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とても残念な魔法使い チョコ味
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ちょっとした秘密は誰にでもある。
これは乙女達のやはりちょっとした秘密にかかわる記録である。
「ふむ! 中々いい出来なんじゃない? やるじゃんナイトさん!」
「……いえ。私は教えられた通りにやっただけですから」
「いやいや、立派なもんだよ。簡単なようで奥が深いのがお菓子というものです。パテシエ舐めんなですよ?」
「……最近はずいぶんとタロー殿と似たようなしゃべり方をしますね」
「なになに? うらやましいの?」
「違います! 別にうらやましいとかそう言う事ではなく! 簡単になじめるのが不思議だっただけです!」
「そう言うナイトさんも大分なじんでるじゃん。お菓子作りなんてあんまりするようには見えないしー」
「そ、それは! 普段お世話になっている方へ感謝の意味があると言うから!」
「……トンボちゃん。なんで私のだけこんなの何だろう?」
「……これはひどい」
「……マガリ殿! こういう贈り物は気持ちが大事と言いますし! 見た目がすべてではないですよ!」
「……いいんだ、わかってるから。なんでこういう細々したのはうまくいかないんだろう?」
三人の乙女達が奮闘しているのは、ツリーハウスのキッチンでのことだった。
カカオの甘い香りが部屋中に広がっていて、そこで何が行われているのか、たいていの人が扉を開けただけでわかるに違いない。
チョコレート作り。
やろうと言いだしたのは他でもない、異世界からやって来た彼女だった。
太郎の家を尋ねてきたマガリは、ニコニコと爽やかな笑顔で一匹の妖精に声をかけた。
「ねぇ……トンボちゃんってさ? お菓子作ったりとか、上手だって聞いたんだけど……本当なの?」
かつてはセーラー戦士と呼ばれていた彼女は、今はジーンズにピンクのパーカー姿である。
動きやすい服装を好むマガリだったが、今日は背中にリュックを背負っていて、そのままピクニックにでも出かけられそうな風だった。
声を掛けられたトンボはそんな問いに怪訝な顔をしつつも頷いた。
「結構うまくなったと思うよ? なんで?」
マガリは安心したのか、今度はトンボにどこか頼むよう手を合わせて、こんなことを言った。
「それじゃあさ? これからナイトさんも誘ってみんなでお菓子を作らない? 向こうから材料を持って来てるんだ」
どんな風に返してくるか内心身構えていた彼女だったが、トンボの反応は思ったよりもずっと好意的なものだった。
「ホント! 向こうの材料はタロに頼まないと手に入らないのもあるから、なかなかできないんだよね! 何もってきたの?」
トンボは一も二もなく食いつくが、しかしマガリはここですぐに話す気はないようで、しぃっと唇に手を当てると、小声で囁くように言う。
「それは――えっと、ナイトさん家に行ってから話すから。でもちょっと楽しいと思うよ?」
「そうなの? もったいぶるねー。そんじゃさっそく行こうよ!」
そのまま二人でナイトさんの家に押しかけて、チョコレート作りは始まったのだ。
マガリは持参したリュックの中から様々なものをテーブルの上に並べる。
チョコレート菓子に仕えそうな素材を前にしてチョコレートの調理本を開きながら、マガリはこの企画の趣旨を説明した。
「向こうにはバレンタインデーって言う日があってね? 女の子が男の子にチョコレートを渡すってイベントなんだ」
その説明にさっそく不満を漏らしたのはトンボだった。
「えーでもそれじゃぁわたしが食べられないじゃん」
「まぁそうなんだけど。男の子から女の子に渡す日もちゃんとあるから。その時は三倍返しなんていう人もいるけどね」
「三倍! それは気合い入れないといけないね!」
おおっ! と、お得な話に飛びついたトンボに、マガリは微笑ましげに頬を緩めた。
「ははは。それはちょっと楽しみ方としては違うけど、動機としてはアリだと思うよ」
「そうなの? じゃあどんなふうに楽しむのが正解?」
「どれが正解ってものでもないさ。でも本来のバレンタインデーは女の子が好きな男の子にチョコを贈って告白する日って感じかな? 日本風に言うとだけど」
しかし軽い気持ちで発したそんな説明で、場の空気に緊張が混じる。
なんとも楽しそうにニヤニヤ笑っているのはもちろんトンボである。
「ほっほう……それはまた面白そうな日ですね。だからわざわざ女の子を誘ってチョコ作りですかな? 意中の男性がいると、そう理解しても?」
あまりにも予想通りのトンボにマガリはコホンと咳払いして、あくまで自然に否定していた。
「理解しなくていいから。バレンタインデーは普段お世話になっている人に感謝の気持ちを籠めて贈り物をするって面もあるんだよ。普段は異性に贈り物をする機会なんてほとんどないだろ? それにイベント事はみんなでやった方が楽しいものさ」
「WAO! さらっと流された! くそう! この娘やりおるわ!」
「……トンボちゃんってホント最近太郎に毒されてきてるよね」
ずいぶん神秘性とかそう言う言葉からかけ離れつつある妖精を若干残念な気分で見てしまうマガリだった。
そしてもう一人、この説明でやる気を出したのはナイトさんだ。
「うおっほん。……そう言う事なら私も参加しますよ。タロー殿にはいつもお世話になっていますから」
「ほほう……タロ限定?」
すぐさま反応してくるこの妖精は本当に残念である。
そして煽り耐性のないナイトさんは、真面目に対応してしまうのだった。
「違います! 主の名前を真っ先に上げるのは当たり前でしょう!」
「ほらほら、ナイトさんもムキになったらトンボちゃんの思うつぼだよ。さっそく始めてみようよ」
「は、はい。すみません……」
ナイトさんが、気を取り直したところで、今日の先生役であるトンボは腕まくりした。
キッチンでの戦闘服であるところの、エプロンを着込んでレッツクッキングである。
「それじゃあどうしようか? チョコなんてあんまり扱ったことないんだけど、だいたいどんなものかわかれば勘でもどうにかなると思うけど?」
「ああうん。この本に一応作り方は書いてあるよ。これで大丈夫かな?」
マガリは先生とするべく連れて来たトンボに雑誌を見せて教えを請う。
トンボは雑誌を覗き込み写真を確認するとおおよそやり方を理解したようだった。
「ふむふむ。まぁいけるかな。向こうの文字は読めないから、細かい数字は読み上げてくれる? 」
「わかった。それじゃあさっそくそんな感じでやってみよう」
こうして始まったチョコ作りなのだが、当初の予測を上回り、思いのほか困難を極めたわけなのだった。
「でけた!」
「出来ましたね」
「……出来たのかな?」
そして苦心の末、三人分のチョコが出来上がる。
一番最初に完成させたのはやはりトンボだ。
型から作るのではなくチョコの塊に氷の魔法を使いながら削りだし、気が付けば見事なチョコ製トンボちゃんが女神像のごとく机の上に立っているのだからすさまじい。
その出来栄えは、本人が中に入っていると言われたら信じてしまいそうなほどだった。
「我ながら上出来ではないかしら!」
「……それ誰かから食べられるんだよね?」
「……」
続いて二番手で完成させたのはナイトさんだ。
彼女のチョコはオーソドックスなハート形だ。
それは雑誌に載っていた通りのハート型で基本に忠実だからこその完成度を誇っている。
きっちりとしたその仕事からは彼女の几帳面さがうかがえた。
しかし完全な無地なのは雑誌バージョンの飾り文字が「I LOVE YOU」だったからだろう。
最初はそのまま書こうとしていたが、マガリに意味を尋ねて断念したらしい。
そして最後に完成させたのはマガリだ。
見た目は期待できないからこそ味で勝負だ! と彼女だけは少しレシピを変えて生チョコでいってみることにしたのだが、それが完全に裏目に出てしまった。
刻み方が足りなかったのかチョコと生チョコが完全に混ざりきれずに粒状になってしまっている上、かなり焦臭い。
マガリは自分のチョコをまじまじと見つめ、そして材料が完全になくなったのをもう一度だけ確認してから、拳を握りしめると力強く言った。
「……こういうのは気持ちが大事だよね!」
「まぁそうだけど。溶かすだけなのになんでこんなことに?」
「うぐ! 仕方ないじゃないか! 私は少し手を加えたし!」
「それになかなか溶けないからと言って直接火にかけたりするからですよ。忍耐力も大事ですよ?」
「でも! 温度が低すぎるように見えたんだよ!」
必死に言いつくろう彼女だったが、どんなに何か言おうとも、もう手遅れだった。
出来上がったチョコレートをクマ衛門、そしてカワズさんに渡してみると二人とも訳が分からないなりにうれしそうだった。
ここまでは問題ない。
しかし立ちはだかる最大の難関はどういうイベントなのかをある程度把握しているであろう人間である。
ほんの少しの勇気を出して、覚悟を決めたマガリは、さっそく太郎の居場所を知っていそうな人物に尋ねてみた。
「ねぇカワズさん。太郎知らない?」
「あいつなら、なんかここしばらく地下の工房に籠っておるようだぞ? 何をしているかは知らんが」
カワズさんは関心なさそうにそう彼女たちに伝えた。
「そうなんだ。ありがとう。それじゃあちょっと行って来るね」
こういう時に限ってカワズさん達と固まっていない太郎は、やっぱり間が悪い。
地下というのもそう言えば入ったことがないなとは思いつつ、マガリ達は地下に続く階段を下りていった。
そこには重そうな大きな扉があって、マガリは先頭で扉の取っ手を握りしめたまま、ごくりと喉を鳴らしてしまう。
緊張する必要なんてどこにもない。
バレンタインデーのチョコなんてちょっとした挨拶みたいなものじゃないかと心の中で呟いてみたが、やっぱり落ち着かなかった。
「な、なんだか緊張してきたね。実は私、男の人にチョコ渡すなんて初めてなんだ」
学生時代は沢山もらっていた側である。
どうにも気まずくなってしまったマガリは一旦取っ手を放して、後ろからついてきているであろう二人の顔を確認する。
すると一方は自分と同じような若干硬い顔と、気軽になんでもなさそうな顔の二つが並んでいた。
こういう時ばかりはトンボを見習いたいなぁとマガリは半ば本気でそう思っていた。
「か、固く考えないでいいと言っていたではないですか。これは日ごろの感謝の気持ちでしょう?」
「はやくいこうよー。チョコ溶けちゃうんじゃないの?」
彼女達の言う通り、怖気づくにはあまりにも今更で、ここまで来てうだうだやっていたって仕方がない。
持ち前の思い切りの良さを発揮して、マガリは再び扉に手を掛けるとそのままガチャリと勢いのまま開いた。
―――まず開いた瞬間に感じたのはひんやりとした冷気だった。
そして甘い匂いが鼻孔をくすぐるこの感じは……。
「……え?」
思わず声が漏れ、地下に広がっていた空間に対応しきれずマガリ達は完全に別の意味で固まってしまった。
本来なら真っ白いだけの世界だったのだろう。
どこまでも続く地平線が、そこが別世界だとそう教えてくれる。
だがその世界以上にわけのわからないモノが、彼女達の目を瞬かせていた。
今にもホラ貝の音が聞こえてきそうなその建物は……どう見たってアレだったのだから。
(城が建ってるー!)
マガリは心の中で絶叫する。
石垣に天守閣を頂く、純和風の城が真っ白い空間に聳えている。
そこまでなら何とか理解も追いついたのかもしれないが肝心の城は、一般的な白い壁ですらなく……下から上まで茶色一色だった。
甘ったるい匂いの正体はこのチョコレートの城だった。
「な、なにこれ?」
マガリは思わずつぶやいた。
もう一つ気になるのは、そこら中に泥の塊の様な手だけでうねうね動く不気味なものを発見したことだろう。
よく見るとこれもチョコレートで出来ているらしい。
そのチョコレートで出来た手がこれまたチョコレートで出来た城の部品の数々を運んでいる。
あまりにも圧倒的な存在感で聳える城は、その姿を独特の粘りのある光沢でもって見せつけている様ですらあった。
そして肝心の問題の張本人らしい人物は、ねじり鉢巻きにタンクトップという格好で、一心不乱にチョコクリーム片手に、板チョコの瓦を組み上げているのである。
そんな彼を唖然として見上げていると、太郎はようやくこちらに気が付いたようで城の上から手を振っていた。
「おや? ここに来るなんて珍しい。どうしたの?」
「えっと……それは私が聞きたいかなって?」
何がどうなってこんなことをしているのか、すべてが謎である。
尋ねると太郎はものすごく得意げに、私達に見せつけるようにその城を自慢してきた。
「おお! よくぞ聞いてくれた! 最近向こうの世界じゃバレンタインデーらしいじゃないか! そしたらチョコレートが無性に食べたくなっちゃってさ! いつの間にかこんなことになってしまったのだよ!」
何をどうしたらこんなことになるのだろう?
それ以前にいつからバレンタインデーはチョコレートで城を建築する儀式になったのだろうか?
たっぷり時間をかけて考えてみたが、さっぱり意味が分からなかったマガリは思わず聞いてしまっていた。
「それで、なんでチョコレートの城……なの?」
「へ? いや別に形はどうでもよかったんだけどさ、せっかくのバレンタインだしインパクトって大事じゃん?」
その時、マガリはヒシヒシと感じていた。
後ろから話が違うんじゃないかと、非難の視線が集まっていることに。
だからはっきり誤解を解いておかねばならなかった。自分は決して間違ったことは言っていないのだと。
「ごめん……いちおう確認しておきたいんだけど。バレンタインって女の子が男の子にチョコをあげる日……だった気がするんだけど?」
「え? もらえるわけないのに待ってても無駄でしょ?」
「……」
どうやら太郎の中でそれはゆるぎない確定事項のようだった。
「だいたいバレンタインデーってのは罪なお祭りだよ。街中にはチョコレートが沢山あるし。テレビなんかでもガンガンやってるわけじゃない? 本なんかも多かれ少なかれチョコ特集とかやっちゃってさ、世の中にチョコの情報が溢れまくっているわけだよ。そうすると無性にチョコレートが食べたくなったりするもんなんじゃないか?」
「はぁ……」
「レベルの低い時は俺もさ。人の目が気になって、バレンタインにチョコレート買うのって恥ずかしいよね? とか思って遠慮していたわけだよ。だけどさぁ、ある時ふと悟るわけさ。そもそももらえる事なんてないんだから、せっかくのイベントを楽しめないんじゃなかろうかと? イベントなんて楽しんでなんぼじゃん? それなら楽しめる工夫をするべきじゃん? 世の職人さん達はこの日のためにおいしいチョコを試行錯誤してくれているのに。だからここはむしろ食いたいもん食ってる奴こそ勝ち組なんじゃなかろうかと!」
なんだか力説されてしまった。
マガリはめまいを覚えたが、表に出さないように必死にこらえた。
さっき自分も似たようなことを言った気はする。イベントは楽しんでこそだと。
しかしだ、同じ言葉のはずなのになぜだろう? なんだか悲しい気分になってくるのだが?
「そう考えたらもうなんつうの? 遠慮の必要ないっつうか? むしろこっちから配るよ的なね? 逆チョコなんてとてもいい言葉じゃない? 年々腕が上がってゆく自分に戦きながらもやめられないわけですよ。そんで最近は魔法使いなんてやらしてもらっているからさ。そこは魔法使いらしく度肝を抜かねばなるまいよと」
「で…………チョコレートのお城なんだ」
「そう言う事だよ君!」
太郎の顔はとても生き生きしていた。
それはもうなんていうか、心の底からそう思っている顔だった。
イベントを心の底から楽しんでいる彼を誰が止められるだろう?
私は何も言えずに、ただただ暖かい視線を向けるだけである。
「なんかその沈黙にものすごくいろいろ言われている気がする。……まぁいいか、もう完成だから写真撮ったら食べていいよ?」
そしてあまつさえチョコの城をふるまおうとまでしてくる太郎に、唯一目を輝かせたのはトンボだけだった。
「マジでか! これ全部か!」
「ああもちろんだ! 全部食っていいぞ! 後でみんなにもおすそわけだ!……というわけで今ちょっと忙しいんだけど、なんの用だっけ?」
「……え?」
そんな台詞を半ば不意打ちの気味に向けられて、マガリは一瞬、思考が完全に停止してしまった。
そして目の前のチョコの城と、自分達が作ったモノを思い出して。
マガリとナイトさんは二人で顔を見合わせる。
お互いにどう見ても作り笑いで必死に両手を振ってから同時に言った。
「い、いや! 何でもないんだ!」
「そ、そうです! 何でもないんです!」
「……そう? ならいいけど」
「うひょー! もう三倍とかどうでもいいじゃん!」
実にテンションが壊れ気味なトンボの楽しげな歓声とともに、バレンタインデーは終わりを告げるのである。
こうして太郎のチョコレートゼロ記録は残念ながら更新される。
そして浮いてしまったチョコレートは彼女達のティータイムにおいしくいただかれるわけである。
きっとその時の味は、ほろ苦い大人の味がするのだろう。
これは乙女達のやはりちょっとした秘密にかかわる記録である。
「ふむ! 中々いい出来なんじゃない? やるじゃんナイトさん!」
「……いえ。私は教えられた通りにやっただけですから」
「いやいや、立派なもんだよ。簡単なようで奥が深いのがお菓子というものです。パテシエ舐めんなですよ?」
「……最近はずいぶんとタロー殿と似たようなしゃべり方をしますね」
「なになに? うらやましいの?」
「違います! 別にうらやましいとかそう言う事ではなく! 簡単になじめるのが不思議だっただけです!」
「そう言うナイトさんも大分なじんでるじゃん。お菓子作りなんてあんまりするようには見えないしー」
「そ、それは! 普段お世話になっている方へ感謝の意味があると言うから!」
「……トンボちゃん。なんで私のだけこんなの何だろう?」
「……これはひどい」
「……マガリ殿! こういう贈り物は気持ちが大事と言いますし! 見た目がすべてではないですよ!」
「……いいんだ、わかってるから。なんでこういう細々したのはうまくいかないんだろう?」
三人の乙女達が奮闘しているのは、ツリーハウスのキッチンでのことだった。
カカオの甘い香りが部屋中に広がっていて、そこで何が行われているのか、たいていの人が扉を開けただけでわかるに違いない。
チョコレート作り。
やろうと言いだしたのは他でもない、異世界からやって来た彼女だった。
太郎の家を尋ねてきたマガリは、ニコニコと爽やかな笑顔で一匹の妖精に声をかけた。
「ねぇ……トンボちゃんってさ? お菓子作ったりとか、上手だって聞いたんだけど……本当なの?」
かつてはセーラー戦士と呼ばれていた彼女は、今はジーンズにピンクのパーカー姿である。
動きやすい服装を好むマガリだったが、今日は背中にリュックを背負っていて、そのままピクニックにでも出かけられそうな風だった。
声を掛けられたトンボはそんな問いに怪訝な顔をしつつも頷いた。
「結構うまくなったと思うよ? なんで?」
マガリは安心したのか、今度はトンボにどこか頼むよう手を合わせて、こんなことを言った。
「それじゃあさ? これからナイトさんも誘ってみんなでお菓子を作らない? 向こうから材料を持って来てるんだ」
どんな風に返してくるか内心身構えていた彼女だったが、トンボの反応は思ったよりもずっと好意的なものだった。
「ホント! 向こうの材料はタロに頼まないと手に入らないのもあるから、なかなかできないんだよね! 何もってきたの?」
トンボは一も二もなく食いつくが、しかしマガリはここですぐに話す気はないようで、しぃっと唇に手を当てると、小声で囁くように言う。
「それは――えっと、ナイトさん家に行ってから話すから。でもちょっと楽しいと思うよ?」
「そうなの? もったいぶるねー。そんじゃさっそく行こうよ!」
そのまま二人でナイトさんの家に押しかけて、チョコレート作りは始まったのだ。
マガリは持参したリュックの中から様々なものをテーブルの上に並べる。
チョコレート菓子に仕えそうな素材を前にしてチョコレートの調理本を開きながら、マガリはこの企画の趣旨を説明した。
「向こうにはバレンタインデーって言う日があってね? 女の子が男の子にチョコレートを渡すってイベントなんだ」
その説明にさっそく不満を漏らしたのはトンボだった。
「えーでもそれじゃぁわたしが食べられないじゃん」
「まぁそうなんだけど。男の子から女の子に渡す日もちゃんとあるから。その時は三倍返しなんていう人もいるけどね」
「三倍! それは気合い入れないといけないね!」
おおっ! と、お得な話に飛びついたトンボに、マガリは微笑ましげに頬を緩めた。
「ははは。それはちょっと楽しみ方としては違うけど、動機としてはアリだと思うよ」
「そうなの? じゃあどんなふうに楽しむのが正解?」
「どれが正解ってものでもないさ。でも本来のバレンタインデーは女の子が好きな男の子にチョコを贈って告白する日って感じかな? 日本風に言うとだけど」
しかし軽い気持ちで発したそんな説明で、場の空気に緊張が混じる。
なんとも楽しそうにニヤニヤ笑っているのはもちろんトンボである。
「ほっほう……それはまた面白そうな日ですね。だからわざわざ女の子を誘ってチョコ作りですかな? 意中の男性がいると、そう理解しても?」
あまりにも予想通りのトンボにマガリはコホンと咳払いして、あくまで自然に否定していた。
「理解しなくていいから。バレンタインデーは普段お世話になっている人に感謝の気持ちを籠めて贈り物をするって面もあるんだよ。普段は異性に贈り物をする機会なんてほとんどないだろ? それにイベント事はみんなでやった方が楽しいものさ」
「WAO! さらっと流された! くそう! この娘やりおるわ!」
「……トンボちゃんってホント最近太郎に毒されてきてるよね」
ずいぶん神秘性とかそう言う言葉からかけ離れつつある妖精を若干残念な気分で見てしまうマガリだった。
そしてもう一人、この説明でやる気を出したのはナイトさんだ。
「うおっほん。……そう言う事なら私も参加しますよ。タロー殿にはいつもお世話になっていますから」
「ほほう……タロ限定?」
すぐさま反応してくるこの妖精は本当に残念である。
そして煽り耐性のないナイトさんは、真面目に対応してしまうのだった。
「違います! 主の名前を真っ先に上げるのは当たり前でしょう!」
「ほらほら、ナイトさんもムキになったらトンボちゃんの思うつぼだよ。さっそく始めてみようよ」
「は、はい。すみません……」
ナイトさんが、気を取り直したところで、今日の先生役であるトンボは腕まくりした。
キッチンでの戦闘服であるところの、エプロンを着込んでレッツクッキングである。
「それじゃあどうしようか? チョコなんてあんまり扱ったことないんだけど、だいたいどんなものかわかれば勘でもどうにかなると思うけど?」
「ああうん。この本に一応作り方は書いてあるよ。これで大丈夫かな?」
マガリは先生とするべく連れて来たトンボに雑誌を見せて教えを請う。
トンボは雑誌を覗き込み写真を確認するとおおよそやり方を理解したようだった。
「ふむふむ。まぁいけるかな。向こうの文字は読めないから、細かい数字は読み上げてくれる? 」
「わかった。それじゃあさっそくそんな感じでやってみよう」
こうして始まったチョコ作りなのだが、当初の予測を上回り、思いのほか困難を極めたわけなのだった。
「でけた!」
「出来ましたね」
「……出来たのかな?」
そして苦心の末、三人分のチョコが出来上がる。
一番最初に完成させたのはやはりトンボだ。
型から作るのではなくチョコの塊に氷の魔法を使いながら削りだし、気が付けば見事なチョコ製トンボちゃんが女神像のごとく机の上に立っているのだからすさまじい。
その出来栄えは、本人が中に入っていると言われたら信じてしまいそうなほどだった。
「我ながら上出来ではないかしら!」
「……それ誰かから食べられるんだよね?」
「……」
続いて二番手で完成させたのはナイトさんだ。
彼女のチョコはオーソドックスなハート形だ。
それは雑誌に載っていた通りのハート型で基本に忠実だからこその完成度を誇っている。
きっちりとしたその仕事からは彼女の几帳面さがうかがえた。
しかし完全な無地なのは雑誌バージョンの飾り文字が「I LOVE YOU」だったからだろう。
最初はそのまま書こうとしていたが、マガリに意味を尋ねて断念したらしい。
そして最後に完成させたのはマガリだ。
見た目は期待できないからこそ味で勝負だ! と彼女だけは少しレシピを変えて生チョコでいってみることにしたのだが、それが完全に裏目に出てしまった。
刻み方が足りなかったのかチョコと生チョコが完全に混ざりきれずに粒状になってしまっている上、かなり焦臭い。
マガリは自分のチョコをまじまじと見つめ、そして材料が完全になくなったのをもう一度だけ確認してから、拳を握りしめると力強く言った。
「……こういうのは気持ちが大事だよね!」
「まぁそうだけど。溶かすだけなのになんでこんなことに?」
「うぐ! 仕方ないじゃないか! 私は少し手を加えたし!」
「それになかなか溶けないからと言って直接火にかけたりするからですよ。忍耐力も大事ですよ?」
「でも! 温度が低すぎるように見えたんだよ!」
必死に言いつくろう彼女だったが、どんなに何か言おうとも、もう手遅れだった。
出来上がったチョコレートをクマ衛門、そしてカワズさんに渡してみると二人とも訳が分からないなりにうれしそうだった。
ここまでは問題ない。
しかし立ちはだかる最大の難関はどういうイベントなのかをある程度把握しているであろう人間である。
ほんの少しの勇気を出して、覚悟を決めたマガリは、さっそく太郎の居場所を知っていそうな人物に尋ねてみた。
「ねぇカワズさん。太郎知らない?」
「あいつなら、なんかここしばらく地下の工房に籠っておるようだぞ? 何をしているかは知らんが」
カワズさんは関心なさそうにそう彼女たちに伝えた。
「そうなんだ。ありがとう。それじゃあちょっと行って来るね」
こういう時に限ってカワズさん達と固まっていない太郎は、やっぱり間が悪い。
地下というのもそう言えば入ったことがないなとは思いつつ、マガリ達は地下に続く階段を下りていった。
そこには重そうな大きな扉があって、マガリは先頭で扉の取っ手を握りしめたまま、ごくりと喉を鳴らしてしまう。
緊張する必要なんてどこにもない。
バレンタインデーのチョコなんてちょっとした挨拶みたいなものじゃないかと心の中で呟いてみたが、やっぱり落ち着かなかった。
「な、なんだか緊張してきたね。実は私、男の人にチョコ渡すなんて初めてなんだ」
学生時代は沢山もらっていた側である。
どうにも気まずくなってしまったマガリは一旦取っ手を放して、後ろからついてきているであろう二人の顔を確認する。
すると一方は自分と同じような若干硬い顔と、気軽になんでもなさそうな顔の二つが並んでいた。
こういう時ばかりはトンボを見習いたいなぁとマガリは半ば本気でそう思っていた。
「か、固く考えないでいいと言っていたではないですか。これは日ごろの感謝の気持ちでしょう?」
「はやくいこうよー。チョコ溶けちゃうんじゃないの?」
彼女達の言う通り、怖気づくにはあまりにも今更で、ここまで来てうだうだやっていたって仕方がない。
持ち前の思い切りの良さを発揮して、マガリは再び扉に手を掛けるとそのままガチャリと勢いのまま開いた。
―――まず開いた瞬間に感じたのはひんやりとした冷気だった。
そして甘い匂いが鼻孔をくすぐるこの感じは……。
「……え?」
思わず声が漏れ、地下に広がっていた空間に対応しきれずマガリ達は完全に別の意味で固まってしまった。
本来なら真っ白いだけの世界だったのだろう。
どこまでも続く地平線が、そこが別世界だとそう教えてくれる。
だがその世界以上にわけのわからないモノが、彼女達の目を瞬かせていた。
今にもホラ貝の音が聞こえてきそうなその建物は……どう見たってアレだったのだから。
(城が建ってるー!)
マガリは心の中で絶叫する。
石垣に天守閣を頂く、純和風の城が真っ白い空間に聳えている。
そこまでなら何とか理解も追いついたのかもしれないが肝心の城は、一般的な白い壁ですらなく……下から上まで茶色一色だった。
甘ったるい匂いの正体はこのチョコレートの城だった。
「な、なにこれ?」
マガリは思わずつぶやいた。
もう一つ気になるのは、そこら中に泥の塊の様な手だけでうねうね動く不気味なものを発見したことだろう。
よく見るとこれもチョコレートで出来ているらしい。
そのチョコレートで出来た手がこれまたチョコレートで出来た城の部品の数々を運んでいる。
あまりにも圧倒的な存在感で聳える城は、その姿を独特の粘りのある光沢でもって見せつけている様ですらあった。
そして肝心の問題の張本人らしい人物は、ねじり鉢巻きにタンクトップという格好で、一心不乱にチョコクリーム片手に、板チョコの瓦を組み上げているのである。
そんな彼を唖然として見上げていると、太郎はようやくこちらに気が付いたようで城の上から手を振っていた。
「おや? ここに来るなんて珍しい。どうしたの?」
「えっと……それは私が聞きたいかなって?」
何がどうなってこんなことをしているのか、すべてが謎である。
尋ねると太郎はものすごく得意げに、私達に見せつけるようにその城を自慢してきた。
「おお! よくぞ聞いてくれた! 最近向こうの世界じゃバレンタインデーらしいじゃないか! そしたらチョコレートが無性に食べたくなっちゃってさ! いつの間にかこんなことになってしまったのだよ!」
何をどうしたらこんなことになるのだろう?
それ以前にいつからバレンタインデーはチョコレートで城を建築する儀式になったのだろうか?
たっぷり時間をかけて考えてみたが、さっぱり意味が分からなかったマガリは思わず聞いてしまっていた。
「それで、なんでチョコレートの城……なの?」
「へ? いや別に形はどうでもよかったんだけどさ、せっかくのバレンタインだしインパクトって大事じゃん?」
その時、マガリはヒシヒシと感じていた。
後ろから話が違うんじゃないかと、非難の視線が集まっていることに。
だからはっきり誤解を解いておかねばならなかった。自分は決して間違ったことは言っていないのだと。
「ごめん……いちおう確認しておきたいんだけど。バレンタインって女の子が男の子にチョコをあげる日……だった気がするんだけど?」
「え? もらえるわけないのに待ってても無駄でしょ?」
「……」
どうやら太郎の中でそれはゆるぎない確定事項のようだった。
「だいたいバレンタインデーってのは罪なお祭りだよ。街中にはチョコレートが沢山あるし。テレビなんかでもガンガンやってるわけじゃない? 本なんかも多かれ少なかれチョコ特集とかやっちゃってさ、世の中にチョコの情報が溢れまくっているわけだよ。そうすると無性にチョコレートが食べたくなったりするもんなんじゃないか?」
「はぁ……」
「レベルの低い時は俺もさ。人の目が気になって、バレンタインにチョコレート買うのって恥ずかしいよね? とか思って遠慮していたわけだよ。だけどさぁ、ある時ふと悟るわけさ。そもそももらえる事なんてないんだから、せっかくのイベントを楽しめないんじゃなかろうかと? イベントなんて楽しんでなんぼじゃん? それなら楽しめる工夫をするべきじゃん? 世の職人さん達はこの日のためにおいしいチョコを試行錯誤してくれているのに。だからここはむしろ食いたいもん食ってる奴こそ勝ち組なんじゃなかろうかと!」
なんだか力説されてしまった。
マガリはめまいを覚えたが、表に出さないように必死にこらえた。
さっき自分も似たようなことを言った気はする。イベントは楽しんでこそだと。
しかしだ、同じ言葉のはずなのになぜだろう? なんだか悲しい気分になってくるのだが?
「そう考えたらもうなんつうの? 遠慮の必要ないっつうか? むしろこっちから配るよ的なね? 逆チョコなんてとてもいい言葉じゃない? 年々腕が上がってゆく自分に戦きながらもやめられないわけですよ。そんで最近は魔法使いなんてやらしてもらっているからさ。そこは魔法使いらしく度肝を抜かねばなるまいよと」
「で…………チョコレートのお城なんだ」
「そう言う事だよ君!」
太郎の顔はとても生き生きしていた。
それはもうなんていうか、心の底からそう思っている顔だった。
イベントを心の底から楽しんでいる彼を誰が止められるだろう?
私は何も言えずに、ただただ暖かい視線を向けるだけである。
「なんかその沈黙にものすごくいろいろ言われている気がする。……まぁいいか、もう完成だから写真撮ったら食べていいよ?」
そしてあまつさえチョコの城をふるまおうとまでしてくる太郎に、唯一目を輝かせたのはトンボだけだった。
「マジでか! これ全部か!」
「ああもちろんだ! 全部食っていいぞ! 後でみんなにもおすそわけだ!……というわけで今ちょっと忙しいんだけど、なんの用だっけ?」
「……え?」
そんな台詞を半ば不意打ちの気味に向けられて、マガリは一瞬、思考が完全に停止してしまった。
そして目の前のチョコの城と、自分達が作ったモノを思い出して。
マガリとナイトさんは二人で顔を見合わせる。
お互いにどう見ても作り笑いで必死に両手を振ってから同時に言った。
「い、いや! 何でもないんだ!」
「そ、そうです! 何でもないんです!」
「……そう? ならいいけど」
「うひょー! もう三倍とかどうでもいいじゃん!」
実にテンションが壊れ気味なトンボの楽しげな歓声とともに、バレンタインデーは終わりを告げるのである。
こうして太郎のチョコレートゼロ記録は残念ながら更新される。
そして浮いてしまったチョコレートは彼女達のティータイムにおいしくいただかれるわけである。
きっとその時の味は、ほろ苦い大人の味がするのだろう。
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「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


英雄一家は国を去る【一話完結】
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婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
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三話完結です。
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