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連載
カワズさんの秘密
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「そういえば結局さ? カワズさんって何歳なんだろう?」
それは他愛ない、バカバカしいほど思い付きだけの質問だったのだろう。
わしもタローの意図するところがわからず、首をひねったくらいだった。
「は? だから五百歳だと言ったろうが?」
年齢についてはごくごく最初にそう言った記憶があったのだが、タローはそうじゃないと首を振った。
「それは言ったら前世でしょ? 享年500歳って事だろう?」
「……まぁそうじゃな」
わしはまた、心底どうでもいいことをとは思いつつも、ちょっとだけ気になったのも確かだった。
言われてみればどうなんじゃろう?
実際に五百年生きてはいたものの、わしは黄泉の国に魂丸ごと一度入っている。
そして奇跡的に生還を果たした今は、カエル。いうなれば完全に体ごと入れ替わってしまったといっていいかもしれない。
「……となると生き返った瞬間から数えるのが正しいのか? しかしこの身体、髭とか生えとるしのぅ。明らかに魂の影響を受けているじゃろう? どう見たって?」
見た目老人であったころの名残を残している体を指してそう指摘すると、タローは真顔で言った。
「いやいや影響がないとは言わないけどさ。でもカワズさんが生き返った時はマジでただのでかいカエルだったよ?」
「……嘘じゃろ?」
本当に今更ながら衝撃の事実である。
愕然とするわしにタローは補足まで入れてきた。
「本当だって。今だから言うけど。髭だって体型だって反映されてるのはどちらかといえば俺のイメージかな?」
「どんなイメージなんじゃよ?」
改造されたとは聞いていたが、目が覚めた時にはこの格好だったのだ。
生前の面影が露骨に出ていたので、もう少しマシな理由があると思っていたがそういうわけでもなかったらしい。
少しばかりショックを受けていたわしは、ぼそりと呟いた。
「……どうせならもう少しかっこよくしてくれりゃいいものを」
「そんな余裕がどこにあったと? 俺はあの時、ど素人もいい所だったんだぞ?」
「そりゃそうじゃけど」
考えてみればこいつならカエルを人間にすることも出来そうなのだが、まぁそこまで求めるのは理不尽というものだろう。
心情的にも技術的にも、そこまでは高望みしすぎているくらいの自覚はあった。
「で、思うに年齢ってのは肉体年齢を基準にするもんなんじゃないかなと」
「ふむ……しかしわしには現に五百年の蓄積があるわけじゃし」
結局蘇るようなことがそう頻発するわけでもないので、そのあたり基準がなければ曖昧だろう。
だがタローはやはり思い付きだろうが、年齢をはっきりさせる方法を提案してきた。
「それじゃあ……実際に解析魔法で調べてみるってのはどうだろうか?」
「む? そうか。調べようと思えば調べられるのかの?」
わしは若干嫌な予感を覚えながらも、タローの言う魔法を思い浮かべた。
解析魔法。
対象物から本人の望む情報を引き出してくる魔法である。
確かにこれを使えば、年齢という概念にふさわしい情報をわしの身体から引き出すことも出来るかもしれない。
「まぁ正確に測れるかどうかは、カワズさん改造人間だし、わからないけど……興味ない?」
「ふむ、まぁの……いまいち気は進まんが」
「よし! それじゃあさっそくやってみよう!」
わしが許可を出した途端、ほとんど間もおかずに解析の魔法がかけられる。
別に結果がどうなったからと言って特に困ることもない。そう高をくくっていたのだが。
数秒して出てきた結果を見たタローは――。
「ウンブッフ!」
鼻水を噴き出した。
「ど、どうしたんじゃ! 何があったんじゃよ!?」
「い、いや、別に……クククッ」
「絶対なんかあったじゃろ!」
未だに肩を震わせているタローが一体何を見たのか? ここまで笑われるとさすがに気になる。
そしてタローが宙に浮かぶ画面をこっちに投げてよこし、それを目撃したわしは、書かれている内容を見て頬を引きつらせた。
結果発表
カワズさん 年齢 三歳
「……さ、三歳?!」
「よ、よかったね……ものすごい若返ったみたいで」
「いや!……そりゃそうなんじゃが!」
どうやら解析結果では肉体年齢が優先されるようだった。
それは他愛ない、バカバカしいほど思い付きだけの質問だったのだろう。
わしもタローの意図するところがわからず、首をひねったくらいだった。
「は? だから五百歳だと言ったろうが?」
年齢についてはごくごく最初にそう言った記憶があったのだが、タローはそうじゃないと首を振った。
「それは言ったら前世でしょ? 享年500歳って事だろう?」
「……まぁそうじゃな」
わしはまた、心底どうでもいいことをとは思いつつも、ちょっとだけ気になったのも確かだった。
言われてみればどうなんじゃろう?
実際に五百年生きてはいたものの、わしは黄泉の国に魂丸ごと一度入っている。
そして奇跡的に生還を果たした今は、カエル。いうなれば完全に体ごと入れ替わってしまったといっていいかもしれない。
「……となると生き返った瞬間から数えるのが正しいのか? しかしこの身体、髭とか生えとるしのぅ。明らかに魂の影響を受けているじゃろう? どう見たって?」
見た目老人であったころの名残を残している体を指してそう指摘すると、タローは真顔で言った。
「いやいや影響がないとは言わないけどさ。でもカワズさんが生き返った時はマジでただのでかいカエルだったよ?」
「……嘘じゃろ?」
本当に今更ながら衝撃の事実である。
愕然とするわしにタローは補足まで入れてきた。
「本当だって。今だから言うけど。髭だって体型だって反映されてるのはどちらかといえば俺のイメージかな?」
「どんなイメージなんじゃよ?」
改造されたとは聞いていたが、目が覚めた時にはこの格好だったのだ。
生前の面影が露骨に出ていたので、もう少しマシな理由があると思っていたがそういうわけでもなかったらしい。
少しばかりショックを受けていたわしは、ぼそりと呟いた。
「……どうせならもう少しかっこよくしてくれりゃいいものを」
「そんな余裕がどこにあったと? 俺はあの時、ど素人もいい所だったんだぞ?」
「そりゃそうじゃけど」
考えてみればこいつならカエルを人間にすることも出来そうなのだが、まぁそこまで求めるのは理不尽というものだろう。
心情的にも技術的にも、そこまでは高望みしすぎているくらいの自覚はあった。
「で、思うに年齢ってのは肉体年齢を基準にするもんなんじゃないかなと」
「ふむ……しかしわしには現に五百年の蓄積があるわけじゃし」
結局蘇るようなことがそう頻発するわけでもないので、そのあたり基準がなければ曖昧だろう。
だがタローはやはり思い付きだろうが、年齢をはっきりさせる方法を提案してきた。
「それじゃあ……実際に解析魔法で調べてみるってのはどうだろうか?」
「む? そうか。調べようと思えば調べられるのかの?」
わしは若干嫌な予感を覚えながらも、タローの言う魔法を思い浮かべた。
解析魔法。
対象物から本人の望む情報を引き出してくる魔法である。
確かにこれを使えば、年齢という概念にふさわしい情報をわしの身体から引き出すことも出来るかもしれない。
「まぁ正確に測れるかどうかは、カワズさん改造人間だし、わからないけど……興味ない?」
「ふむ、まぁの……いまいち気は進まんが」
「よし! それじゃあさっそくやってみよう!」
わしが許可を出した途端、ほとんど間もおかずに解析の魔法がかけられる。
別に結果がどうなったからと言って特に困ることもない。そう高をくくっていたのだが。
数秒して出てきた結果を見たタローは――。
「ウンブッフ!」
鼻水を噴き出した。
「ど、どうしたんじゃ! 何があったんじゃよ!?」
「い、いや、別に……クククッ」
「絶対なんかあったじゃろ!」
未だに肩を震わせているタローが一体何を見たのか? ここまで笑われるとさすがに気になる。
そしてタローが宙に浮かぶ画面をこっちに投げてよこし、それを目撃したわしは、書かれている内容を見て頬を引きつらせた。
結果発表
カワズさん 年齢 三歳
「……さ、三歳?!」
「よ、よかったね……ものすごい若返ったみたいで」
「いや!……そりゃそうなんじゃが!」
どうやら解析結果では肉体年齢が優先されるようだった。
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