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第4話 狼たちがきたよ

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 俺の若木も、かなり成長して3メートルくらいの大きさになっていた。
 しかし、ここ数年伸び悩んでいた。

「うーん、俺最近全然伸びねえな? なんでだろう。栄養が足りないのか?」

 若木がさらに成長をするには栄養が必要だった。
 俺がそう考えていた矢先、ある日、狼の集団が若木のもとにやってきた。
 狼たちは獲物を食べたばかりといった感じで、重そうなお腹を引きずっている。

「がるるるる……」
「なんだなんだ……俺になんか用か……? 俺は食えねえぞ……?」

 狼たちに囲まれ、警戒する俺だったが、狼たちに敵意はなさそうだ。
 それどころか、狼たちは若木の根本に向けて、肛門をさらしてきた。

「あ? おいおい、まさか……おいやめろ……!」
「がるぅ……」

 そして狼たちは、ちょうどいい場所があったといった感じで、俺に向かって糞をしていった。

「ぎゃああああああああああ!!!!」

 静かに悲鳴を上げる俺。しかしその声は誰にもきこえない。
 
「くそぉ……なんて狼たちだ……。ひどい目にあった……」

 落ち込む俺であったが、その数年後……。
 なんとあれほど成長が止まっていた若木に変化が訪れた。
 若木が5メートルほどの立派な木にまで成長していたのである。

「おお……? なんか急に伸びたな……」

 それもそのはず、狼魔物の糞には、たくさんの栄養素と魔力が含まれるだろうからな。
 それが養分になったのだろう。

「なるほどな、あの狼たちには感謝だな」

 あらためて、狼たちに感謝する俺。
 しばらくして、またあの狼たちがやってきた。
 しかし、この前までとどうやら様子が違っている。

 狼たちには角が生え、言葉を話すようになっていた。
 そう、狼たちは上位種の白狼に進化していたのである。
 狼たちは俺のもとへやってきて、言った。

「この前はすみません……あのような失礼なことをいたしまして……」

 どうやら進化し、知性が芽生えたことで、狼たちは自分たちがしたことがどういうことだったのかを理解したようだ。
 非常に申し訳なさそうに、俺に頭を下げてくる。
 俺はもう気にしていないといった感じで、答えた。

「あー、大丈夫大丈夫。むしろおかげで成長できたわけだし……」

 しかし俺の声は狼たちには聴こえない。
 どうやらスライムとは違うようだ。

「お詫びと言ってはなんですが、これをどうぞ」
「これは……?」

 狼たちは、こんどはモンスターの死肉や骨を置いていった。

「これも養分となるはずです。我々の糞よりはこのほうがよいでしょう。これをお詫びとしてうけとってください」
「おお……! たすかる……!」

 モンスターの死肉には、栄養素や魔力がふんだんに含まれているだろうからな。
 これで、俺はさらに成長することができる。

 それから白狼たちは定期的にやってきては、養分を置いていくようになった。
 おかげで、俺はどんどん成長していった。

 
 ◇

 
 それからまたしばらくして、俺は7メートルもの大木になっていた。
 
「ふっふっふ、これで俺も立派な木になったぜぇ」

 誇らしげに自分の姿を見渡す俺。
 そんな俺のもとへ、一人の男性が近づいてきた。
 この男性はおそらくはポコット村の住人で、こうしてたまに世界の様子を見にやってくる。

「よしよし、この木もだいぶ大きくなったなぁ」

 初老の男性は、そういって俺の幹をドンドンと叩く。
 おじさんの言葉に、俺も自慢げに胸を張る。

「そうだろうそうだろう。俺もでっかくなったもんだ。昔はほんの小さな若木で、踏みつぶされてたのになぁ」

 その直後、おじさんの一言で、俺は凍り付くことになる。

「よし、じゃあ斬るか」
「は……!? え……!? は……? あああああ……????」

 そう言っておじさんはどこからともなく斧を取り出した。
 俺は焦っていた。
 まさかこのおじさんが、自分を斬るためにやってきていたなんて思ってもみなかった。
 一緒に成長を喜んでくれている、やさしいおじさんだと思っていたのに……。
 まさかいきなり刃物を向けてくるなんて。

「え……ちょ……マジで斬るのか……!? や、やめてくれええええええ……!!!!」

 俺は必死に叫んだ。
 しかしその声はおじさんには聴こえない。

 おじさんは斧を振りかぶって、構える。
 今にも木を切ろうとしたそのとき――、

 森の奥から、白狼たちが大軍で押し寄せた。

「ワオオオオオン!!!!」

 狼たちは俺のことを守るかのように、木のまわりを取り囲み、おじさんに立ちはだかった。

「な、なんだよぉ……」

 いきなり現れた狼たちに、ひるむおじさん。

「ガルルルルル……!!!!」

 狼たちはおじさんに襲い掛かりはしないものの、鋭い目つきで威嚇した。
 その光景をみて、俺は悟った。
 この狼たちは、自分を守ろうとしてくれているのだと。

「うう……なんていい奴らなんだ……」

 大量の狼に囲まれては仕方がないと、おじさんはあきらめてその場に斧を置いて逃げていった。

「い、いったいなんなんだ……。わかったよぉ……この木は切らないから……許してくれええ!」

 俺は狼たちに感謝した。

「ふぅ……なんとかなったぜ……」
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