上 下
31 / 34

第31話 ドッペル狩り

しおりを挟む

【三人称視点】



 バッカス、マヌッケス、ノーキン、ワルビルの四人はクエストを終え、街に戻ってきていた。

「よし、それじゃあ手分けしてドッペルを探そう」
「ああ、見つけたら一度戻って報告だ」
「あいつは何人もいるはずだからな。探していれば、そのうち一人は見つかるだろう」
「よし、それじゃあ解散だ」

 四人はそれぞれに分かれて、ドッペルを探した。
 そして数時間後――。
 四人は集合場所にいったん帰還した。

 バッカスが尋ねる。

「どうだ? ドッペルは見つかったか?」
「ああ、見つけたぜ」
「それは本当か!」

 ドッペルを発見したのはマヌッケスだった。

「よし、じゃあとりあえずそいつを、全員で捕まえよう」
「そうだな。まだそいつが俺たちの知ってるドッペルだと決まったわけでもないしな」
「ああ、そうしよう」

 四人はさっそく、見つけたドッペルの後を追った。
 そしてドッペルが路地裏に入ったのを見計らって、ドッペルの目の前に現れた。

「おいドッペル・ニコルソン。ちょっと待ちな!」

 四人でドッペルを取り囲む。
 ドッペルは驚いた顔をして、後ずさる。

「ちょっと待ってくれ。君たちは誰なんだ……!? いきなりなんなんだよ……!」

 どうやら、ドッペルのほうは四人の顔に見覚えがないらしい。
 つまり、四人が追放したドッペルとは別のドッペルということになる。

「俺たちに見覚えはないか?」
「し、知らないよ! 君たちのことなんか……」
「そうか、まあいい。お前は知らなくても、こっちはドッペルに用があるんだ」
「ど、どういうことなんだ……!?」

 四人はドッペルにいきなり殴りかかった。

「とりあえず、おとなしくしやがれ!」
「うわああああ……!?」

 ――ドカ!
 ――ボコ!

 ドッペルは四人に囲まれて、ボコボコにされてしまう。
 どうやらこのドッペルも、他の多数のドッペルと同じく戦闘能力はあまりないようだった。
 ドッペルは気を失った。
 動かなくなったドッペルを、四人はずた袋に詰め込んだ。
 そして四人でそれを担ぎ、街外れの洞窟までやってくる。
 洞窟の中には簡易で作られた牢屋があり、四人はドッペルをそこに収容した。

 しばらくしてドッペルは目を覚ます。

「こ、ここはどこなんだ……。君たちは……なんなんだ! 僕にいったいなんの恨みがあってこんなことを……!」
「お前には覚えがなくてもなぁ、こっちにはいろいろあるんだよ!」

 四人は牢屋に鍵を閉めると、その場を後にした。
 ドッペルは冷たい牢屋に残される。

「っく……いったいどうなっているんだ……くそ……」

 再び街に出た四人は、さらにドッペルを探す。
 
「しかし、いったいどうなっているんだろうな、ほんとうに。マジで別のドッペルが見つかった。やっぱり俺たちの予想は正しかったようだな。ドッペルは何人もいる」
「ああ、そうだな。仕組みはわからねえが、とりあえずそういうことになる。俺たちでその仕組みを解明できればいいが……。とりあえず、あいつは俺たちの知ってるドッペルじゃなかった」
「俺たちの知ってるドッペルに当たるまで、ドッペルを捕まえりゃいい。そのうち向こうから出てくるだろう」
「ああ、そうだな。ドッペル狩りだ……!」

 四人は再びドッペルを探した。
 最終的に、さらに3人もドッペルを捕まえ、牢屋に収監した。

「しかし、ほんとうにドッペルが何人もいるなんてなぁ。こうして目の前で見ても、信じられねえぜ……」
「ああ、マジで奇妙だ。全員同じ顔をしていやがる……」
「どうやら、この中に俺たちの知ってるドッペルはいないようだな……」
「いったい全部で何人いるってんだ……?」

 牢屋に捕らえた4人のドッペルを眺めながら、4人の悪人はつぶやく。

「なあ、ちょっと待ってくれ。これはどういうことなんだ……!? 僕たちにもまったくもって不明なんだが……?」

 ドッペルの一人がそう言う。
 ドッペルからしても、この状況は意味不明だった。
 いきなり捕らえられたと思ったら、牢屋には自分と同じ顔をした人間が3人もいる。
 
「この……僕と同じ顔をした彼らはいったいなんなんだ……!?」

 ドッペルの問いかけに、バッカスが答える。

「そんなの、こっちが知りたいくらいだ。全員ドッペルなんじゃねえのか? なんでお前自身が知らねえんだよ? まあ、いいぜ。とにかく俺たちはドッペル・ニコルソンに恨みがある。だから、お前らドッペルは全員同罪だ」
「そんな……めちゃくちゃな……。僕はなにも知らない……! 他のドッペルになにかされたっていうなら、そいつに言ってくれ……」
「うるせえ! お前らは人質なんだよ! 本物のドッペルが現れるまで、おとなしくしてろ!」
「ほ、本物って……。僕だって本物なのに……」

 マヌッケスが口を開く。

「なあ、ところでだが。こいつらのスキル、一応確認しておいたほうがよくないか?」
「どういうことだ?」
「どうやらドッペルはそれぞれ別のスキルを持ってるみたいだからな。こいつらがもし厄介なスキルを持ってたら面倒だ。まあ、しょせんはドッペルだからゴミスキルだろうが……。豪運みてえなやつもいるかもしれねえ」
「ああ、そうだな。おい、お前ら。右から順にスキルを言っていけ」

 バッカスがドッペルたちにそう命令する。
 檻の中のドッペルはそれに従うしかない。

「ぼ、僕は……【鑑定】だ」
「俺は【解呪】」
「俺は【呼び笛】というスキルだ」

 ドッペルはそれぞれ答えた。

「ほう、どいつもこいつも、戦闘向けのスキルではないな。こりゃあじっくりいたぶれそうだぜ。で、最後のお前は?」

 バッカスがそう言うと、ようやく最後のドッペルが口を開いた。

「俺は――【逃走】だよ」
「なに……!?」

 その瞬間だった、【逃走】のドッペルの姿が、一瞬にして消えた。

「くそ……! 逃げられた……!」
「まさかそんな厄介なスキルの奴がいたなんてな……。っち、面倒だぜ」
「まだそれほど遠くには行ってねえはずだ。追うぞ!」

 四人は血相を変えて洞窟を飛び出していった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【R18】聖女は生贄として魔王に捧げられました。 勝手に救われた気になっていますが大丈夫ですか?

迷い人
ファンタジー
『半端者』『混ざり者』『廃棄者』と呼ばれる獣交じりとして生まれた私ラフィだが、その体液に妙薬としての効果が偶然にも発見された。 ソレを知った領主の息子『ザレア』は、自らが聖人として存在するために私を道具とする。 それから2年に渡って私は監禁され、道具とされていた。 そこにいるのに見ることも触れることも出来ない都市。 そんな都市に、魔物を統べる王からの来訪予告が届いた。 そして、私は魔王への貢物として捧げられる。 「どうか、貴重なその女を捧げますから、この都市の民はお助け下さい」

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む

大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。 一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...