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とある古城にて
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太郎がいなくなったしばし後。
人知れず忘れ去られた古城にて、吸血鬼と堕天使、そして魔族の女はにらみ合う。
「何をやってるのかしら? 臆病者ども。土壇場で逃げ出しておいてよくもまぁここに戻ってこれたものね?」
魔族の女はその手にメラメラと魔法の炎を燃え上がらせて二人の異形を威圧した。
しかし吸血鬼と堕天使はそれすら目に入らないほど血相を変えて言った。
「お前こそ何を連れてきているんだ!」
「どう見たってこいつ魔王だよね! 正気なのかい!?」
彼らの指差した先には気を失った男が静かに寝息を立てていた。
そして彼こそ、おそらくここに最もいてはいけない男だった。
指摘されて目を泳がせる女の炎は明らかに勢いがなくなった。
「仕方なかったのよ。……成り行きで……」
「どんな成り行きだよ!」
「殺そうとした相手だぞ? 看病してどうする!」
女が言葉を濁すと畳み掛けてくる二人。
魔王をちらりと見た彼女は考え込み、そして叫んだ。
「……それもまぁ……その、成り行きなの!」
「「だからどんな成り行きだよ!」」
「成り行きは成り行きよ! それで納得しなさいよ!」
ガツンと城の床を蹴り砕く女だが、吸血鬼も堕天使もその程度では怯みもしなかった。
「できるわけないだろうが!」
「どうするんだよ! 起きる前に何とかしないと!」
「……ごめんなさい。もう起きてるんだけど……話して大丈夫かしら?」
だがたった一言、おずおずと切り出された一言の破壊力は大きかった。
「……あ」
「……い!」
「……う!!」
言い争っていた三人は完全に固まる。
声をかけてきた人物は彼らの話題の中心であり、物理的にも中心のベッドで寝かされていた人物――魔王その人だったからだ。
完全に目が点になった三人をやれやれと眺めて、魔王は寝癖の残った頭を掻いた。
「いやー……死ぬかと思ったわー……それでここどこ?」
吸血鬼と堕天使は飛び上がって部屋の隅に移動する。
「魔王!」
「おおお! やる気か! やる気なのか!」
「はぁ……」
「ああ!なんだその溜息は! なんだか軽く見られている気がするぞ!」
「く! 甘く見るなよ! そう甘く見てもらっては困るぞ!」
だがその中でただ一人、魔族の女は魔王対して落ち着いた態度で話し始めた。
「……ここは私達が拠点にしている城よ。私が連れてきたの」
「……そう。助かったわ。ありがとね」
素直に礼を言う魔王に吸血鬼と堕天使は絶句する。
そして、吸血鬼と堕天使はすがるような視線を女に向けるが、女は火がついたように頬を赤くしていた。
「か、勘違いしないでよね! 貴方を助けたのは偶然なんだから! あんなめちゃくちゃな状況でうっかり死なれちゃ今まで準備してた私達が馬鹿みたいじゃない!」
驚きのあまり声すら出ない吸血鬼と堕天使の心の声がこの瞬間シンクロした。
なんなんだその反応!
一方魔王はあんな状況という言葉を思い返して、目を閉じる。
タローと呼ばれていた人間の魔法使い。
その攻撃を受けて、半死半生になった姿は魔王にあるまじきものだった。
「そうね……そうだった。でも死にかけた割には傷が少ないんだけど、何か心当たりあるかしら?」
「……一緒にいた蛙の亜人が治療していたみたいだけど」
「ああ。そう、さすがカワズちゃんね。いい腕してる」
軽く体を動かす魔王は感心した風に呟く。
魔王の身体は両腕を中心にひどいものだったが今は綺麗に傷がふさがっていた。
治療は居合わせたカエルの魔法使いによるものだが、ここまで強力な治癒の魔法の使い手は早々いるものではない。
魔王は体を起こそうとするが、しかし魔王は苦しげに胸を押さえた。
「え! 大丈夫!」
「ゴホゴホ! ……大丈夫大丈夫。でも本調子じゃない……みたいね」
「そ、そうなの! どどど、どうすればいいの!」
「落ち着いて。大丈夫よ、見ての通り傷は完全に塞がっているんだから」
どこか弱々しくアピールする魔王だったが、その結果勢いを取り戻したのは吸血鬼と堕天使だった。
彼らは部屋の隅でにたりと笑い、同時に好戦的な魔力を迸らせ、魔王に向かって構えた。
「クックック! これぞ好機! さぁ血の宴を始めようぞ!」
「はっはっは! お前の天下もここまでだよ!」
「へぇ……貴方達私とやる気?」
「手負いの魔王ぅ! 覚悟ぉ! はぁあああああ!!」
「このチャンスを逃すほどお人よしじゃないぞ! おおおおおおおおお!!」
ゾン
しかし、その時とても重い音がして、興奮しきった堕天使の頬に数適血が飛ぶ。
「へ?」
堕天使は重くなった首で堕天使が横を向くと、そこには上半身が跡形もなく吹き飛ばされた吸血鬼の姿があった。
けだるげに、ベッドから身を起こしているだけの魔王は、プラプラと真っ赤になった右手を振っていた。
「あーごめんなさいね。ちょっと今病み上がりで加減が出来なくって。まだやる? 次はもう少しうまくやれると思うけど?」
魔王はにっこりと笑う。
その笑みに一点の曇りもないことに、堕天使は強烈な恐怖を感じた。
「……いえ。その。ごめんなさい」
「いいのよ。こっちこそごめんなさいね」
その後、血霞となっていた吸血鬼もすぐに再生し上半身を取り戻すが、彼はすべて元通りになってからようやく、今自分に何が起こったのかに気が付いて、がたがた震えはじめた。
「……今俺は殺されたか? ひょっとして」
「……お前最近よく殺されるよな」
「さすがは吸血鬼、噂の不死性は伊達じゃないわね。貴方を滅ぼすのは多少骨でしょうけど。貴方がそれを望むなら、もう少し付き合いましょう。どうせ今は暇だし」
やはり魔王はにっこりと笑う。
たくましい体を臨戦態勢で隆起させた吸血鬼だったが、結局ストンと脱力し両手を挙げた。
「……いや。いい。よくわかった。いや、直に接してようやく理解したよ。元々、あんたを倒そうと考えたのは我らの長が魔王を過剰に恐れていたがゆえだ」
「そう。整理が出来たならよかったわ」
なんでもなく一撃で事態を収束して見せた魔王に青い顔の女は尋ねた。
「……本当に、ダメージ残ってるの?」
「……当たり前じゃない。むしろ、あの状況を見ていたのにダメージがないって思う?……ゴホ! ゴッホ!」
「ああ! ゴ、ゴメン! 大丈夫!」
「大丈夫よ」
慌てふためく女に吸血鬼と堕天使はぼそりと呟いた。
「……絶対騙されてるよな」
「だよね……。あれが怪我人の動きなわけないよ」
「ゴッホ!! ゲホゴホ!!」
「ああちょっと! ホントに大丈夫!?」
大きくなった咳で吸血鬼と堕天使の台詞はかき消された。
咳が収まった魔王は穏やかな表情で女の肩をぽんぽんと叩き、彼女を安心させる。
「大丈夫大丈夫……それで貴女にちょっとお願いがあるんだけど聞いてくれない?」
「わ、私に!? あなたが!?」
女は自分と魔王の間を何度も指先を向けて確認した。
「そうよ。貴女にしか頼めない」
微笑みながら肯定する魔王。
数秒、女はじっと魔王を凝視したまま動かずにいたが、唐突に動き出すと大きく息を吸って胸を張る。
「い、いいわよ!? どうしてもって言うなら引き受けてあげないこともないけど!?」
実際にそういうと、声が完全に裏返っていた。
自覚があるのか女の顔は耳まで真っ赤になっていたが、魔王はスルーすることにしたようだった。
「そう! ありがとう! 実はね? ある人間の手助けをして欲しいのよ」
「……人間?」
「そう。あの城にいた、金髪の女の子覚えてる? 魔剣を持ってた娘なんだけど」
その瞬間三人は、かつて魔剣で爆撃された記憶がフラッシュバックした。
「ああ・・・・・・それは知ってるわ。まさか! あの人間の手助けをしろってこと! 無理よ!」
女が盛大に口元を引きつらせると、魔王は悲しげに眼をうるませて、女の手を取った。
「……さっきは任せてくれって言ったのに?」
「うぅ……そ、そんな表情ずるくない?」
「そう……無理言ってゴメンナサイね……どうしても無理なら、いいんだけど――ゴホゴホゴホッ!」
「わ、わかったわよ! だから落ち着いて!」
「そう! ありがとう!」
魔王はとてもいい笑顔で女の手を握り何度も頷いた。
そんなやり取りを見た吸血鬼と堕天使は、渋面を並べていた。
「絶対手のひらの上だよな?」
「ああ、何であれほどわざとらしいのに気が付かないのか」
「ゴホゴホゴホ!!」
吸血鬼と堕天使の呟きは、やはり大きな咳にかき消された。
そして魔王は今度は、どこか楽しげに手を打ち合わせ懐から黒い物を取り出すと女の肩をがっちりと掴む。
「そうだ! せっかく引き受けてくれたんだもの! ちょっとした贈り物があるんだけどもらってくれない!」
「え? 私に? プ、プレゼントってこと?」
「そう! 今回のお願い事にもピッタリだと思うの!」
魔王の手元でボカンと煙があがる。
出てきたのは大きなクローゼットで、魔王はその中をしばし物色すると衣装を取り出して、女に手渡した。
「これよ! いつかこういう日が来るかと思って作っておいたの! 貴女に似合うと思うわ!」
「て、手作りなの?」
「そうなの! ぜひ着てみて!」
「……わ、わかったわよ」
「ホントに! ヤッタ!」
鼻息が荒くなった魔王は先ほどとはまるで別人のようなテンションだった。
詰め寄られた女はなすすべもなく進められるままに衣装受けとることしかできない。
だが興奮しすぎたことに気が付いた魔王は、すぐに跳ね上げてしまった布団を元に戻して咳払いすると元の落ち着きを取り戻す。
「うおっほん! そう。それはきっと正体を隠すことにも役に立つはず……今の私はあなたたち三人にたよる他ない。この衣装を着てがんばってきてね!」
だが思わぬ言葉の不意打ちが、吸血鬼と堕天使を襲う。
「ん?」
「あなたたち?」
ちゃんと聞き捨てならない部分には気が付いていたが言葉の続きをさえぎるには、吸血鬼と堕天使の二人ではあまりにも力不足だった。
ポワンとしている女は唯一指摘するタイミングを当然のように逃し、魔王の決定的な言葉は彼らを名指しする。
「そう! 仮の名前も必要ね! それでは今日からあなたたちはマオちゃんズ一号、二号、三号として使命を果たすのよ!」
さぁとどこかを指差した魔王。
この台詞にはさすがに三人声を揃えた。
「「「なにその名前!?」」」
「え? わかりやすくっていいでしょう? ゴホッ! ゴホ!」
「ああ! 興奮するから!」
とたんに咳き込んだ魔王に動揺する女にとうとう吸血鬼と堕天使の堪忍袋の緒が切れた。
「お前ホントいい加減にしろよ! 何であんなのにごまかされるんだ!」
「恋する乙女か! 盲目か!」
「だ、だ、だ誰が恋する乙女よ!」
言い争う三人組に魔王は深くうなずき、吸血鬼と堕天使に安心しろと力強く親指を立てる。
「大丈夫よ! ちゃんとあなたたち二人の衣装もあるから!」
「いるかそんなもん!」
「そんな変な服誰が着るか!?」
吸血鬼と堕天使の勢いに任せた怒りの台詞が招いたのは、今日一番の殺気の乗った眼光だった。
「……変な服?」
視線だけで不死でも絶命しそうな、圧倒的プレッシャーを前にしては些細な言い争いなど一瞬で終わる。
か弱い存在の他愛のない勢いだけの対抗心など、涙と一緒に流れ出た。
「――ゴメンナサイ。喜んで着させていただきます」
「――よく見るととても素敵な服でした」
「わかってくれたらいいのよ。二号、三号」
「ああその名前も決まりなんですね」
「……がんばります」
「本当にがんばって頂戴ね?」
こうしてマオちゃんズ一号二号三号は、この後半ば強制的に使命を果たすべく旅立ったのである。
誰もいなくなった城の中で、もう魔王ともいえないただのマオちゃんはどさりとベッドに倒れ込む。
「あたたた……、ちょっと無茶しちゃったかも」
マオちゃん体の芯から響くような痛みは、ただの痛みとは明らかに違うものだった。
「ぐぇ……体の中がぐるぐるする。やっばかったー。これは……しばらく魔法も使えそうにないか。タローちゃんやってくれるわー魔力だけの攻撃って案外やばーい」
あの時放たれた、純粋な魔力の塊は肉体ともども深く魂にまでダメージを与えていた。
体の傷ではなく魂へのダメージは魔力を大きくかき乱すらしい。
魔力の制御がうまく働かず、下手すれば暴発しかねないくらいに不安定になっている。
そしてその影響は、確実に肉体にも反映されていた。
まず全身の痺れである。
特に両手両足の痺れはまともに動かせるかも怪しい。
これでは普段通りなど望めない。さっきの脅しもまぁほとんど腕力のみで情けない威力だった。
マオちゃんは震える自分の手をもう一度何か振って、痺れの具合を確かめた。
「でも何よりまずいのは……今のまま魔王城に戻っても魔王としての力をまったく振るうことは出来ないことよねぇ」
マオちゃんは自分の情けない有様に深々とため息を付いた。
このまま魔王城を離れていれば、魔王を魔力源としている魔法のいくつかが機能しなくなるだろう。
結果、魔族に対する魔獣の制御も甘くなる。
その影響は魔力に敏感な者なら、今すぐにでも気が付いてもおかしくない。いや、もうすでに異変は勘付かれていると見るべきだった。
気性の荒い魔族がそのことを知って、魔王をサポートしようとはせ参じるものがどれだけいるものかは疑わしい。
仮に来たところで、弱りきった魔王など格好の餌食に違いなかった。
マオちゃんはその光景があまりにも鮮やかに脳裏をよぎって頭を抱えた。
「まぁ強いのがきたら勝てないかもしれないわねー」
だがそれでも、なんとしてもマオちゃんは三人を言いくるめねばならなかった。
「完全回復まで大体三ヶ月って所かしら? まぁそのくらいなら力さえ戻ればどうにかごまかせそうだけれど……せめてそのあいだ魔族がタローちゃんを探したって事実は残しておきたいわよね。セーラーちゃんなら、なんとかタローちゃんの力になろうとすると思うけど、どうかしらねー。身内がやらかしちゃったのは痛いわ」
マオちゃんは、ここで命を絶つことも考えたがそれは選択肢から外さざるを得なかった。
なぜなら、今は魔獣の異常繁殖期。今の魔王が死ねば、次の魔王はすぐに選ばれることになる。
そして次点の候補者は先ほど話していたあの子なのだから。
マオちゃんは自分の同じ魔人族の女の子を想い、目を細める。
とても優秀だけど、今一不器用なあの娘。
魔人族の中には、今でも彼女を魔王にと考えている者は存在する。
彼女は魔王になることは出来るだろう。
現魔王である自分の魔力も上乗せされれば魔王としての勤めは果たせるかもしれない。
だが問題はタローという名の魔法使い失踪の原因を作ったことはすでに知られているということだった。
これがかなり決定的にまずい。
タローは表立って影響力を持つようなことはしていなかったが、力のある者ほど顔が利いた。
彼を排除した。その原因を作った者がいたとしたら、印象はかなり悪いものになるのは予想が付いた。
余計なことをしてくれたと思う者も当然出てくるだろう。
ざっと思い浮かべるだけでも、スケさんや、薔薇の君さん、クイーンさん……。
竜や妖精といった、今まで仲良くとは行かずとも正面から敵対してこなかった種族とことを交える可能性すら出てくる。
「ひょっとしたら私の側近さえ、彼女に牙を向くかもしれないわねぇ。そうなったら滅ぶでしょう魔族は」
すぐに魔王として、不手際を挽回するような何か力添えが出来ればよかったが、魔王城を維持できなくなった魔王など魔王足り得ない。
マオちゃんは目を細め、あの三人組の顔を思い浮かべ祈るように呟いた。
「ホントに……がんばってよ? タローちゃんが戻らなかったらどうなるか、貴女たちの今後にだって関わってくるんだから。あのチーム名でわかる人にはわかると思うんだけどなぁ」
自分がこの先どうなるとしても、うまくいくあてくらいは作っておくべきだとマオちゃんは重い息を吐き出した。
天井を眺めること数秒。
マオちゃんはクワッと両目を見開き体をうつ伏せにひっくり返して、懐から大事にしまっていた物を取り出した。
「ま! こればっかりはなるようにしかならないわね! タローちゃんならそのうち帰って来るでしょ! やれることはやったし、ネガティブなのおしまい! 私は私で回復に専念しつつ、情報操作しましょう! 思う存分ネットワークに身をゆだねましょう! 大丈夫! タローちゃんならすぐ帰ってくるって! あ、湖の貴婦人さん新作更新してるー」
そしてマオちゃんは一先ず問題は棚上げしておいて、本当にしばらくぶりの一人の時間を療養がてら有効活用すべく気合を入れたのだった。
人知れず忘れ去られた古城にて、吸血鬼と堕天使、そして魔族の女はにらみ合う。
「何をやってるのかしら? 臆病者ども。土壇場で逃げ出しておいてよくもまぁここに戻ってこれたものね?」
魔族の女はその手にメラメラと魔法の炎を燃え上がらせて二人の異形を威圧した。
しかし吸血鬼と堕天使はそれすら目に入らないほど血相を変えて言った。
「お前こそ何を連れてきているんだ!」
「どう見たってこいつ魔王だよね! 正気なのかい!?」
彼らの指差した先には気を失った男が静かに寝息を立てていた。
そして彼こそ、おそらくここに最もいてはいけない男だった。
指摘されて目を泳がせる女の炎は明らかに勢いがなくなった。
「仕方なかったのよ。……成り行きで……」
「どんな成り行きだよ!」
「殺そうとした相手だぞ? 看病してどうする!」
女が言葉を濁すと畳み掛けてくる二人。
魔王をちらりと見た彼女は考え込み、そして叫んだ。
「……それもまぁ……その、成り行きなの!」
「「だからどんな成り行きだよ!」」
「成り行きは成り行きよ! それで納得しなさいよ!」
ガツンと城の床を蹴り砕く女だが、吸血鬼も堕天使もその程度では怯みもしなかった。
「できるわけないだろうが!」
「どうするんだよ! 起きる前に何とかしないと!」
「……ごめんなさい。もう起きてるんだけど……話して大丈夫かしら?」
だがたった一言、おずおずと切り出された一言の破壊力は大きかった。
「……あ」
「……い!」
「……う!!」
言い争っていた三人は完全に固まる。
声をかけてきた人物は彼らの話題の中心であり、物理的にも中心のベッドで寝かされていた人物――魔王その人だったからだ。
完全に目が点になった三人をやれやれと眺めて、魔王は寝癖の残った頭を掻いた。
「いやー……死ぬかと思ったわー……それでここどこ?」
吸血鬼と堕天使は飛び上がって部屋の隅に移動する。
「魔王!」
「おおお! やる気か! やる気なのか!」
「はぁ……」
「ああ!なんだその溜息は! なんだか軽く見られている気がするぞ!」
「く! 甘く見るなよ! そう甘く見てもらっては困るぞ!」
だがその中でただ一人、魔族の女は魔王対して落ち着いた態度で話し始めた。
「……ここは私達が拠点にしている城よ。私が連れてきたの」
「……そう。助かったわ。ありがとね」
素直に礼を言う魔王に吸血鬼と堕天使は絶句する。
そして、吸血鬼と堕天使はすがるような視線を女に向けるが、女は火がついたように頬を赤くしていた。
「か、勘違いしないでよね! 貴方を助けたのは偶然なんだから! あんなめちゃくちゃな状況でうっかり死なれちゃ今まで準備してた私達が馬鹿みたいじゃない!」
驚きのあまり声すら出ない吸血鬼と堕天使の心の声がこの瞬間シンクロした。
なんなんだその反応!
一方魔王はあんな状況という言葉を思い返して、目を閉じる。
タローと呼ばれていた人間の魔法使い。
その攻撃を受けて、半死半生になった姿は魔王にあるまじきものだった。
「そうね……そうだった。でも死にかけた割には傷が少ないんだけど、何か心当たりあるかしら?」
「……一緒にいた蛙の亜人が治療していたみたいだけど」
「ああ。そう、さすがカワズちゃんね。いい腕してる」
軽く体を動かす魔王は感心した風に呟く。
魔王の身体は両腕を中心にひどいものだったが今は綺麗に傷がふさがっていた。
治療は居合わせたカエルの魔法使いによるものだが、ここまで強力な治癒の魔法の使い手は早々いるものではない。
魔王は体を起こそうとするが、しかし魔王は苦しげに胸を押さえた。
「え! 大丈夫!」
「ゴホゴホ! ……大丈夫大丈夫。でも本調子じゃない……みたいね」
「そ、そうなの! どどど、どうすればいいの!」
「落ち着いて。大丈夫よ、見ての通り傷は完全に塞がっているんだから」
どこか弱々しくアピールする魔王だったが、その結果勢いを取り戻したのは吸血鬼と堕天使だった。
彼らは部屋の隅でにたりと笑い、同時に好戦的な魔力を迸らせ、魔王に向かって構えた。
「クックック! これぞ好機! さぁ血の宴を始めようぞ!」
「はっはっは! お前の天下もここまでだよ!」
「へぇ……貴方達私とやる気?」
「手負いの魔王ぅ! 覚悟ぉ! はぁあああああ!!」
「このチャンスを逃すほどお人よしじゃないぞ! おおおおおおおおお!!」
ゾン
しかし、その時とても重い音がして、興奮しきった堕天使の頬に数適血が飛ぶ。
「へ?」
堕天使は重くなった首で堕天使が横を向くと、そこには上半身が跡形もなく吹き飛ばされた吸血鬼の姿があった。
けだるげに、ベッドから身を起こしているだけの魔王は、プラプラと真っ赤になった右手を振っていた。
「あーごめんなさいね。ちょっと今病み上がりで加減が出来なくって。まだやる? 次はもう少しうまくやれると思うけど?」
魔王はにっこりと笑う。
その笑みに一点の曇りもないことに、堕天使は強烈な恐怖を感じた。
「……いえ。その。ごめんなさい」
「いいのよ。こっちこそごめんなさいね」
その後、血霞となっていた吸血鬼もすぐに再生し上半身を取り戻すが、彼はすべて元通りになってからようやく、今自分に何が起こったのかに気が付いて、がたがた震えはじめた。
「……今俺は殺されたか? ひょっとして」
「……お前最近よく殺されるよな」
「さすがは吸血鬼、噂の不死性は伊達じゃないわね。貴方を滅ぼすのは多少骨でしょうけど。貴方がそれを望むなら、もう少し付き合いましょう。どうせ今は暇だし」
やはり魔王はにっこりと笑う。
たくましい体を臨戦態勢で隆起させた吸血鬼だったが、結局ストンと脱力し両手を挙げた。
「……いや。いい。よくわかった。いや、直に接してようやく理解したよ。元々、あんたを倒そうと考えたのは我らの長が魔王を過剰に恐れていたがゆえだ」
「そう。整理が出来たならよかったわ」
なんでもなく一撃で事態を収束して見せた魔王に青い顔の女は尋ねた。
「……本当に、ダメージ残ってるの?」
「……当たり前じゃない。むしろ、あの状況を見ていたのにダメージがないって思う?……ゴホ! ゴッホ!」
「ああ! ゴ、ゴメン! 大丈夫!」
「大丈夫よ」
慌てふためく女に吸血鬼と堕天使はぼそりと呟いた。
「……絶対騙されてるよな」
「だよね……。あれが怪我人の動きなわけないよ」
「ゴッホ!! ゲホゴホ!!」
「ああちょっと! ホントに大丈夫!?」
大きくなった咳で吸血鬼と堕天使の台詞はかき消された。
咳が収まった魔王は穏やかな表情で女の肩をぽんぽんと叩き、彼女を安心させる。
「大丈夫大丈夫……それで貴女にちょっとお願いがあるんだけど聞いてくれない?」
「わ、私に!? あなたが!?」
女は自分と魔王の間を何度も指先を向けて確認した。
「そうよ。貴女にしか頼めない」
微笑みながら肯定する魔王。
数秒、女はじっと魔王を凝視したまま動かずにいたが、唐突に動き出すと大きく息を吸って胸を張る。
「い、いいわよ!? どうしてもって言うなら引き受けてあげないこともないけど!?」
実際にそういうと、声が完全に裏返っていた。
自覚があるのか女の顔は耳まで真っ赤になっていたが、魔王はスルーすることにしたようだった。
「そう! ありがとう! 実はね? ある人間の手助けをして欲しいのよ」
「……人間?」
「そう。あの城にいた、金髪の女の子覚えてる? 魔剣を持ってた娘なんだけど」
その瞬間三人は、かつて魔剣で爆撃された記憶がフラッシュバックした。
「ああ・・・・・・それは知ってるわ。まさか! あの人間の手助けをしろってこと! 無理よ!」
女が盛大に口元を引きつらせると、魔王は悲しげに眼をうるませて、女の手を取った。
「……さっきは任せてくれって言ったのに?」
「うぅ……そ、そんな表情ずるくない?」
「そう……無理言ってゴメンナサイね……どうしても無理なら、いいんだけど――ゴホゴホゴホッ!」
「わ、わかったわよ! だから落ち着いて!」
「そう! ありがとう!」
魔王はとてもいい笑顔で女の手を握り何度も頷いた。
そんなやり取りを見た吸血鬼と堕天使は、渋面を並べていた。
「絶対手のひらの上だよな?」
「ああ、何であれほどわざとらしいのに気が付かないのか」
「ゴホゴホゴホ!!」
吸血鬼と堕天使の呟きは、やはり大きな咳にかき消された。
そして魔王は今度は、どこか楽しげに手を打ち合わせ懐から黒い物を取り出すと女の肩をがっちりと掴む。
「そうだ! せっかく引き受けてくれたんだもの! ちょっとした贈り物があるんだけどもらってくれない!」
「え? 私に? プ、プレゼントってこと?」
「そう! 今回のお願い事にもピッタリだと思うの!」
魔王の手元でボカンと煙があがる。
出てきたのは大きなクローゼットで、魔王はその中をしばし物色すると衣装を取り出して、女に手渡した。
「これよ! いつかこういう日が来るかと思って作っておいたの! 貴女に似合うと思うわ!」
「て、手作りなの?」
「そうなの! ぜひ着てみて!」
「……わ、わかったわよ」
「ホントに! ヤッタ!」
鼻息が荒くなった魔王は先ほどとはまるで別人のようなテンションだった。
詰め寄られた女はなすすべもなく進められるままに衣装受けとることしかできない。
だが興奮しすぎたことに気が付いた魔王は、すぐに跳ね上げてしまった布団を元に戻して咳払いすると元の落ち着きを取り戻す。
「うおっほん! そう。それはきっと正体を隠すことにも役に立つはず……今の私はあなたたち三人にたよる他ない。この衣装を着てがんばってきてね!」
だが思わぬ言葉の不意打ちが、吸血鬼と堕天使を襲う。
「ん?」
「あなたたち?」
ちゃんと聞き捨てならない部分には気が付いていたが言葉の続きをさえぎるには、吸血鬼と堕天使の二人ではあまりにも力不足だった。
ポワンとしている女は唯一指摘するタイミングを当然のように逃し、魔王の決定的な言葉は彼らを名指しする。
「そう! 仮の名前も必要ね! それでは今日からあなたたちはマオちゃんズ一号、二号、三号として使命を果たすのよ!」
さぁとどこかを指差した魔王。
この台詞にはさすがに三人声を揃えた。
「「「なにその名前!?」」」
「え? わかりやすくっていいでしょう? ゴホッ! ゴホ!」
「ああ! 興奮するから!」
とたんに咳き込んだ魔王に動揺する女にとうとう吸血鬼と堕天使の堪忍袋の緒が切れた。
「お前ホントいい加減にしろよ! 何であんなのにごまかされるんだ!」
「恋する乙女か! 盲目か!」
「だ、だ、だ誰が恋する乙女よ!」
言い争う三人組に魔王は深くうなずき、吸血鬼と堕天使に安心しろと力強く親指を立てる。
「大丈夫よ! ちゃんとあなたたち二人の衣装もあるから!」
「いるかそんなもん!」
「そんな変な服誰が着るか!?」
吸血鬼と堕天使の勢いに任せた怒りの台詞が招いたのは、今日一番の殺気の乗った眼光だった。
「……変な服?」
視線だけで不死でも絶命しそうな、圧倒的プレッシャーを前にしては些細な言い争いなど一瞬で終わる。
か弱い存在の他愛のない勢いだけの対抗心など、涙と一緒に流れ出た。
「――ゴメンナサイ。喜んで着させていただきます」
「――よく見るととても素敵な服でした」
「わかってくれたらいいのよ。二号、三号」
「ああその名前も決まりなんですね」
「……がんばります」
「本当にがんばって頂戴ね?」
こうしてマオちゃんズ一号二号三号は、この後半ば強制的に使命を果たすべく旅立ったのである。
誰もいなくなった城の中で、もう魔王ともいえないただのマオちゃんはどさりとベッドに倒れ込む。
「あたたた……、ちょっと無茶しちゃったかも」
マオちゃん体の芯から響くような痛みは、ただの痛みとは明らかに違うものだった。
「ぐぇ……体の中がぐるぐるする。やっばかったー。これは……しばらく魔法も使えそうにないか。タローちゃんやってくれるわー魔力だけの攻撃って案外やばーい」
あの時放たれた、純粋な魔力の塊は肉体ともども深く魂にまでダメージを与えていた。
体の傷ではなく魂へのダメージは魔力を大きくかき乱すらしい。
魔力の制御がうまく働かず、下手すれば暴発しかねないくらいに不安定になっている。
そしてその影響は、確実に肉体にも反映されていた。
まず全身の痺れである。
特に両手両足の痺れはまともに動かせるかも怪しい。
これでは普段通りなど望めない。さっきの脅しもまぁほとんど腕力のみで情けない威力だった。
マオちゃんは震える自分の手をもう一度何か振って、痺れの具合を確かめた。
「でも何よりまずいのは……今のまま魔王城に戻っても魔王としての力をまったく振るうことは出来ないことよねぇ」
マオちゃんは自分の情けない有様に深々とため息を付いた。
このまま魔王城を離れていれば、魔王を魔力源としている魔法のいくつかが機能しなくなるだろう。
結果、魔族に対する魔獣の制御も甘くなる。
その影響は魔力に敏感な者なら、今すぐにでも気が付いてもおかしくない。いや、もうすでに異変は勘付かれていると見るべきだった。
気性の荒い魔族がそのことを知って、魔王をサポートしようとはせ参じるものがどれだけいるものかは疑わしい。
仮に来たところで、弱りきった魔王など格好の餌食に違いなかった。
マオちゃんはその光景があまりにも鮮やかに脳裏をよぎって頭を抱えた。
「まぁ強いのがきたら勝てないかもしれないわねー」
だがそれでも、なんとしてもマオちゃんは三人を言いくるめねばならなかった。
「完全回復まで大体三ヶ月って所かしら? まぁそのくらいなら力さえ戻ればどうにかごまかせそうだけれど……せめてそのあいだ魔族がタローちゃんを探したって事実は残しておきたいわよね。セーラーちゃんなら、なんとかタローちゃんの力になろうとすると思うけど、どうかしらねー。身内がやらかしちゃったのは痛いわ」
マオちゃんは、ここで命を絶つことも考えたがそれは選択肢から外さざるを得なかった。
なぜなら、今は魔獣の異常繁殖期。今の魔王が死ねば、次の魔王はすぐに選ばれることになる。
そして次点の候補者は先ほど話していたあの子なのだから。
マオちゃんは自分の同じ魔人族の女の子を想い、目を細める。
とても優秀だけど、今一不器用なあの娘。
魔人族の中には、今でも彼女を魔王にと考えている者は存在する。
彼女は魔王になることは出来るだろう。
現魔王である自分の魔力も上乗せされれば魔王としての勤めは果たせるかもしれない。
だが問題はタローという名の魔法使い失踪の原因を作ったことはすでに知られているということだった。
これがかなり決定的にまずい。
タローは表立って影響力を持つようなことはしていなかったが、力のある者ほど顔が利いた。
彼を排除した。その原因を作った者がいたとしたら、印象はかなり悪いものになるのは予想が付いた。
余計なことをしてくれたと思う者も当然出てくるだろう。
ざっと思い浮かべるだけでも、スケさんや、薔薇の君さん、クイーンさん……。
竜や妖精といった、今まで仲良くとは行かずとも正面から敵対してこなかった種族とことを交える可能性すら出てくる。
「ひょっとしたら私の側近さえ、彼女に牙を向くかもしれないわねぇ。そうなったら滅ぶでしょう魔族は」
すぐに魔王として、不手際を挽回するような何か力添えが出来ればよかったが、魔王城を維持できなくなった魔王など魔王足り得ない。
マオちゃんは目を細め、あの三人組の顔を思い浮かべ祈るように呟いた。
「ホントに……がんばってよ? タローちゃんが戻らなかったらどうなるか、貴女たちの今後にだって関わってくるんだから。あのチーム名でわかる人にはわかると思うんだけどなぁ」
自分がこの先どうなるとしても、うまくいくあてくらいは作っておくべきだとマオちゃんは重い息を吐き出した。
天井を眺めること数秒。
マオちゃんはクワッと両目を見開き体をうつ伏せにひっくり返して、懐から大事にしまっていた物を取り出した。
「ま! こればっかりはなるようにしかならないわね! タローちゃんならそのうち帰って来るでしょ! やれることはやったし、ネガティブなのおしまい! 私は私で回復に専念しつつ、情報操作しましょう! 思う存分ネットワークに身をゆだねましょう! 大丈夫! タローちゃんならすぐ帰ってくるって! あ、湖の貴婦人さん新作更新してるー」
そしてマオちゃんは一先ず問題は棚上げしておいて、本当にしばらくぶりの一人の時間を療養がてら有効活用すべく気合を入れたのだった。
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