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第36話 帰れ→※森へお帰り?【ざまぁ!】
しおりを挟む俺は両親だと名乗る奴らに会うために、ローゼンベルク城にやってきた。
「それで、アンタらがそうか」
謁見の間に通されると、そこには初老の夫婦がいた。
といっても、俺を生んだときの年齢から考えると、まだ30代だろう。
だが、その見た目はひどく老けていて、顔には苦労のあとが刻まれていた。
服もボロボロで髪も洗っていない。そう裕福そうには見えなかった。
少なくとも、俺が生まれたあの家は、そこそこ裕福だったと記憶している。
なにかあったのだろうか。
「あ、あなたが大賢者様ですか……! 確かに似ている……! そうだ、この子はうちの子だ……!」
両親と名乗る二人は、感動の声を上げ、俺に抱き着こうとしてくる。
だが、俺はそんなのごめんだから、すっと避ける。
「え……あ……はは、そうだね……。まだ会ったばかりですもんね……」
「いや、そうじゃなく。あんたらなんかとハグする気はないというだけだ。俺を捨てたような奴らとはな」
「え……?」
確かにこの二人の顔は、俺によく似ている。若いころはさぞ美しかったのだろうということがわかる。
だが、今はその表情にも貧しさや性格の悪さがにじみ出ている。
二人は俺がハグを拒むと、悲しそうな顔をしてみせた。
そして俺を捨てたことが後ろめたいのか、冷や汗を垂らす。
だが、俺が当時赤子だったことをいいことに、こちらをだまそうとしているのか、こう続けた。
「い、いやだなぁ……捨てただなんて……。そんなわけないじゃないか……! かわいい子供を捨てるような親がどこにいる。君は赤ん坊のころに、攫われたんだよ……はは……」
「俺はしっかり記憶しているのだがな? 俺はアンタらに捨てられ、ドラゴンに拾われた。まあ、アンタらのおかげでアイリと出会えたから、そこは感謝かもな。だが、嘘はいけないな?」
「ど、ドラゴンだって……? そ、そうだ……! そのドラゴンに攫われたんだ……! 君はまだ赤ん坊だったから、記憶が混濁しているんだよ……!」
彼らのその言葉に、俺は業腹だった。
「あ? 今なんて言った? アイリを誘拐犯扱いしたのか……?」
「ひぃ……!?」
俺は自分でも無意識のうちに、殺気を飛ばしていた。
幸い、無意識に力をセーブしていたのか、両親は死ななかった。
だが、部屋に置かれていた調度品の花瓶が割れ、地に落ちる。
「もういい。話は終わりだ。帰ってくれ。俺はあんたらに用はない」
「な、なんだって……!? 親に向かって帰れとは……! お、俺たちにも賢者としての金をよこしてくれたっていいだろ……!」
「ふぅ……それが本音か……」
「し、仕方ないだろ……! こっちは食うものにも困ってるんだ……!」
哀れだな……。
自分たちが捨てた赤子が、大きくなって大賢者と呼ばれてるのを知って、こうやってたかりに来たってわけか。人間ってのはなんて愚かなんだろうな。
都合がいいにもほどがある。
まあいい。そんなに食いもんが欲しけりゃくれてやる。
「いいから帰れ」
「そんな……! こっちはお前をあてにして、残り少ない全財産を旅費にあててここまで来たんだぞ! どうやって帰ればいいんだ……! ふざけるな……!」
まったく……ふざけるなはこっちのセリフだ。
だんだん本気で腹が立ってきた。
まるで人間の愚かさを集結させたような、醜い人間だな。
俺はもはや、この二人のことを両親とは思わない。だって捨てたのは向こうだしな。
それに、俺の親はアイリだけだ。
「じゃあ、俺が乗り物を用意して送ってやるよ。ついでに、食べ物がいっぱいあるとこに降ろしてやる」
「ほ、ほんとうか……! そ、それならまだ来たかいがある……!」
俺は城のベランダに、トカゲを呼び出した。
「よし、これに乗れ」
「ひ、ひぃ……!? ど、ドラゴン……!?」
「じゃあトカゲ、こいつら適当に大魔境のどっかに捨ててきてくれ。俺がされたみたいに」
あそこなら、食いもんはいっぱいあるだろう。
俺も大魔境に捨てられ、そこで生き延びたんだからな。
同じことをしてやろう。
「ちょ、ちょっと待って。今大魔境って――」
「トカゲ、お客さんがお帰りだ」
「ま、待ってくれ……! わ、悪かったああああああああ!!!!」
「じゃあな。二度とこないでくれ」
俺はトカゲに二人を乗せ、大魔境まで飛ぶように命じた。
まあ、なんだかんだで死ぬことはないだろう。
少なくとも、赤子を大魔境に捨てるのよりは、状況は幾分かマシなはずだ。
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