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第31話 ドッペル狩り
しおりを挟む【三人称視点】
バッカス、マヌッケス、ノーキン、ワルビルの四人はクエストを終え、街に戻ってきていた。
「よし、それじゃあ手分けしてドッペルを探そう」
「ああ、見つけたら一度戻って報告だ」
「あいつは何人もいるはずだからな。探していれば、そのうち一人は見つかるだろう」
「よし、それじゃあ解散だ」
四人はそれぞれに分かれて、ドッペルを探した。
そして数時間後――。
四人は集合場所にいったん帰還した。
バッカスが尋ねる。
「どうだ? ドッペルは見つかったか?」
「ああ、見つけたぜ」
「それは本当か!」
ドッペルを発見したのはマヌッケスだった。
「よし、じゃあとりあえずそいつを、全員で捕まえよう」
「そうだな。まだそいつが俺たちの知ってるドッペルだと決まったわけでもないしな」
「ああ、そうしよう」
四人はさっそく、見つけたドッペルの後を追った。
そしてドッペルが路地裏に入ったのを見計らって、ドッペルの目の前に現れた。
「おいドッペル・ニコルソン。ちょっと待ちな!」
四人でドッペルを取り囲む。
ドッペルは驚いた顔をして、後ずさる。
「ちょっと待ってくれ。君たちは誰なんだ……!? いきなりなんなんだよ……!」
どうやら、ドッペルのほうは四人の顔に見覚えがないらしい。
つまり、四人が追放したドッペルとは別のドッペルということになる。
「俺たちに見覚えはないか?」
「し、知らないよ! 君たちのことなんか……」
「そうか、まあいい。お前は知らなくても、こっちはドッペルに用があるんだ」
「ど、どういうことなんだ……!?」
四人はドッペルにいきなり殴りかかった。
「とりあえず、おとなしくしやがれ!」
「うわああああ……!?」
――ドカ!
――ボコ!
ドッペルは四人に囲まれて、ボコボコにされてしまう。
どうやらこのドッペルも、他の多数のドッペルと同じく戦闘能力はあまりないようだった。
ドッペルは気を失った。
動かなくなったドッペルを、四人はずた袋に詰め込んだ。
そして四人でそれを担ぎ、街外れの洞窟までやってくる。
洞窟の中には簡易で作られた牢屋があり、四人はドッペルをそこに収容した。
しばらくしてドッペルは目を覚ます。
「こ、ここはどこなんだ……。君たちは……なんなんだ! 僕にいったいなんの恨みがあってこんなことを……!」
「お前には覚えがなくてもなぁ、こっちにはいろいろあるんだよ!」
四人は牢屋に鍵を閉めると、その場を後にした。
ドッペルは冷たい牢屋に残される。
「っく……いったいどうなっているんだ……くそ……」
再び街に出た四人は、さらにドッペルを探す。
「しかし、いったいどうなっているんだろうな、ほんとうに。マジで別のドッペルが見つかった。やっぱり俺たちの予想は正しかったようだな。ドッペルは何人もいる」
「ああ、そうだな。仕組みはわからねえが、とりあえずそういうことになる。俺たちでその仕組みを解明できればいいが……。とりあえず、あいつは俺たちの知ってるドッペルじゃなかった」
「俺たちの知ってるドッペルに当たるまで、ドッペルを捕まえりゃいい。そのうち向こうから出てくるだろう」
「ああ、そうだな。ドッペル狩りだ……!」
四人は再びドッペルを探した。
最終的に、さらに3人もドッペルを捕まえ、牢屋に収監した。
「しかし、ほんとうにドッペルが何人もいるなんてなぁ。こうして目の前で見ても、信じられねえぜ……」
「ああ、マジで奇妙だ。全員同じ顔をしていやがる……」
「どうやら、この中に俺たちの知ってるドッペルはいないようだな……」
「いったい全部で何人いるってんだ……?」
牢屋に捕らえた4人のドッペルを眺めながら、4人の悪人はつぶやく。
「なあ、ちょっと待ってくれ。これはどういうことなんだ……!? 僕たちにもまったくもって不明なんだが……?」
ドッペルの一人がそう言う。
ドッペルからしても、この状況は意味不明だった。
いきなり捕らえられたと思ったら、牢屋には自分と同じ顔をした人間が3人もいる。
「この……僕と同じ顔をした彼らはいったいなんなんだ……!?」
ドッペルの問いかけに、バッカスが答える。
「そんなの、こっちが知りたいくらいだ。全員ドッペルなんじゃねえのか? なんでお前自身が知らねえんだよ? まあ、いいぜ。とにかく俺たちはドッペル・ニコルソンに恨みがある。だから、お前らドッペルは全員同罪だ」
「そんな……めちゃくちゃな……。僕はなにも知らない……! 他のドッペルになにかされたっていうなら、そいつに言ってくれ……」
「うるせえ! お前らは人質なんだよ! 本物のドッペルが現れるまで、おとなしくしてろ!」
「ほ、本物って……。僕だって本物なのに……」
マヌッケスが口を開く。
「なあ、ところでだが。こいつらのスキル、一応確認しておいたほうがよくないか?」
「どういうことだ?」
「どうやらドッペルはそれぞれ別のスキルを持ってるみたいだからな。こいつらがもし厄介なスキルを持ってたら面倒だ。まあ、しょせんはドッペルだからゴミスキルだろうが……。豪運みてえなやつもいるかもしれねえ」
「ああ、そうだな。おい、お前ら。右から順にスキルを言っていけ」
バッカスがドッペルたちにそう命令する。
檻の中のドッペルはそれに従うしかない。
「ぼ、僕は……【鑑定】だ」
「俺は【解呪】」
「俺は【呼び笛】というスキルだ」
ドッペルはそれぞれ答えた。
「ほう、どいつもこいつも、戦闘向けのスキルではないな。こりゃあじっくりいたぶれそうだぜ。で、最後のお前は?」
バッカスがそう言うと、ようやく最後のドッペルが口を開いた。
「俺は――【逃走】だよ」
「なに……!?」
その瞬間だった、【逃走】のドッペルの姿が、一瞬にして消えた。
「くそ……! 逃げられた……!」
「まさかそんな厄介なスキルの奴がいたなんてな……。っち、面倒だぜ」
「まだそれほど遠くには行ってねえはずだ。追うぞ!」
四人は血相を変えて洞窟を飛び出していった。
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