have a problem 魔法少女

涼猫

文字の大きさ
上 下
1 / 1

第一話〜出逢い〜

しおりを挟む
 ぐぅぅぅ~
 俺は今、凄くお腹が空いている。
 お腹が空き過ぎて、お腹が痛い。
 と言うか、何か、こう、気持ち悪い。
 そんな腹減ってるなら何か食えば?って考えると思う。
 でも、家にご飯が無い。
 じゃあ買ってくれば?って考えるだろう。
 それだよ!それ!
 それが問題なんだ。
 外に出ると考えるだけで憂鬱だ。
 あ~。心が沈む~。
 俺はゴロゴロと布団の上で頭を抱え、転げ回る。
「あ~。買い物行くしかないかぁ~」
 俺は布団からしぶしぶ起き上がり、布団の外へ出る。
「服はこのままでいいか。ジャージだし」
 エコバッグを持ち、エコバッグの中にサイフを放り込み、クロックスに足を入れる。
「行って来まーす」
 ドアに手を掛け、力いっぱい押す。
 重い、ドアは、ガチャリと、重そうな音を立てて開いた。
 眩しい。
 太陽光を浴びたのは数週間ぶりだ。
 思ったよりも眩しいな。
 俺はジャージの下に着ているパーカーのフードを被る。
 太陽光が眩しいと感じるのは恐らく、太陽光を浴びるのは数週間ぶりだからだろう。
 ご飯が無くなる前にネットで買うべきだったな。
 俺は近くのコンビニに入る。
 カップ麺コーナーとレトルトコーナーに行き手当たり次第カゴに入れていく。
 レジで買い物を済ませ、早々にスーパーを出る。
「帰るか……」
 帰り道、突然ビュオッと、強めの風が吹く。
 その拍子にフードが脱げる。
「あっ……」
 しまった……、マスクも着けて来るべきだった……。
 すぐにフードを被る。
「ねぇ、さっき見た?あの黒いフード被ってる女の子、めっちゃ可愛いかった」
「見た見た!めっちゃ可愛いかった!」
「あの子可愛いー」
 まただ、また……女に間違われた……。
 俺は女じゃないのに……。
 俺のコンプレックスは、自分の顔が女顔だと言う事だ……。
 それと、もう一つ。
 それは……。
「ねぇねぇ君可愛いねー!小さいけど高校生だよね?ジャージ四つ高のだし」
 背が小さい事だ……。
 俺は、この二つのコンプレックスを指摘されたら、絶対に指摘した奴を許さない。
「誰が女で小さいだー!」
 俺は話かけて来た奴を睨みつけ、大声を出す。
「あっ!?えっ!?男!?」
「俺は、」
 ズボンのポケットから生徒手帳を出し、生徒手帳を開き、名前を指で隠しながら相手に見せる。
「男だ!」
 相手はびっくりした顔をしている。
 気づけば野次馬が群がっている。
 しまった。こんな街中で騒ぎ過ぎた。
「す、すみませんでした!」
 俺は走って近くにあった店に駆け込む。
 やべぇ……。俺、何やってんだ……。
 つーかここ何の店だ?
 当たりを見回す。
 レトロな雰囲気が漂う店内には、お洒落なティーカップや、壁時計、よく分からない置物などが置いてあり、ステンドガラスから店内に光が入っている。
 どうやらアンティークショップのようだ。
「よう、嬢ちゃんみたいな若い子がくるなんて珍しいな」
「なっ……!俺は男だ!」
 話しかけて来た店員さんらしき人に、さっきのように生徒手帳を見せる。
「男か、そりゃすまねぇ。まぁ、好きなように見てってくれよ」
「まぁ……、たまには少し、寄り道もいいか……」
 俺は店内をうろつく。
 ふと、一つのものが目に止まる。
 バラバラの球体関節人形だ。
「ドール……」
 ドールの頭を手に取る。
 髪は大体黒色だが、毛先の方にかけて、赤色のグラデーションがかっている。ウィッグではなく、植毛の様だ。
 目は瞑っている。
 ドールなんて、興味無い。
 でも、何故か欲しくなってしまった。
「あ、あの……」
 俺は店員さんに話しかける。
「ん?」
「これって何円ですか……?」
「それかぁ、高くて全然売れねぇんだよねー。約二十四万なんだけど……」
「二十四万!?高っ!」
「中々売れないし、値下げして……、」
「値下げして……?」
「なんと!今なら二十パーセント引きの十九万二百円!…………って、これでも高いか……」
「買う」
「えっ!?買ってくれんの!?」
「うん。ちょっと待ってて」
 俺はアンティークショップを出て、コンビニへ行き、お金を引き出す。
 何か、買いたいものが出来た時の為に、お金を貯めておいたのだ。
 そしてアンティークショップへ戻る。
 俺はサイフから現金を出し、店員さんに渡す。
「一……二……三…………よし、全部でちょうど十九万二百円!お買い上げありがとうございましたー!」
 ドールを気泡緩衝材に包み、紙袋に入れて渡してくれた。

 俺は家に帰り、紙袋から中身を出す。
 中からは、バラバラのドールと、ドールの服と、『Live a dollの取り扱い説明書』と書かれた冊子が入っている。
 俺は取説を開いて見る。
 恐らくドールの組み立て方が載っているのだろう。
 一ページ目には目次が載っていて、二ページ目には、『Live a dollの起こし方』と載っている。
「起こし方?組み立て方じゃなくて?変なの」
 俺はとりあえず、気泡緩衝材を外し、取説通りにドールを組み立てていく。
 
 ドールは組み立ると思ってたよりも大きめだった。等身大なのだろうか?
 後は、服を着せればいいんだが……。
 ドールを見る。
 ドールの体には、バスタオルを広げて、体が見えないようにしている。
 ドールの体のバスタオルを服を着せる為に取ろうとする。
「っ!!」
 顔が暑くなるのが分かる。
 落ち着け、俺。相手はドールだ。
 俺はバスタオルを取ろうとする。
「っ!!あぁぁぁぁ!!!やっぱ無理!!!!」
 組み立てた時は、組み立てる事に集中してたから大丈夫だったけど……。服着せるとか無理!
「しょうがない。このまま進めるか……」
 俺は取説を見る。
「えーと……。人間を起こす様に、起こしてください……?」
 訳が分からない。
 とりあえずやってみるか……。
「お、起きてー」
 俺は、体を揺すってバスタオルがずり落ちるといけないので、頬軽く叩く。
 柔らかい。人みたいだ。
「んっ…」
「………………」
 今…………こいつ…………、喋った…………?
「ワシはまだ…寝るんじゃぁ……Zzz」
「しゃ、喋った…………?ドールが……喋った……?嘘だろ……?」
 俺はもう一回ドールの頬を軽く叩く。
「ぬぅ……しょうがないのぅ……」
 ドールは目を擦っている。
「お主の為に起きてやるわい……」
 ドールの目がパッチリと開く。
 俺から見て、右が赤、左が青のオッドアイになっている。
 目の中には、四ツ穴ボタンを縫い付けたようなバッテンのマークがある。
「ん?なんじゃ、服は着せてくれて無いのか。まさかお主……」
 ドールはジッと俺の目を見てくる。
「な……、なんだよ……?」
「ワシにえっちなことする気だったじゃろう?W」
 ニヤニヤと笑いながら俺の方を見てくる。
「ち、違!お、俺は裸を見るのが恥ずかしかっただけで……。と、とりあえずこれ服だから着て!俺あっち行ってるから!」
「なんじゃ、思春期じゃのう」
 そんな声を背中に受けながら、リビングのドアを開け、キッチンへ移動する。
 ドールが動いて喋ってる。おかしい。でも不思議と頭は冷静だ。これが日本人の高い適応能力か。
 そういえば取説に「Live a doll」って書いてあったな。Live a doll……意味は……生き人形。そうゆうことか。
「服着たぞー」
 ドールの声が聞こえる。
「はーい」
 リビングに入ると、赤いリボンが胸元に付いた、黒基調の、少し赤が入ったゴスロリを着たドールが立っていた。
「さて、服も着たことじゃ。自己紹介するかのう」
 そう言いながらドールは取説を手に取る。
「ワシはここに書いてある通り、生き人形じゃ」
 ドールは「Live a doll」の文字を指す。
「まぁ、人間と思ってくれて良い。ちなみにワシの名はナイト・ブラッディ。お主の名は?」
「俺の名前は猫田夜」
「そうか、よろしくじゃ」
 そう言い、俺はナイトと握手をした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

霊見と愉快な七不思議(実質八不思議)ども

涼猫
キャラ文芸
 ここは、天界、地界、魔界、妖精界、人間界、この五つの世界が繋がった世界「混沌世界(カオスワールド)」。  そんな世界の中心にある人間界は、世界総人口の、約九割を超能力者が占める世界。  その人間界にある中心部「四つ葉市」で起こる物語である。  これは怪異が見える少年「霊視霊見」と、四つ葉学園七不思議(実質八不思議)達の物語である。

ホワイトブリトルエフェメラル

涼猫
キャラ文芸
 ここは、天界、地界、魔界、妖精界、人間界、この五つの世界が繋がった世界「混沌世界(カオスワールド)」。  そんな世界の中心にある人間界は、世界総人口の、約九割を超能力者が占める世界。  その人間界にある中心部「四つ葉市」で起こる物語である。  これは、気配を消す能力を持つ少年「天使時」が、天使と呼ばれる少女「天野使天」を、ストーカーしてしまい、時はとんでもない光景を目にすることとなってしまう。  そんな二人の、少しダークな日常の物語。

熱砂のシャザール

春川桜
キャラ文芸
日本の大学生・瞳が、異国の地で貴人・シャザールと出会って始まる物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おっ☆パラ

うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!? 新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!

カフェひなたぼっこ

松田 詩依
キャラ文芸
 関東圏にある小さな町「日和町」  駅を降りると皆、大河川に架かる橋を渡り我が家へと帰ってゆく。そしてそんな彼らが必ず通るのが「ひより商店街」である。   日和町にデパートなくとも、ひより商店街で揃わぬ物はなし。とまで言わしめる程、多種多様な店舗が立ち並び、昼夜問わず人々で賑わっている昔ながらの商店街。  その中に、ひっそりと佇む十坪にも満たない小さな小さなカフェ「ひなたぼっこ」  店内は六つのカウンター席のみ。狭い店内には日中その名を表すように、ぽかぽかとした心地よい陽気が差し込む。  店先に置かれた小さな座布団の近くには「看板猫 虎次郎」と書かれた手作り感溢れる看板が置かれている。だが、その者が仕事を勤めているかはその日の気分次第。  「おまかせランチ」と「おまかせスイーツ」のたった二つのメニューを下げたその店を一人で営むのは--泣く子も黙る、般若のような強面を下げた男、瀬野弘太郎である。 ※2020.4.12 新装開店致しました 不定期更新※

ドール沼へようこそ!

藤和
キャラ文芸
小さい物から大きい物まで、ドールは色々あるけれど、あなたはどれがお好みかしら? これはドールがきっかけで、ほんの少しだけ変わった人達のお話。

処理中です...