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第30話 父と子の本気

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 ――キン!
 ――キン!

 僕は剣と魔法と、格闘をうまく組み合わせて、ウルの攻撃をさばく。
 お互いに技の応酬が止まらない。
 すごい……ウルってこんなに強いんだ……!
 なんだか戦いながら、お互いに楽しくなってきた。
 戦うって、呼吸を合わせることだ。
 僕はまるで、ウルと一つの動物になっているような気分だった。
 なんだかはじめて、ウルの一番深い部分に触れている気がする。

「楽しいな……! 我が息子よ!」
「うん……! 楽しい……!」

 後ろのほうではラビィがあきれている。

「もう……結局勝敗なんてどうでもよくて、二人で楽しんでるだけじゃない……。わけわかんない……」

 決着は、一瞬だった。
 ウルが最後の攻撃を仕掛けようとしたそのとき。

「オォーーーーン!!!!」

 ウルの狼の咆哮だ。
 このあとに飛んでくる『ウルフズドライブ』は食らったら最後、一晩は立ち上がれない。
 僕はずっとこのタイミングを待っていた。
 ウルの必殺技の前に必要な、狼の咆哮――その一瞬の隙を狙う。

「ここだ……! 虹色一閃エレメント・ストライク!」
「なに…………!? どこからそんな威力を……!?」

 僕は戦いながら、この技のために魔力を左手に蓄えていたのだ。
 だから、常に左手はウルから見えないようにして、右手の剣に注目させるように動いていた。
 そして、魔力が十分に溜まったその瞬間、僕は必殺技を繰り出した。
 虹色一閃エレメント・ストライクは7種類の属性魔法を同時に繰り出す大技だ。
 本来なら詠唱にも発動にも時間がかかる。
 けど、僕はそれを戦いの中でバレないようにして、発動させたのだ……!

「グオオオオオオ!!!!」

 ――ドカーン!!!!

 僕の虹色一閃エレメント・ストライクが、ウルの横腹に炸裂する。
 そして、ウルの身体は数十メートルは吹っ飛んだ。
 大丈夫かな……ウル……。

「くそ……俺の負けだ……。よくやったな。息子よ。くっ……立ち上がれねぇ……」

 ウルは寝転んだまま、僕の勝利を宣言する。

「やった……。僕の勝ちだ……! ウル、大丈夫?」
「ああ、しばらくしたら動けるようになるさ。それより、よくやったな。お前が強くなって、俺はうれしいぞ。お前もこれで、真の一人前だ」
「ありがとう、ウル」

 その瞬間、僕の背中に、もふっとした感触が伝わる。
 僕の後ろから、メリーやベアトリスたちもふもふが、大量に押し寄せてきていた。
 みんな、僕に一斉に抱き着いてくる。
 もふもふが口や鼻に入って、くすぐったい。

「リュカああああああ! おめでとおおおおお!!!!」
「勝つって信じてたよおおおおお!!!!」

 みんな、僕をもふもふしたり、頭をなでてくれたりで、賞賛してくれる。

「みんな、ありがとう……うれしいよ」

 アリシアも僕へ駆け寄ってきて、涙ながらに言った。

「リュカ……。ほんとうにおめでとう。ありがとう。私のために……」
「いいんだよアリシア。僕も、いずれこの森を出て外の世界にも行くつもりだったからね……。ウルとはいつか戦わなければいけなかった」

 ウルはよろよろと立ち上がると、ラビィのもとへ寄っていった。

「すまねぇラビィ。治療してくれ」
「ダメです」
「え…………」
「素直にリュカを行かせてあげなかったいじわるさんには、治療してあげませーん」
「そ、そんな……! お前……」
「嘘嘘。すぐに治療してあげるから、そこに寝転びな」
「ああ、ありがとう……」

 相変わらずだね、二人は。
 ウルは治療を受けながら、僕と話をした。

「それにしても、見事だったな……。どうやって俺から左手を隠してた? 全然気づかなかった……」
「ウルの教えにしたがったんだよ。気配を消す方法。それを応用して、左手だけの気配を消したんだ」
「そうか……俺の教えを応用して……。成長したな。リュカ」
「ウルのおかげだよ」

 僕はウルのもふもふの毛にほおずりした。
 とてもやわらかくて、あたたかくて、くすぐったかった。

「まったく、似た者親子だわね」

 ラビィが笑ってそう言った。

「さあて、次はいよいよ外の世界だ……! 待ってろ……! リファイン王国!」

 僕はすっかり暗くなった空へ向かって、そう叫んだ。
  
「そうだ。せっかくだから、ウルもついてきてよ。僕のことが心配なんだったら、そうすればいいじゃん!」

 僕はなんとなしに、ウルに提案してみる。

「……無理だ」
 
 しかし、森の一同はみんな暗い顔。
 なにか言ってはいけないことを言ってしまったような空気になる。
 あれ…………?

 すると、アリシアがなにを当然のことを? といった感じで、僕に言った。

「リュカ……あなた、知らないの……?」
「え……? なにが……?」

 アリシアは、僕に衝撃の事実を告げる。

「封印の獣は……封印の森を出られないのよ……?」
「え…………ふういんの……けもの……?」

 はじめてきく言葉だった。



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