底辺配信者、仕方なくモンスターの肉を喰ったらバズってしまう

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

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第1話 ドン底(上)

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 ――1999年、世界に突如としてダンジョンが現れた。
 
 人々はダンジョンに潜り、富を求めた。
 彼らは、ダンジョン探索者と呼ばれた――。


 ◇
 
 
 僕の名前は霧夜きりや沙宵さよい
 高校生で、ダンジョン配信者――通称ダンチューバーをやっている。
 とはいっても、視聴者なんか全然いない。
 いわゆる、底辺配信者というやつだ。

「はぁ……今日も全然動画伸びないじゃん……」

 昼休み、スマホで自分の動画の再生数を確認して、落ち込む僕。
 生配信の他にも、いろいろと動画をあげているが、どれも全然伸びる気配がない。

「やっぱり、才能がないのかなぁ……」

 僕はいわゆる陰キャだし、コミュ障だ。
 動画を撮るときは、一応なるべく明るく振舞うようにはしているんだけどね……。
 冗談を言ってみたりとか、ハキハキしゃべるようにしたりとか、工夫はしているつもりだ。
 
 だけど、そもそも配信者の前に、僕にはダンジョン探索者としての才能がなかった。
 僕はダンジョン探索者としても、Fランクの実力しかない。
 
 レベルも1しかない。
 この世界の人間には、みんなレベルというものがある。
 レベルは、ダンジョンで戦うことで、自然と上がるものだった。
 しかし、僕はいくらモンスターを倒しても、レベルが上がらない。

 レベルの上がりやすさには、個人差がある。
 それは、運動しても筋肉がつきやすかったり、太りやすかったりという、体質のようなものだ。
 僕は、どうやらいくら努力しても、強くはなれない体質みたいだった。
 ようは、才能がないんだ。
 
 だから、ダンジョンに潜っても上層と呼ばれる5階までしかいけない。
 
 ダンジョンは、上層、中層、下層、深層に分かれている。
 上層というのは、ダンジョンの一番難易度の低い場所だ。
 
 上層でゴブリンと戦ってるだけの動画なんか、誰も見ないのは当然だ。
 有名配信者の動画を見れば、下層でドラゴンと戦っている派手な動画が見られるんだからね。

「もう、やめてしまおうかなぁ……」

 僕が教室で、スマホを見ながらそんなふうにうなだれていると……。
 突然、後ろから、僕のスマホが誰かに奪われた。

「お、霧夜。何見てんだ……?」
「あ……ちょっと……!」

 僕からスマホを奪い取ったのは、同じクラスの上尾うえお秋介しゅうすけ
 
 高校に入ってから、僕はこの上尾に目をつけられて、虐められている。
 といっても、僕がなにかしたわけじゃないんだけど。

 上尾は不良とも違って、いわゆるインテリエリート系だ。
 成績も優秀で、スポーツマンでクラスメイトからも信頼されている。
 だけど、なんの腹いせか、僕にだけは徹底的にひどいことをしてくる。

 先生も上尾のことを信頼しているから、先生にいじめを訴えても、きいてもらえない。
 普通の不良よりも、悪質なやつだった。
 市議会議員の息子かなにかで、先生も手出しできないのかもしれない。
 とにかく、僕はそんな上尾から、ひどい虐めを受けていた。
 
 上尾は奪ったスマホを、じろじろと観察した。

「か、勝手にみるなよぉ……」
「うるせぇ……!」

 抗議するが、肩を殴られてしまう。
 めちゃくちゃ力が強くて痛い。
 理不尽だ。

「へぇ、お前、ダンジョン配信者とかやってんだ。レベル1の雑魚のくせにな」
「うぅ……そうだけど……」
「お前みたいな陰キャがなぁ。きも。まあ、興味ねえけど」

 上尾はそういいながら、僕のスマホを仲間たちに見せびらかす。
 なんてことをするんだ。

「おいみんなみろよ。コイツ霧夜のくせに、こんな動画あげてんぜ。しかも全然再生数伸びてねえ」

 上尾がそういって、仲間たちに僕の動画を見せると、みんな一斉に笑いだした。
 茶髪のヤンキー系の男子生徒、来栖くるす来世らいせくんがバカみたいな笑い声で、僕をからかう。
 来栖は、来世というキラキラネームに恥じない、馬鹿丸出しのヤンキーだ。
 
「ぎゃははははは。ゴミ霧夜が配信者とか、なんの冗談だよ。きめぇ、マジきめぇ」

 上尾の彼女で、ギャルの双葉ふたばあおいが、手を叩いて嘲笑する。

「あはははは! 滑稽だわマジで。陰キャのくせにねぇ。上尾くんのチャンネル登録者の5000分の1もいないじゃないの」

 みんなして、僕のことを馬鹿にしてくる。

「スマホ、返してよぉ……!」

 僕はなんとかスマホを返してもらおうと、上尾の腕をつかむ。
 しかし……。

「うるせえ! 汚ねぇ手で俺に触んじゃねえ! キモイ陰キャが染るんだよ! ゴミが……!」

 上尾は僕の顔面にパンチを喰らわせた。

「あぐ……!」

 ものすごく痛い。
 鼻から血が出る。
 これで、こいつらに殴られるのは何度目だろうか。

「ぎゃはははは! あぐ……だってよ。気持ち悪ぃ。死ねよカス」
「なっさけねぇなぁ! 弱いんだから逆らうんじゃねえよ!」

 上尾と来栖が僕のことをあざ笑う。
 彼らの言う通り、僕は弱い。
 酷い虐めを受けていても、逆らうことができない。
 悔しい……。

「もうこのスマホはいらねえよなぁ? 底辺配信者なんか意味ねえもんな。誰もお前の動画なんか見ねえしよぉ」

 上尾は、そう言いながら、来栖に僕のスマホを手渡す。

「おい、来栖。これ、トイレに捨ててきてくれ」
「お。おっけー。上尾くんも酷いこと考えるねぇ」

 来栖はニタニタした顔で、教室を出ていった。
 僕は悔しさのあまり、上尾をにらみつける。

「なんだその目つきは……? 生意気だ……!」

 上尾は、今度は僕の腹に蹴りを入れてくる。

「ぐぼぉあ……!」
「文句あるか……?」
「っく……」
「ないよなぁ……? それでいい」

 僕はなにも言えずに、なにもできずに、彼らにされるがままだった。
 本当に、悔しい。
 悔しくて仕方がない。
 だけど、僕は体格も細いし、ひ弱だ。
 喧嘩では勝てない。

 僕は悔しさのあまり、口の中に血の味がするほどまで歯噛みした。

 あとでトイレに行ってみたが、スマホは見つからなかった。
 どうやら来栖は僕のスマホをトイレに流したようだ。
 またスマホを買い替えなきゃいけない。
 これで何度目だろうか……。
 ほんと、うんざりだ。

 


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