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学園編
14.襲撃
しおりを挟むアルが翌日、教室でうとうとしていると、再びグレゴールがジークに声をかけているのに出くわした。
「あいつ……また……」
グレゴールは先日と同じようにしてジークを引き連れて出ていく。
アルはまたジークが虐められるのだと思い、後を追う。
思った通り、二人はまた物陰へと消えていった。
アルはすかさず追いかける。
「おい、グレゴール! 僕の目の届くところでのいじめは許さないぞ!」
アルはグレゴールに向かってすかさず畳みかける。
「おうおう、悪かったよ……」
グレゴールはそう言いながらニヤリと笑う。
「……?」
「こういうことさ……!」
アルの後ろからジークの声が聞こえた。
ジークはそのまま大きな石でアルの頭を殴ろうとしている!
アルは嵌められたのだ。
だがそこでそのままやられるアルではない。
「そんな子供だましが通用すると思うなよ!」
アルは瞬時に杖を抜いて、魔法陣を起動する。
身体加速により、華麗にかわす。
「……っく……!」
「いったい何のつもりだジーク!」
アルはジークに向き直る。
「ふん……なんのつもりもくそもあるか。俺はいまだにお前が憎い。それだけだよ」
「懲りないやつだな……君も。僕には勝てないというのに……」
アルはやれやれとため息をつく。
「ごちゃごちゃうるせえぜ! 俺もいることを忘れたか!? 俺たち一人では勝てなくても、二人ならどうかな?」
するとグレゴールが急にアルに殴りかかってきた。
だがアルは得意の体術でグレゴールの攻撃を軽く受け流す。
「……っく。だがまだまだだ!」
その後もジークとグレゴールはアルに攻撃を挑みつづけるが、アルはなんなくそれを受け流す。
「おい、まともに戦え!」
痺れをきらし、ジークがアルに叫ぶ。
だが、アルは、
「いやだよ。学校で許可なく暴力沙汰なんてごめんだね。試合とは違うんだ。それに……周りをみてみなよ」
アルがそう言って促すと、ジークもグレゴールも一度攻撃の手を緩め、あたりを見渡した。
すると騒ぎを聞きつけてやって来た数人の生徒たちに囲まれている形になっていた。
「……んあ?」
すると突然、ギャラリーの生徒たちの間から教師が現れ、
「おいお前たち! 何をしているんだ。学校で喧嘩は禁止だぞ!」
「っげ……」
「お前たち三人とも停学だ。あとで職員室に来なさい……」
教師が怒り顔でそう言うと、
「違うんです! バーナモントくんは何もしていませんでした」
ギャラリーの一人が、アルを擁護する言葉を投げた。
そしてそれに続くように、次々と、
「そうだそうだ! 彼は悪くない」
「彼は手を出していないわ」
「彼は絡まれてただけよ。助けてあげて!」
「二人に襲われて反撃もせずに無傷でいるなんて彼は何者だ!?」
などとギャラリーが騒ぎ出した。
なので教師も仕方なく、
「む、そうなのか?」
と、少しばつが悪そうにアルにきいてくる。
「ええそうです。僕からは何もしていませんよ」
「……と、いうことだ。お前たちは停学だ。まあ場合によっては退学かもな。グレゴールはもともと素行が悪いと聞いてるし、ジーク、君は親父さんがたいそう厳しいというじゃないか。このことを聞いたらどう思うかな?」
と言って教師は二人の肩に手を置く。
教師が現れたからにはさすがの二人も何も言えなくなり、
「……っく……」
と歯噛みしてはアルを睨みつけるのみだった。
「では、あとは任せます。先生」
アルはそういって、軽くジークの方を見て舌をだし、挑発する。
「うああああああああああああああああああああ!!!!」
ジークはその瞬間発狂し、懐から刃を取り出し、アルに向かってくる。
「!?」
だが今度は教師がすぐさまそれに反応して、ジークを制止した。
教師は生徒にも容赦なく腹を殴り、ジークを気絶させる。
「なんなんだいったいこの生徒は!」
突然のことで教師も驚きを隠せない。
周りのギャラリーたちもさすがにジークの行動にドン引きして、
「なんなのアイツ、あり得ない……」
「学校で刃物振り回すとかマジ無理……」
「まえからあの人キモイと思ってたのよね」
などと散々な言われようだ。
さすがに可哀そうに思ったアルは、教師に言う。
「すいません先生。彼とは昔ちょっとした因縁があって。彼はそれを今も根に持っているんです」
と軽く事情を説明する。
「そうだったのか……」
「はい。だからまあ罰はほどほどにしてあげてくださいね」
とアルは満面の営業スマイルで教師に愛想よく進言する。
同性の教師であるにもかかわらず、彼は、
「お、おう」
と少し顔を赤らめてそれに同意した。
アルの美貌は老若男女問わず人々に魅力的に映るのだ。
ギャラリーたちもその笑顔にあてられたようで、
「バーナモントくん、あんなことされたのに先生に減罰を申し出るなんて、優しすぎない?」
「ちょっと彼っていい人過ぎない?」
「あんな強くて人柄もいい聖人ってほんとにいるのね」
などとアルをべた褒めにしてくる。
アルはというと、
(うーん、僕は思ったことを口にしただけなのになぁ……。なんかみんなにすっごく注目されてしまっているし……。これはまたミュレットの嫉妬がすごそうだぞ)
とまたまたやれやれなのであった。
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