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8巻
8-1
しおりを挟む■その1 白雪姫と七人の小人達
薄暗い森の中で縮こまり怯える彼女に、ボクは出会う。
「あなたは……誰?」
瞳を閉じたまま不安げに問う彼女を前にして――ボクは息を呑んだ。
種族も大きさも違う彼女に目を奪われていた。
虚空を彷徨う彼女の指先は震えていて、それを見たボクは咄嗟にこう言った。
「ボ、ボクはこの森に住んでいる小人なんだ。大丈夫、君の味方だよ」
手を取ったその時、ボクは彼女を守りたいと心から思ったんだ。
◇◆◇◆◇
その日は、麗らかな日差しが心地いい旅日和だった。
ただ自前の黒マントでは少々暑く、ちょっとだけ邪魔くさい。これは俺のトレードマークでもあるので、脱ぐという選択肢はないが。
俺、紅野太郎は、薄暗い森を眺めながらため息を吐いた。
「封印された森かー……これまた童話チックだなぁ」
いちおうバラの園っぽいが、棘ばかりで人が通れる隙間はない。
無理に通ろうとすれば、引っかき傷をつけられそうな小さな棘から、人ひとりを串刺しにできそうな巨大なものまで、ギッチリとひしめき合っている。
棘の解析を進めようとする俺に、セーラー戦士が尋ねてきた。
「どうかな? ただの植物なら力任せで入って行けそうだけど」
セーラー戦士らしい提案だが、そいつはやめておいた方がいいだろう。バラの園は、その異様さから魔法によって出来たものだということが容易に察せられたからだ。
俺は静かに首を横に振る。
「いや……迂闊に近づかない方がいい。ただの茨じゃなさそうだ」
試しに適当な魔法を放ってみる。
丸い炎がゆっくりと飛び、茨を燃やしたが、瞬時に再生して燃えた箇所を勢いよくふさいでしまった。何の準備もなしに入ろうとすれば、棘に刺されて全身血だるまコースは免れまい。
「な?」
そう言って目配せする俺に、セーラー戦士が青ざめた顔を向ける。
「うわ。どうするのこれ?」
「だからまぁ、ここは素直にお願いしてみよう」
魔法で命令されているだけに違いないので、別の命令を上書きすればいいんじゃないかと。そう考えた俺は、さっそく茨に向かって魔法で語りかけた。
『ちょっとそこをどいてくれないか?』
茨の変化はとてもわかりやすかった。俺のお願い通りに、目の前にトンネルを作り、まるで俺達を森に招き入れてくれているようだった。
その作りは見事で、通る人が怪我をしないように棘まで引っ込めてくれている。
「うわ。花まで咲いてるんだ。これバラ?」
「そうだよ。なんとなくバラって魔法使いと相性いい気がするんだよ。こう……イメージ的に? 善い魔法使いにしろ悪い魔法使いにしろ、バラは使いどころを選ばない。そう思って、たまに図鑑で研究したりしているのだよ。今なら登場シーンを好みの品種で飾ることも可能だ……!」
バラを扱えることは魔法使いの嗜みというやつなのだ。そんな密かな努力を語ってみたら、セーラー戦士から目を逸らされてしまった。
「……そうなんだ」
反応薄っ! 微妙な表情はやめてくれ。結果、こうして道が開けたと言えるのだから。気を取り直して、俺は告げる。
「よし。じゃあ行ってみようか! 不思議の森探検へ!」
「そうだね。行こうか」
こうして俺とセーラー戦士は軽く言葉を交わし、茨のトンネルを進んだのだが……。
「……」
「……」
すぐに会話が途切れてしまった。
できる限り普通に接しようと思っていたが、ぎこちなくなってしまうのは俺が意識しすぎているからだろう。
セーラー戦士との旅は、別に初めてじゃない。
にもかかわらず気まずいのは、異世界でのスタンスが違うためである。一緒に旅をすることに違和感があると、俺が勝手に思っているだけだとも言えるのだが。
俺がセーラー戦士と呼ぶ少女。天宮マガリは地球出身の女の子だ。
金色の髪に青い目の美しい容姿は、異世界においてでさえ華があった。また、そんな可憐な見た目に似合わず、ストイックな性格の持ち主でもあった。
彼女は元の世界に帰るため、帰還の魔法を探す旅をし続けていた。
そもそも、帰還の魔法は存在するかどうかもわからない。それを探して世界中を旅することがどれだけ途方もないことか、彼女だってわかっているだろう。
彼女のすぐにでも帰りたいと願う気持ちは俺にだってわからないわけじゃない。こちらに滞在する時間が長くなるほど、向こうの世界とのズレは大きくなってゆくのだ。だから、早く帰れるに越したことはない。
そんな彼女に対し、俺はこちらの世界に生活基盤を作ることに比重を置いていた。これはセーラー戦士にとって裏切りに近い行為であると思っている。
こうしたすれ違いから、セーラー戦士と俺は何となく気まずい関係にあり、俺は彼女の帰還の魔法探しに協力するのを避けるようになっていた。
しかし、ここのところのセーラー戦士はいつも腹を空かせており、心配になるほどだったので、今回、旅の様子を確かめるつもりで、彼女に同行したのであった。
そんなふうに考え込んでいると、セーラー戦士の方から話しかけてきた。
「太郎的には、こういう魔法は珍しかったりするものなのかな?」
不意打ちの質問で混乱しつつも、あわてて答える。
「ああ……植物を操る魔法ね! 珍しいと言えば珍しいけど、特殊能力として備えている種族はいるね。ほら、妖精郷のピクシーの女王様はいつも花と一緒に登場したりするだろ? 何ができるかを言い出したらきりがないけど、大抵そういう特殊な魔法は変わったことができる」
「例えば、花の道を作るとか?」
楽しげに言うセーラー戦士に、俺は胸を張って頷いた。
「そうだとも。ただ危険なことも多いけどね。こっちに来たばかりの時なんて、ちょっとしたサプライズで動く森を作ろうとしたら、雲の上まで伸びちゃったり」
「……それは聞いたことがあるね。噂になってたから」
「ですよねー。でもあの失敗があったから今がある! 見ているだけでワクワクするでしょ! 花のトンネルだよ!?」
「ふーん。確かに明るい気分になれるかも」
「だろ? 気分がよくて困ることはない」
気まずかろうとなんだろうと、ここまで来てしまったのだから、気分の切り替えは大事である。
それはともかく、こうして結界を突破したので、そろそろ誰かがアプローチしてきてもいいはずだが……。
その誰かは、高音の怒鳴り声と共にやって来た。
「お前達! ……どうやって森に入ったんだ!」
セーラー戦士が、すぐさま迎撃態勢に入る。
駆け足で近づいてきたのは、赤い服を着た少年。でっかいハサミを持ち、こちらに刃先を向けていた。よく見ると子供にしても小さすぎる。どうやら人間ではないらしい。
「ここから先は通さないぞ! どうしても通りたかったらボクらを倒してから行くんだな!」
彼は、ボクらと言った。
その声を合図に、俺達の頭上から幾つかの影が落ちてくる。
すかさずセーラー戦士が反応した。
セーラー戦士が放った刃が風を斬り裂いた音は六本分。着地した六つの影の首元にそれぞれ魔剣を押し当てていた。
登場するやいなや命を握られた新手は、俺が振り向いた時にはもう動くこともできない状態だった。
セーラー戦士が鋭く囁く。
「――動かないで。少しでも攻撃の意思を見せたら、反射的に仕留めちゃうから」
「……鮮やか」
セーラー戦士は、マジ戦士である。
六人の襲撃者は、一番最初に姿を見せた者と同様に小柄で、それぞれに大きな道具を持っていた。彼らは、ハサミを持つ一番目の襲撃者に恨みの篭った視線を送る。
「もう……ボクらなんて言うからいけないんだ……」
ジョウロを持つ襲撃者は涙を流しながら水を撒く。
「そーだそーだ! いい加減にしろ!」
クワを持つ襲撃者は怒っている。
「言わなきゃバレなかったのに……ぶつぶつ」
スコップを持つ襲撃者はとりあえず穴を掘り。
「何やってんのよーさいあくー」
カマを持つ襲撃者はあきれて草を刈る。
「もう知らない……」
鉈を持つ襲撃者は穴があったら入りたいといったように、顔を赤くして落ち込んでいた。
「ダメですなー」
つるはしを持つ襲撃者は実にストレートな感想を呟く。
「うっ……悪かったよ」
六人の非難を一身に受けて、ハサミを持つ襲撃者は謝っている。
俺はしばし考えを巡らせたが、彼らを的確に言い表すとしたらこれしかなかった。
「小人かな?」
「そう……みたいだね」
敵意を向けている相手が妙にかわいらしいので、セーラー戦士も戸惑っているらしかった。そんな彼女にむけて、俺は状況を客観的に分析した上で冷静に呟く。
「なんか子供に剣を突きつけるのってすごく絵的にまずい気がする」
「……それは仕方がないから――それで、どうしようか? 攻撃してきたし、敵ってことでいいよね?」
そう言うと、セーラー戦士の意思に応じるように魔剣がちょっとだけ動いた。小人達はプルプル震え、その内の一人が精一杯勇気を振り絞って告げようとする。
「……!」
震えて声が出ないらしい。気まずいを通り越して気の毒に思えてきた。
「……ねぇ、許してあげようよ」
「……そうだね。私も本気で何かしたりはしないよ」
セーラー戦士の目を見ると、さっきまでの殺気は消えていた。
「でも絶対本気の目だったよね?」
「…………」
セーラー戦士の間は長かった。
「…………そんなわけないじゃない」
そこでようやく小人達に向けられていた魔剣は消えたが、いつでも撃ち出せるようにしているのだろう。そのことを俺は知っている。
解放され、ヘタり込む小人達に俺は話しかけた。
「どうも、すみませんね。突然押しかけてしまって。私、妖精郷で魔法使いをやっております、太郎という者なんですが……貴方達は番人なんですか?」
ハサミを持った小人に目線を向けると、未だ立ち直っておらず微妙な反応だったが、何とか返事をしてきた。
「え? う? あ、ハイ」
「ところで! 交通の便の悪い森で、お買い物などお困りのことはありませんか? そんな貴方にこの一品! タロー印のパソコンはいかがかな?」
この場のノリで力いっぱいパソコンのセールスをしてみたら、セーラー戦士に止められた。
「……それは後にして」
「いやいや! 今しかないだろ! ここはばっちりライン上だし!」
この森は魔力の通り道であるライン上にあった。ライン上であればパソコンを使える。こんな好立地で営業をしないなんてありえない。
「ダメ」
「えー」
セーラー戦士による精神のデストロイ&俺による営業トークのコンボ技は、流石に非常識だったか。
かろうじて会話ができるようになったハサミ君が口を開く。
「えーと……あんたらは何なんだ?」
この質問は簡単ではない。
何なんだと問われても、俺が名乗れる肩書きなどほとんど「自称」でしかない。とは言え、無視するのもアレなので、俺とセーラー戦士は顔を見合わせてから名乗った。
「ちょっと特殊な魔法使いと」
「ちょっと特殊な戦士かな?」
「……なおさら訳がわからない」
頭を抱えたハサミ君だったが、そうなるのも無理はない。そろそろ俺も名刺に書けるくらいの肩書きを考えた方がいいかも知れない。
セーラー戦士は、俺に合わせて言ってみた自己紹介が失敗だったことを悟ると、その場の空気を変えるように自分から本題を切り出した。
「実は、ここに何か隠されているって聞いて来たんだけど……」
それを聞いて、突然ハサミ君の顔色が変わる。
「やっぱり! あの娘を追ってきたんだな! ボクがやっつけてやる!」
失った戦意を取り戻し、ハサミを構えたハサミ君がセーラー戦士を威嚇する。
「待って、待って。えっと、その『あの娘』って誰なのかまったく心当たりないから、安心しては……くれないよね」
あわててそう付け加えたが、もう遅い。
「今のどこに安心できるところがあったんだよ! 野蛮人!」
そう言われるやいなや、ハサミ君のハサミを掴んだセーラー戦士が、ニッコリと笑いながら告げた。
「なら言わせてもらうけれども、武器を持って襲いかかってくるなら、反撃される覚悟くらいしてきてくれないかな?」
「……うう!」
うわ、容赦ない。
セーラー戦士の目力を前に、悔しそうにするハサミ君だったが、力では勝てない上に、反論する自由も彼には残されていなかった。
ともかく話が早くて助かる。俺は気の毒に思いながらも、聞いておくべきところは聞いておこうと思い、ふくれっ面で涙目のハサミ君に尋ねた。
「えーっと、じゃあこのあたりで何か珍しい魔法を知らない?」
「ボクらの使う魔法は……ちょっと珍しいかも」
「ほほう。じゃあどんな魔法か教えてくれないかな?」
「いやだ!」×7
「そっかー……」
こんなにも息が合った拒絶は見たことない。魔法の秘密なんてそんなに簡単にばらせないか。
ただし、俺にはすでに大方の予想がついていた。
「いや、でも『ボクらの使う魔法』って時点で聞くまでもないか?」
「……まぁそうだね。植物を操る魔法……だよね?」
セーラー戦士も気づいているらしい。セーラー戦士が少し気まずそうに視線を向けてくるので、俺も頷いておく。
「それしかないだろう。こんな風に道具それぞれに役割があるっていうのは相当珍しいけど」
「何でわかったの!」×7
「……面白いね、君達」
小人達にはすごく警戒されてしまったみたいだが、彼らの魔法についてはおおよそ確定である。
これで未知の魔法を調査するというセーラー戦士の用事は済んだわけだが、まだ俺の目的は達成されていない。パソコンを受け取ってもらえていないのだ。
そこで俺は、がま口からとっておきの品を取り出す。
「ふむ……じゃあ全然関係ない話だけど、お近づきの印にお兄さんがお菓子をあげよう」
それは二十箱ほどの紙の箱で、「ピクシーサブレ」と銘打たれていた。甘い香りを放つ箱を小人達にズズイと差し出すと、セーラー戦士からはまたもや止められる。
「待って。ねぇ太郎……それは流石に露骨すぎじゃないかな?」
「いや純粋に、お菓子をあげたくなっただけで」
「……どう見ても買収じゃないか」
「そんな人聞きが悪い」
食べ物で釣ろうという発想は、まぁそうなんだけれども、ただ思ったより効果があったのもまた事実で……。
「馬鹿なこと言うな!」
「そんなお菓子なんかに釣られると思うなよ!」
「そ、そーだぞ」
「全然欲しくない……たぶん」
「ホントだわ! でもちょっとくらいなら」
「卑劣な……だがしかし」
「お菓子食べたい」
約一名、すぐにでも落とせそうなのがいる。
そんな正直者のつるはしくんに特製サブレを差し出すと、「うわーい」と喜んで受け取ってくれた。さっそく彼に小人達の視線が注がれる。
そこで俺が、サブレを手に説明する。
「こいつはそう! 妖精郷名産、ピクシーサブレ詰め合わせ! ここで大事なのはこれは商品ではなく、試食用サンプルだということ。だから、決して買収ではない!」
「どういうことなの?」
「無料のものを配布しているだけなんだからセーフでしょ? ちなみにこちらはネット通販にて数量限定で販売中! ちびっこに大人気のピクシーサブレ! ピクシーサブレをよろしく!」
「……そこまで詳しく聞くつもりはなかったんだけど」
「宣伝を女王様に頼まれて……いや、とりあえず参考に食べてみて」
そう言ってセーラー戦士にサブレを勧めてみたが、セーラー戦士はゆっくりと首を横に振った。
「残念だけど……もう無理みたい」
「……?」
彼女が指さす方を見て俺はギョッとする。
山積みにしてあったサブレが、すでに空き箱の山になっていたからだ。その山の中で、小人六人がお腹を丸く膨らませて倒れている。
ここで文句を言うのも違う気がするので、俺はいちおう感想を聞いてみた。
「……美味しかった?」
「美味しかった!」×6
「そうか、そうか……それはよかった」
しかしただ一人、口元に食べかすをつけていない者がいた。ハサミ君である。
俺を見つめる視線には明らかに不信感が見て取れた。俺はとりあえず話だけでも聞こうと思い、彼に歩み寄る。
「君も食べればよかったのに。俺達は別に君らを取って食おうってわけじゃない。むしろ困っていることがあったら相談に乗りたいとさえ思っているよ? ほら俺、魔法使いだから」
ハサミ君が反応を見せる。どうやら俺の話に興味を持ってくれたらしい。
「……困っていることって。人間の病気も、お前達、わかるのか?」
「そうだね。おおよそ大丈夫だと思うよ。病気の人間がいるってことかな? じゃあその人間の病気を治してあげる代わりに、俺の特製アイテムを受け取ってもらうという約束がセットになるんだけど……」
ハサミ君の心を開くついでにパソコンの営業を欠かさない。
「ほ、本当か! じゃ、じゃあ診てほしい人がいるんだ!」
「お、おうとも」
ハサミ君は予想を遥かに超える食いつきを見せた。
ハサミ君の勢いに押されて、思わず頷いてしまったが、ちょっとトラブルの匂いがする。そう感じながらも俺は、とりあえず成り行きに身を任せてみることにした。
◇◆◇◆◇
「おお、女の子だ。それもとびきりかわいい!」
両手の指で丸メガネを作り、遠視の魔法を使って覗き込む。そうして、遠くにある小人達の家の中で横になっている女の子の姿を確認し、密かに歓声を上げた。
なるほど、確かに彼女は人間の女の子だった。
赤いワンピースはシンプルで、清楚な雰囲気を感じさせる。腰まで伸びた深く蒼い髪は、赤い服と対照色だが違和感はない。まさに森にひっそりと咲く一輪の花といった感じである。
俺は彼女に関するデータを収集し、脳内で編集。用意した球体に映し出した。球体の中で、瞳を閉じたその子がグラビアアイドルのようにさまざまな衣装でポーズをとっているのは仕様である。
「こここ、これは?」
腰を浮かせて、食い入るように映像を見つめるハサミ君。
俺は、そんな彼の疑問に答える。
「ざっと調べさせてもらった。俺達はあまりに彼女のことを知らなさすぎたからね。それでは君達の要望に応えられない」
セーラー戦士が疑わしげに口を挟む。
「ざっとにしては調べすぎでは? かわいい娘だからじゃないのかな?」
「違うよ!? 何言ってんだい! 俺はだね、ただ誠実に願いを叶えようとだね、下調べを万全にしただけなんだよ……そんな、かわいい子だから力を入れただなんて浅ましい……」
ハサミ君は俺に賛意を示す。
「そ、そうか! それは正しいことだな!」
「だろ? 身長百五十五センチ、儚げな印象の美少女だ。思いつめるところがあるようで、思考は若干後ろ向き。どうにも守ってあげたくなるような不思議な魅力がある」
「そ、そうなんだよ」
「彼女の雰囲気に高貴さを感じたことはないかな? それは王族の生まれだからだね」
「し、知らない! そんなこと知らなかったぞ!」
「これで俺の力はわかってもらえただろうか? ……いやもうちょっと力を示した方がいいかな?」
「こ、これ以上があるの!?」
「例えばだね、スリーサイズは……」
背後から強烈な殺気を感じ、あわてて言い直す。
「冗談だから……落ち着こうセーラー戦士、話せばわかる。決してやましい気持ちなどないんだ。本当に軽いジョークのつもりだったんだよ」
「覗き、最低。人としてのモラルは大切にしようよ……」
「もちろんだとも! それはわかってる!」
かちゃりと背中に突きつけられている尖った何かが、ものすごく怖い。セーラー戦士がとてもおっかないので、悪ふざけはやめておくことにする。
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