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7日目/岡崎優輝【面会①】

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「岡崎静子さんってどんな方なんですか?」


俺も不安には思っていたのだけど、ネットで[岡崎家]って調べても該当なしだった。


「ん~一言で言えば厳しい人だ!鈴鳴家の保護区なんて言われているが、住んでいるのは50人程で村みたいな所なんだ、そこで保母さん……いや教師の方がピッタリだな。子供達の世話をしてくれている人だ。」


「と言う事は、鈴鳴さんも小さい頃はお世話になったと?」


「もちろんだ!だから正直、親より怖い。」


厳しくて怖いのか……大丈夫か俺?


「それでいつ会えばいいんですか?」


心の準備をして、何か印象がよくなるような話しでも出来ればいいんだけど……

そう思って鈴鳴さんに聞いてみた。

すると申し訳なさそうに


「それが……もう来ているんだ。」


「え?今からですか?」


今、お昼ですけど?


「いやいや、多分2時頃になると思う。静子さんとこれからお昼を一緒にとる事になっているから。」


「わ、わかりました。じゃ、2時に面会室に行けばいいんですね?」


「あぁ、2時から面会の予約を入れておくから来て欲しい。そ、それとだな……私は面会に立ち合う事が出来なくてな……本当に申し訳ないんだが、1人で会う事になるんだがいいだろうか?」


はい?


「だ、大丈夫だ!厳しいくて怖いと言ったが、何も体罰などしない人だ。こめかみをグリグリしてくるだけだが……」


痛みを思い出したのか、鈴鳴さんはこめかみを両手で押さえていた。

俺が固まっているのに気がつくと


「そんなに心配しなくても、面会室は安全だ。怖かったら退出してもいいからな。」


いやいや面会室は大丈夫だと思うけど、これから一緒に住むとなるのに不安になる事言われても……それに行動力もありそうだし…大丈夫か俺?


そんな風に呆気に取られて考えていたら


「じゃ、優輝君後は頼んだぞ。」


そう言っていそいそと病室を出て行った。

俺は少し熱の逃げた昼飯を食べた。温かい昼飯を食べた記憶があまりないな……


昼飯も食べ終えて予定の時間まで、ポケーとしていた。10分前になり病室を出て面会室に向かう、足が重い……ドアの前に着くと緊張しているせいでやけに自分の心臓の鼓動がよくわかる。


意を決して面会室に入ると、予定の時間5分前だったが着物の姿の女性がピンと姿勢良く座って待っていた。

そしてジッと俺を優しい目で見ていた……あれ?怖そうにないよ?

それより何か懐かしい感じがする……誰かに似ている?誰?


俺は椅子に座るのも忘れて考えていると、着物の姿の女性はゆっくりと立ってから


「初めまして優輝君、岡崎静子と言います。今日は急な面会の申込みに応えてくれてありがとうね。」


俺は慌てて岡崎静子さんに答えた。


「あっ、初めまして優輝です。これから宜しくお願いします。」


俺の言葉を聞いて、本当に嬉しそうな表情で


「やっと……やっと会えたわね。いろいろ聞きたい事があるのだけどいいかしら?」


「は、はい」


な、何を聞きたいんだろう?


「記憶喪失と聞いていますが、本当かしら?」


あれ?疑ってる?

こっちの世界の人にあっちの世界の事を話しても、とても信じて貰えない。それと同じでバレないはず……多分。記憶喪失などなった事はないけど、あっちの世界の話をしなければわかってくれると思う。


「え~と多分そうだと思います。昔の事思い出せなくて……名前と歳ぐらいしか覚えてなくて」


「そうなのね、仕方ないわね。今・・は19歳ぐらいかしら?」


「いや、今はハタチぐら…い……今?」


「そう今よ?ココの傷ないわよね?」


そう言って静子さんは自分の目の近くを指差した。

え?最悪の誕生日の傷の事を知っている?!

俺は驚いて慌てて


「だ、誰なんですか?な、なんで知って……」


すると少し驚いた様子から、イタズラか成功したような笑みで


「あらあら、軽くひっかけてみたのに簡単にひっかかったわね。駄目よそんな簡単にわかられちゃ」


「いやそんな事言われても……って誰なんですか?」


俺はたった一言で混乱してしまった。まさか知っている人がいるなんて……


「そうね……誰と聞かれれば間違いなく岡崎静子よ!私は朋子さんから優輝君の事を教えて貰ったの……夢の中で12年かけてね。信じられないかしら?」


「夢の中で?」


朋子おばさんが夢の中で静子さんに教えた?なぜ?


「そう夢の中で……教えて貰ったって言ったけど、正確には[体験した]かな?朋子さんの目線でね。」


「え~とよく意味がわからないんですけど、どんな事を?」


「そうね……簡単に説明すると赤ちゃんから『あや』さんと結婚するまでの事かしらね。」


「あ、赤ちゃんから?」


「そうよ!最初に体験したのは優輝君のオシメの交換だったわ。いろいろ小さくて可愛かったわよ。」


そう言って静子さんは笑っていた。

いやいや、こっちとしては恥ずかしいだけなんですけど……

それよりも


「じゃ俺がこっちの世界に来るのもわかってたんですか?」


わかっていたならすぐに来て欲しかった。俺は感情的に声を強めて迫せまっていた。


「………ごめんなさいね。何時いつどんな所にどんな風にとかわからなかったの……そして理由も私はわからないわ。」


「そ、そうですか……すいません。ちょっと感情的になってしまって」


「いいのよ気にしないで!私と違って何も知らない世界に来たのだから……これからは私が朋子さんに替わって面倒見てあげるから安心してくださいね。」


「え?い、いやそんな迷惑かけれませんって、住む所助けて貰えるだけでも有難いのに……」


「あらあら、朋子おばさんは小さい頃からの優輝君の事、いろいろ知っているのよ?ここで全部話てもいいのよ?」


「え?ま、まさか……」


「そうね、1番恥ずかしい話だと公園で彼女と「わ、わかりました!すいませんでした。」そう?わかればいいのよ。これから宜しくお願いしますね?」

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