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第一印象 1
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「すごいです・世界は広い」
「そうだね……いいんだけど。落さないでよエルエル?」
「ダイジョブ・ダイジョブ」
「なんでカタコトになったの!」
翼を広げた天使に抱えられ、空を飛ぶ私。天宮 マガリは世界の広さを感じつつ、あまりの高度に命の大切さをかみ締めている。
今唯一私の命をつなぎとめているのが、自分の手のひらにすっぽりと納まってしまう幼い手ともなれば、冷や汗は不可避だった。
「それにしても、上から見ればすぐわかるって、どういうことなんだろう?」
頼りない足の感覚を我慢しながら、手始めに太郎の足跡を追ってやって来た場所は、女王様の情報だった。
「ことさら派手に魔法を使ったようでな。しばし話題になった。まぁ行ってみるのもよかろうよ。高いところから見ればすぐにわかるはずだ」
と、特に何があったのかまでは教えてくれなかった女王様の助言に従えば、こうすれば目的地がわかるはず。
「あ、あそこでは?」
「エルエル! 片手はまずい! あ、それっぽいなぁ」
エルエルが私の手を放して指差した先には、揺らめくように輝く真っ赤な土地が広がっていた。
降り立った町は不思議な赤い石に覆われていた。
エルエルも好奇心に身を任せて、その不思議な鉱石を覗き込んでいる。
「赤い宝石が・沢山・生えています」
宝石のような不思議な石が町中に生えている。
しかも石畳の上だろうが家だろうがお構いなしで、中には家丸ごと、石に取り込まれていたりもしているわけだ。
私は、手短な石を座り込んでよく見てみると、透明感のある石はオレンジや赤に色が揺らめいて見えた。
「さわると……ちょっとあったかい?」
「初めて見る・物質・です」
エルエルも首をかしげているあたり、簡単な宝石というわけでもなさそうである。
「だけど私は……この石よりももっと気になることがある」
「何でしょう?」
「いや、なんでしょうっていうか。アレは……」
言葉にするよりもよほど速いだろうと私のそれを見上げた。
実に雄々しく、町のシンボルとして立派に飾られていたそれをだ。
「こんなところで早速顔を合わせるとは思っていなかったよ。タロー……」
とても立派な石像の顔はまさしく太郎だった。
いや、まさしくなんていったら、太郎は怒りそうだけど。
町の広場に聳え立つそれは、沢山の花まで飾られていてとても大切にされているようだった。
「あれは・タローさん・ですか?」
「まぁたぶんね」
エルエルは小首を傾げたが、あのマントに腰に下げた剣。そして頭の上にピヨンと飛び出した髪の造形は、おそらくタローであると思われる。
脇に紐でつながれたでっかい蛙の像があるのは、何かの間違いだと思いたい。
全体的に感じるのはどこか間の抜けた雰囲気だった。
「おかげで、タローだと判断しやすくて助かった。でもどうせならもうちょっとかっこよくすればいいのに」
町の人も酷な事をする。
やるせない顔をした私に、エルエルは尋ねた。
「助かり・ましたか?」
「いや、うーんまぁ。でも……カワズさんには、内緒かな?」
「内緒ですか?」
「うん。絶対内緒」
下手をするとカワズさんが怒りかねないので、このことは秘密にしておくのがいいだろう。
それにしても何でこんなことになったのか?
私の首も思わず傾く。
像の他にもよく見れば、町のおかしな所は沢山目に付いた。
「僕が今日は魔法使い様の役だからねー!」
「えぇ! 昨日もそうだったじゃん! 今日は僕のばん!」
「えーそうだっけー?」
小さな子供達が布のマントを羽織って、頭の毛を一房、何かで固定して立てていた。
他にも服屋の店先に見たことある色合いのマントがあったり。
お守りとして、赤い宝石加工したものに、魔法使いを模したと思われるテルテル坊主みたいな人形がくっついたものが家の壁にかけてあったりと、太郎の影響だと思われるものがそこかしこに見られる。
私は思った。
「控えめに言って、大人気だ」
「なにが・ですか?」
「太郎がかな? どうやらこの町で彼はものすごい人気を獲得することに成功したらしい」
そしてその原因はと、私は町の赤い石にもう一度目を向けた。
「まぁ、これが関係あるんだろうけど。もう少し見て回ろうか?」
「そうですね。この村で・タローさんがなにをしたのか・知る必要があります」
「その通りだ」
頷くエルエルは無表情だが、やる気を出している。
私もここに来た目的を思い返して気合を入れた。
まずはこの町で何が起こったのか、それを突き止めるべきだろう。
だがそれは調べるまでもなく、すぐにわかることになった。
ふと見ると、広場の片隅に子供達が集まっている。
その中心では人形劇をやっていて、注目すべきは像の特徴を引き継いだような人形だった。
「あの人形は……見覚えがある」
それはまさによく特徴を捉えている。
するとエルエルが私の袖を引っ張り人形劇を指差し、無表情で私を見上げていた。
「見ていっても。かまいませんか?」
なんだろう無表情だけど、すごく興味津々らしい。
まぁ私もその内容は知るべきなのだろうし。
「そうだねじゃあ見ていこうか」
「はい」
私は頷き、子供達にまぎれてその人形劇を見てみることにした。
「そうだね……いいんだけど。落さないでよエルエル?」
「ダイジョブ・ダイジョブ」
「なんでカタコトになったの!」
翼を広げた天使に抱えられ、空を飛ぶ私。天宮 マガリは世界の広さを感じつつ、あまりの高度に命の大切さをかみ締めている。
今唯一私の命をつなぎとめているのが、自分の手のひらにすっぽりと納まってしまう幼い手ともなれば、冷や汗は不可避だった。
「それにしても、上から見ればすぐわかるって、どういうことなんだろう?」
頼りない足の感覚を我慢しながら、手始めに太郎の足跡を追ってやって来た場所は、女王様の情報だった。
「ことさら派手に魔法を使ったようでな。しばし話題になった。まぁ行ってみるのもよかろうよ。高いところから見ればすぐにわかるはずだ」
と、特に何があったのかまでは教えてくれなかった女王様の助言に従えば、こうすれば目的地がわかるはず。
「あ、あそこでは?」
「エルエル! 片手はまずい! あ、それっぽいなぁ」
エルエルが私の手を放して指差した先には、揺らめくように輝く真っ赤な土地が広がっていた。
降り立った町は不思議な赤い石に覆われていた。
エルエルも好奇心に身を任せて、その不思議な鉱石を覗き込んでいる。
「赤い宝石が・沢山・生えています」
宝石のような不思議な石が町中に生えている。
しかも石畳の上だろうが家だろうがお構いなしで、中には家丸ごと、石に取り込まれていたりもしているわけだ。
私は、手短な石を座り込んでよく見てみると、透明感のある石はオレンジや赤に色が揺らめいて見えた。
「さわると……ちょっとあったかい?」
「初めて見る・物質・です」
エルエルも首をかしげているあたり、簡単な宝石というわけでもなさそうである。
「だけど私は……この石よりももっと気になることがある」
「何でしょう?」
「いや、なんでしょうっていうか。アレは……」
言葉にするよりもよほど速いだろうと私のそれを見上げた。
実に雄々しく、町のシンボルとして立派に飾られていたそれをだ。
「こんなところで早速顔を合わせるとは思っていなかったよ。タロー……」
とても立派な石像の顔はまさしく太郎だった。
いや、まさしくなんていったら、太郎は怒りそうだけど。
町の広場に聳え立つそれは、沢山の花まで飾られていてとても大切にされているようだった。
「あれは・タローさん・ですか?」
「まぁたぶんね」
エルエルは小首を傾げたが、あのマントに腰に下げた剣。そして頭の上にピヨンと飛び出した髪の造形は、おそらくタローであると思われる。
脇に紐でつながれたでっかい蛙の像があるのは、何かの間違いだと思いたい。
全体的に感じるのはどこか間の抜けた雰囲気だった。
「おかげで、タローだと判断しやすくて助かった。でもどうせならもうちょっとかっこよくすればいいのに」
町の人も酷な事をする。
やるせない顔をした私に、エルエルは尋ねた。
「助かり・ましたか?」
「いや、うーんまぁ。でも……カワズさんには、内緒かな?」
「内緒ですか?」
「うん。絶対内緒」
下手をするとカワズさんが怒りかねないので、このことは秘密にしておくのがいいだろう。
それにしても何でこんなことになったのか?
私の首も思わず傾く。
像の他にもよく見れば、町のおかしな所は沢山目に付いた。
「僕が今日は魔法使い様の役だからねー!」
「えぇ! 昨日もそうだったじゃん! 今日は僕のばん!」
「えーそうだっけー?」
小さな子供達が布のマントを羽織って、頭の毛を一房、何かで固定して立てていた。
他にも服屋の店先に見たことある色合いのマントがあったり。
お守りとして、赤い宝石加工したものに、魔法使いを模したと思われるテルテル坊主みたいな人形がくっついたものが家の壁にかけてあったりと、太郎の影響だと思われるものがそこかしこに見られる。
私は思った。
「控えめに言って、大人気だ」
「なにが・ですか?」
「太郎がかな? どうやらこの町で彼はものすごい人気を獲得することに成功したらしい」
そしてその原因はと、私は町の赤い石にもう一度目を向けた。
「まぁ、これが関係あるんだろうけど。もう少し見て回ろうか?」
「そうですね。この村で・タローさんがなにをしたのか・知る必要があります」
「その通りだ」
頷くエルエルは無表情だが、やる気を出している。
私もここに来た目的を思い返して気合を入れた。
まずはこの町で何が起こったのか、それを突き止めるべきだろう。
だがそれは調べるまでもなく、すぐにわかることになった。
ふと見ると、広場の片隅に子供達が集まっている。
その中心では人形劇をやっていて、注目すべきは像の特徴を引き継いだような人形だった。
「あの人形は……見覚えがある」
それはまさによく特徴を捉えている。
するとエルエルが私の袖を引っ張り人形劇を指差し、無表情で私を見上げていた。
「見ていっても。かまいませんか?」
なんだろう無表情だけど、すごく興味津々らしい。
まぁ私もその内容は知るべきなのだろうし。
「そうだねじゃあ見ていこうか」
「はい」
私は頷き、子供達にまぎれてその人形劇を見てみることにした。
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