上 下
12 / 34

第12話 四?五?人目のドッペル

しおりを挟む

【Doppelgänger:5】


 
「ドッペル・ニコルソン。てめえは今日でこのパーティを追放だ。理由はもちろん、わかるよなぁ?」
「そんな、どうしてなんだ!」

 パーティーリーダーのワルビルからいきなり追放を言い渡されて、僕は抗議の声をあげる。
 ワルビルは歯並びと目つきの悪い長身の男だ。
 いったいどうして、僕が追放されないといけないのだろう。

「当たり前だろう? お前はゴミスキルしかもっていないんだからなぁ!」
「うぅ……確かにそうだけど……、でも僕だって役に立とうと雑用や荷物持ちをしてきたじゃないか!」
「うるせえ! 追放ったら追放だ! てめえなんか全然役に立ってねえんだよ!」
「そんな……!」
「なあ? キルケ、お前もそう思うよな?」

 ワルビルは仲間のキルケに同意を求める。
 キルケは背の低い金髪おかっぱの青年だ。
 キルケは僕と仲がいいから、擁護してくれるはず……そう思っていたのに……!

「ほんと、そうですよ、ドッペルはなんの役にも立っていません」
「だよなぁ? がっはっは!」

 ひどい……! まさかキルケまでそんなふうに思っていたなんて……!
 信じていた仲間たちにこんなふうに思われていたなんて、すごくショックだ……。
 
「じゃあな、お前は2度と俺たちの前に顔を出すんじゃない。死にたくなかったら、今すぐここから出ていけ!」
「うぅ…………」

 僕はしぶしぶ、宿から出る。
 あのままいたら、ワルビルがきれてなにをしだすかわからないからな……。
 ワルビルは力が強くて、おっかないんだよな……。
 僕なんかじゃ、逆らうことはできない。
 なにせ、僕のスキルはほんとに、使い物にならない。

 僕のスキルは【融合】というわけのわからないスキルだった。
 いったいなにに役立てればいいのかわからない。
【融合】は、同じものをくっつけて、1個にするというスキルだ。
 例えば、薬草を2個用意する。
 それをこのスキルで、一つにすることができる。
 で、だからなんだっていう感じのスキルだ。

 まあ、薬草の場合、2個合わせれば、2倍の効果になる。
 だけど、それならわざわざ融合しなくても、2個使えばいいだけの話だ。
 それに、この融合はとても厄介なところがある。
 それは、「同じもの」しか融合できないというところだ。
 この「同じもの」という定義の範囲が、かなり狭い。

 薬草っていうのは、自然に生えているものが多い。
 だから、融合しようとする薬草と薬草に、差異があると、うまくいかないのだ。
 だから、かなりキレイな状態の薬草どうしでしか、融合はできない。
 例えば、片方の薬草が虫食いになっていると、融合は発動しないのだ。
 だから、剣や、硬貨などは比較的融合しやすい。
 だけど、ちょっとの傷やなんかで融合できなくなったりするから、ほんとうに扱いが難しいのだ。

 まあ、ちょっとくらいは便利な部分がある。
 それは、省スペースになることだ。
 アイテムを持ちすぎると、荷物が増える。
 だけどそういうときに融合で、同じアイテムをまとめておけば、かなりの省スペースになる。
 ポーションをいくつかまとめておけば、効力の高いポーションが作れたりもする。
 それに、たくさんポーションを持ち歩かないでもよかったりするしね。
 だから、そういう部分では、便利なところもある。

 だけど、普通は冒険者はそこまでの大けがはしない。
 優秀な冒険者ほど、けがをしないように、作戦をたてて、行動するものだ。
 だから、ポーションの効力をあげれても、あまり意味はない。
 例えばだが、ハイポーションはHPを500回復する。
 そしてポーションはHPを100回復する。
 つまり、融合によってハイポーション並みのポーションを作ろうと思えば、ポーションを5つ融合させる必要があるのだ。
 だけど、ポーションを5つ買うよりも、ハイポーションを1つ買ったほうが、値段が安い。
 だから、僕の融合のスキルは、あまり役に立つとは言えないのだ。

 同じ理由で、武器もそうだ。
 攻撃力10の武器を5個買って、融合して、攻撃力50の剣をつくるよりも、最初から攻撃力50の剣を買った方が、安くつくのだ。
 そんな使い道がよくわからないのが、僕の融合スキルなのだ。

「はぁ……これからどうしようかな……」

 いくあてもなく街を歩いてみる。
 すると、

 ぽんぽこ堂の前を歩いていたときだった。

 いきなり、なぞの3人組に声をかけられる。

 「「「よお」」」

 振り返って、顔をよく見ると――。

 なんとそこには、僕とまったく同じ顔をした男が、3人立っていた。
 い、意味が分からない……!??!?!?
 幽霊……!??!?!
 幻覚……!??!?!?
 とにかく、わけがわからなくて、叫んだ。

「うわああああああああああ……!??!?!?!?!!」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...