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第37話 謀略
しおりを挟むかつてライゼを襲った刺客、オブライエン。
そのオブライエンが所属していた、アルテミス王国。
今、アルテミス王国は混乱を極めていた。
アルテミス王国には、極端な思想が蔓延している。
この世のすべてはアルテミス王国のものだし、必ず世界を救う英雄は、アルテミス王国でなければならない。
そういった側面もあって、アルテミス王国の大臣――ドドンパスは、スパイとしてオブライエンを送ったのだった。
だがしかし、聖女ライゼ暗殺は未遂に終わった。
しかもそのことで、ローゼンベルク王国から、非難声明を受けている。
ローゼンベルクは国際裁判も検討していて、アルテミス王国の状況はあまりいいとはいえない。
まっとうな他国はみな、アルテミス王国を危険視している。
本当に国際裁判にでもなれば、ローゼンベルクに有利にはたらくだろう。
アルテミス王国大臣、ドドンパスは、次なる策を考えていた。
「っく……このままじゃローゼンベルクの一人勝ち。魔王軍を撃退したのは、すべてローゼンベルクの手柄となっています」
「その通り、一国が力を持ちすぎるのは危険だ。大魔境から大賢者を連れ帰ったともいうし、今やローゼンベルクの国力は無視できないものとなった」
ドドンパスが話しているのは、イデオット王国の宰相――ベルン。
彼らは同じ目的のもとに、会合を開いていた。
イデオット王国の王子であるドマスは、レルギアに負けたことを根に持っていた。
王である父に、そのことを進言したのだ。
イデオット王国としても、ローゼンベルクの動きは不愉快なものだった。
そこに目をつけたのが、アルテミス王国である。
「そもそも、大賢者だかなんだか知らないが、それも怪しい男だ。たった一人で、魔王軍をかたづけたなんて話も、嘘にきまっている」
「そうですよ。大賢者ではなく、本当はその者が魔王なのでは?」
「そうだ! きっとそうに違いない。ローゼンベルクの王は魔王に洗脳されているのだ」
「人類を裏から支配しようとは……魔族め、卑劣な……。これはローゼンベルクを救う聖戦である! 魔王の手から、人類を解放するのだ!」
「そうだそうだ! ローゼンベルクへさっそく侵攻するのだ!」
公歴2825年6月17日――アルテミス王国とイデオット王国の連合軍が、ローゼンベルクへ向けて宣戦布告。侵攻を開始。
他国はアルテミス王国の暴走と処理。
イデオット王国がそれにたぶらかされ巻き込まれた形と認識された。
アルテミス王国の凶行は、一気に諸外国に知れ渡った。
しかし、ローゼンベルクを支援し、共闘しようというものも現れなかった。
あわよくば、ローゼンベルクと共倒れにでもなってくれというのが、諸外国の本音だ。
確かに大賢者を擁するローゼンベルクは、他国にとって脅威に他ならないのも事実だからだ。
それに、ローゼンベルクに友好的な国からしても、助ける必要性はないと思われていた。
大賢者の噂が本当であれば、ローゼンベルクに支援など必要ないからだ。
そう、レルギアにとって、国のひとつやふたつなど、相手にならない――。
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