境伯爵家の孫に当たり、俺の父親は現辺境伯の長男らしい。
 ただ、父が辺境伯を継げるかどうかは微妙らしく、俺ももしかしたら直系から外れるかもしれないらしい。

 その父の名はフィリップ=テイルフィラー。
 銀髪碧眼のイケメンだ。
 年齢はまだ十九歳と若く、これからが働き盛りではあるのだが、彼は魔法があまり得意では無いらしい。
 正確に言うと、属性魔法が、ではあるが。

 この世界には火、水、土、風、光、闇の六つの基本属性が存在する。
 しかし父はその属性魔法が使えず、その代わり無属性と呼ばれている身体強化魔法を誰よりも得意としているらしい。
 ただこの世界、というか貴族社会では、属性魔法に重きを置く傾向があり、父の様に無属性である身体強化魔法が得意という者は、蔑ろにされやすいと言う事だ。
 なんとも納得のいかない話ではあるが、今の俺にはどうしようもないから仕方が無い。
 何か力になれればいいのだが。

 そしてそんな父の話を熱っぽく話聞かせてくれているのが、母であるマリアンヌ=テイルフィラーだ。
 彼女はこのジャパニル帝国の東隣にある、ブリオン王国の公爵家の娘らしい。
 二人は魔物の討伐の際に同じ討伐隊に配され、そこで知り合い恋に落ちたらしいのだが……まぁその話は長くなりそうなので割愛させていただこう。

 ジャパニル帝国とブリオン王国の間には、魔の森と呼ばれる大きな樹林地帯が広がっている。
 俺が住むテイルフィラー辺境伯領は丁度その魔の森に隣しており、魔の森に巣食う魔物の討伐の責務を負っているようだ。
 そのため、テイルフィラー家の当主には、それ相応の武力が求められる。
 父も決して弱くは無い、というか母曰くとても強いらしいのだが、身体強化のみではどうしても前線に立つしか見せ場がなくなり、指揮官としては不十分と考えられているようだ。

 さて、今まで述べた様な事を、母は俺に毎日毎日色々と語って聞かせてくれた。
 始めは俺の反応を楽しんで、色々話してくれているのかと思っていたのだが、それにしても内容がやけに具体的で詳しい。
 流石に出生間もない赤子に聞かせる話では無いぞと訝しんでいると、ある日の母の話でその理由が判明した。

「さて、次は何のお話をしようかしら……そうね、スキルの話をしておきましょう」

 スキル? よくゲームなどで見かけるあのスキルのことだろうか。

「スキルというのはね、神様からいただいた特別な力の事を言うの。もちろんあなたも持っているわ」

 なんと。俺もスキルを持っていたのか。
 一体どんなスキルなんだろうか。

「ただこれは、皆が持っている訳ではないの。それに持っていたとしても、普通は一つだけなのよ。でもアル、あなたはすでに三つも持っているのよ」

 うおー。マジか、三つもか。
 今の話しぶりからすると、相当レアなんじゃないか?

「あなたが持っているスキルはね、言語理解、ステータス、そして契約魔法よ」

 うむうむ、会話が出来ないのがとてももどかしいが仕方が無い。
 言語理解にステータス、そして契約魔法か。
一体どんなスキルなんだろう。

「言語理解は、多分そのままの意味だとは思うのだけれど……残念ながらこの三つは過去にも例がないものらしくて、どういう能力かは分からないのよ」

 ありゃ、母にも分からないのか。残念。
 
「でもねアル。スキルというのは、本人がその名前を念じれば使い方を何となくではあるけれど理解できてしまうの。だからあなたが私の言葉を理解してくれるまで、私は何度もこうしてあなたに語り掛けるわ」

 母はそう言って、心配そうな顔をしながら、俺の顔を撫でてくる。

「あなたに三つものスキルがあると分かれば、あなたはきっとテイルフィラー家の家督争いに巻き込まれてしまう。五歳のスキル判定までに、出来るだけの準備はしておかないとね」

 そう言いながら俺を優しく見つめる母の目を見ながら、俺は考える。
 どうやらスキルが三つもあると言うのは、良いことばかりでは無いらしい。
 父が家督を継ぐのであれば恐らく問題は無いのだろうけれど、父はどうやら家督争いでは劣勢の様だし。
 これで俺のスキルの事が知られてしまうと、それが覆ってしまう可能性があるのだろう。
 
 父が優勢になるんならそれはそれで良い事の様な気もするが……。
 恐らくそんな簡単な話では無いんだろうなぁ。
 
 母の話を聞き、俺は今の立ち位置を何となくではあるが理解することが出来た。
 まだ分からないことは色々あるけれど、それは追々確かめれば良いだろう。
 自分がどうしていくべきなのか、まずはそれを考えていくとしよう。
 
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