174 / 183
連載
第一印象 4
しおりを挟む
なにをやってるんだ太郎!
心の中で私は悲鳴を上げた。
そしてさっきから、尋常でないプレッシャーを感じ、私は振り向いて背筋を凍らせる。
「な、なにこれ?」
ゾロリと部屋中から現れたのは大量の空飛ぶ人形だった。
あまりにも不気味すぎる木製の人形はどうやら彼女、フランソワーズが操っているようだ。
「すごいでしょう? 昔から人形を操るのは得意なんですよ?」
先ほど似たような台詞を聞いた気がしたが、印象がまるで違う。
フランソワーズは何らかの魔法を使っていた。
だがそれで私達を足止めする意味がわからない。
「何でこんなことを?」
咄嗟に尋ねたが、聞かなきゃ良かったとちょっと後悔した。
「……申し訳ありませんが。私はこのチャンスを逃す気など欠片もありません。素直に話していただければ何の問題もなかったのですが……仕方ありません。洗いざらい吐いていただけますか?」
人形達の目が光る。
だけど人形達以上に瞳孔の開いた目をしているフランソワーズはどうしようもない感じだった。
「落ち着いてください! こんなことは無意味ですよ!」
「そんな事はやってみなければわかりませんわ。これでも人を見る目はあるのです。隠し事をしていらっしゃるでしょう?」
「うぬ……」
まさに図星である。
そんな姿を見たエルエルは私に尋ねる。
「撃って・いいですか?」
「ダメだからね!」
この子も、かなり油断ならなかった。
何とかこの状況を丸く治めたい。
私は更なる説得をこころみた。
「えっとですね! 彼はこんな争いごとを望むような人ではないんです! 平和的な性格の人ですから、こんな風に争うことは嫌がると思います!」
「……ほほう。それはまたあのお方をよくご存知のようだ。やはりお話を伺わなければならないようです」
「うぐ……」
しまった! 逆効果だった!
だがしかし私もどうやら少なからず動揺しているようだった。
そうしてちょんちょんと腕をつつかれると、エルエルが言った。
「蜂の巣・ですか?」
「もうちょっと待ってね!」
まだもう少しがんばれるはず。
それに、もうちょっとでいい。
おおよそ私の方も最後の実力行使の準備が整う。
「それでは一先ず、捕まえますね?」
「待ってください! それ以上は私にも考えがあります!」
「問答無用です♪」
フランソワーズはカクンとそれこそ人形のように首を横に傾けた。
そのとたんカタカタおびただしい数の音が私達に殺到する。
私達に群がる人形はいっせいにその手を伸ばす。
「……!」
だがその手は、すべて弾き飛ばされ、私達には届かなかった。
「きゃあああ!!」
叫び声はフランソワーズのもので、私は結局最後の手段に手を出した。
宙吊りにされて、動けないフランソワーズは一先ず無傷で捕獲できたようだった。
「ふぅ……うまくいってよかった」
私は自分のつけているペンダントを軽くなでる。
静かに事に備えてみたがやってみるものだ。
このペンダント。フィールドオブソードの見えない触手は私の意のままに動き、人形を弾き飛ばしてフランソワーズを拘束した。
手足を縛り、宙吊りにされた彼女は、もう完全に動きが取れないようだった。
「……便利だなこれ。力加減は出来るし」
思わず呟く。
ここまでスマートに無力化というのは、はっきり言って珍しい。
何より攻撃しても被害が少ない。
魔剣が先についていた頃なら、この屋敷ごと粉々にしてしまったかもしれない。
「な、なな、なんですかこれは! 私の人形達が!」
「ああ、ゴメン。ちょっとだまっててね?」
「もごもがむぐ!」
素早く私の意思を反映して口をふさぐ触手。
やっぱり触手、便利である。
「ふぅ……さてどうしよう?」
だけどうまく行き過ぎている時は、大体不測の事態が起こる。
今回もやはりこれで終わりではなかった。
「お嬢様いかがなされました!」
バン! と勢いよく応接室の扉が開けはなたれて、使用人らしき男が入って来た。
まぁこれだけ派手に騒いでいれば当たり前だ。
私達はとっさに身構えるが、なぜだか彼が襲ってくることはなく。
それどころか、こっちを見つめたまま男はその場で腰を抜かしていた。
「あ……」
そして私に震える指を向け、こう呟叫んだのである。
「悪魔!」
「へ?」
変な声を出してしまったが、よく自分の今の姿を確認して納得してしまった。
周囲にはばらばらになった人形の残骸と、なぜか口をあけて空中に静止するお嬢様。
彼女の服には何かが撒きついたと思わしき跡だけがあるが、透明で見えず、ちょっと扇情的である。
そしてそれをやっているのが一番疑わしいのが私。
「あぁー……便利だと思ったんだけどなぁ」
なるほど言われてみれば確かに、こいつはなんとなく悪魔っぽい所業である。
心の中で私は悲鳴を上げた。
そしてさっきから、尋常でないプレッシャーを感じ、私は振り向いて背筋を凍らせる。
「な、なにこれ?」
ゾロリと部屋中から現れたのは大量の空飛ぶ人形だった。
あまりにも不気味すぎる木製の人形はどうやら彼女、フランソワーズが操っているようだ。
「すごいでしょう? 昔から人形を操るのは得意なんですよ?」
先ほど似たような台詞を聞いた気がしたが、印象がまるで違う。
フランソワーズは何らかの魔法を使っていた。
だがそれで私達を足止めする意味がわからない。
「何でこんなことを?」
咄嗟に尋ねたが、聞かなきゃ良かったとちょっと後悔した。
「……申し訳ありませんが。私はこのチャンスを逃す気など欠片もありません。素直に話していただければ何の問題もなかったのですが……仕方ありません。洗いざらい吐いていただけますか?」
人形達の目が光る。
だけど人形達以上に瞳孔の開いた目をしているフランソワーズはどうしようもない感じだった。
「落ち着いてください! こんなことは無意味ですよ!」
「そんな事はやってみなければわかりませんわ。これでも人を見る目はあるのです。隠し事をしていらっしゃるでしょう?」
「うぬ……」
まさに図星である。
そんな姿を見たエルエルは私に尋ねる。
「撃って・いいですか?」
「ダメだからね!」
この子も、かなり油断ならなかった。
何とかこの状況を丸く治めたい。
私は更なる説得をこころみた。
「えっとですね! 彼はこんな争いごとを望むような人ではないんです! 平和的な性格の人ですから、こんな風に争うことは嫌がると思います!」
「……ほほう。それはまたあのお方をよくご存知のようだ。やはりお話を伺わなければならないようです」
「うぐ……」
しまった! 逆効果だった!
だがしかし私もどうやら少なからず動揺しているようだった。
そうしてちょんちょんと腕をつつかれると、エルエルが言った。
「蜂の巣・ですか?」
「もうちょっと待ってね!」
まだもう少しがんばれるはず。
それに、もうちょっとでいい。
おおよそ私の方も最後の実力行使の準備が整う。
「それでは一先ず、捕まえますね?」
「待ってください! それ以上は私にも考えがあります!」
「問答無用です♪」
フランソワーズはカクンとそれこそ人形のように首を横に傾けた。
そのとたんカタカタおびただしい数の音が私達に殺到する。
私達に群がる人形はいっせいにその手を伸ばす。
「……!」
だがその手は、すべて弾き飛ばされ、私達には届かなかった。
「きゃあああ!!」
叫び声はフランソワーズのもので、私は結局最後の手段に手を出した。
宙吊りにされて、動けないフランソワーズは一先ず無傷で捕獲できたようだった。
「ふぅ……うまくいってよかった」
私は自分のつけているペンダントを軽くなでる。
静かに事に備えてみたがやってみるものだ。
このペンダント。フィールドオブソードの見えない触手は私の意のままに動き、人形を弾き飛ばしてフランソワーズを拘束した。
手足を縛り、宙吊りにされた彼女は、もう完全に動きが取れないようだった。
「……便利だなこれ。力加減は出来るし」
思わず呟く。
ここまでスマートに無力化というのは、はっきり言って珍しい。
何より攻撃しても被害が少ない。
魔剣が先についていた頃なら、この屋敷ごと粉々にしてしまったかもしれない。
「な、なな、なんですかこれは! 私の人形達が!」
「ああ、ゴメン。ちょっとだまっててね?」
「もごもがむぐ!」
素早く私の意思を反映して口をふさぐ触手。
やっぱり触手、便利である。
「ふぅ……さてどうしよう?」
だけどうまく行き過ぎている時は、大体不測の事態が起こる。
今回もやはりこれで終わりではなかった。
「お嬢様いかがなされました!」
バン! と勢いよく応接室の扉が開けはなたれて、使用人らしき男が入って来た。
まぁこれだけ派手に騒いでいれば当たり前だ。
私達はとっさに身構えるが、なぜだか彼が襲ってくることはなく。
それどころか、こっちを見つめたまま男はその場で腰を抜かしていた。
「あ……」
そして私に震える指を向け、こう呟叫んだのである。
「悪魔!」
「へ?」
変な声を出してしまったが、よく自分の今の姿を確認して納得してしまった。
周囲にはばらばらになった人形の残骸と、なぜか口をあけて空中に静止するお嬢様。
彼女の服には何かが撒きついたと思わしき跡だけがあるが、透明で見えず、ちょっと扇情的である。
そしてそれをやっているのが一番疑わしいのが私。
「あぁー……便利だと思ったんだけどなぁ」
なるほど言われてみれば確かに、こいつはなんとなく悪魔っぽい所業である。
0
お気に入りに追加
2,040
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺と蛙さんの異世界放浪記~八百万ってたくさんって意味らしい~
くずもち
ファンタジー
変な爺さんに妙なものを押し付けられた。
なんでも魔法が使えるようになったらしい。
その上異世界に誘拐されるという珍事に巻き込まれてしまったのだからたまらない。
ばかばかしいとは思いつつ紅野 太郎は実際に魔法を使ってみることにした。
この魔法、自分の魔力の量がわかるらしいんだけど……ちょっとばっかり多すぎじゃないか?
異世界トリップものです。
主人公最強ものなのでご注意ください。
*絵本風ダイジェスト始めました。(現在十巻分まで差し替え中です)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。