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学園編
2.イチャイチャすんじゃねーよ
しおりを挟む入学初日の昼だった。
午前中は簡単なオリエンテーションのみで、そうそうに昼飯になった。
アルとミュレットは別々のクラスだったが、オリエンテーションが終わるとすぐに、ミュレットがアルのところまで駆け寄って来た。
「アル、お昼はもちろんいっしょに食べるわよね?」
「はいはい、そんなに焦らなくても僕は逃げないって……」
なぜだかクラスメイトたちからアルに注がれる視線が大量にあった。
(くそうなんであいつは俺たちと同じFクラスなのにAクラスの女子とイチャイチャしてやがるんだ?)
といったやっかみ、ひがみの視線がほとんどだったがアルはそれにあまり気がつかなかった。さすがは鈍感なアルである。
食堂にはさまざまな生徒がいて、それぞれにグループで固まって食事をとっている。
だがそのほとんどは同じクラスのもの同士でのグループだ。みな自分の実力に妙なプライドがあるのか、違う階級の生徒とはあまり関わり合いになりたくないのだ。
なぜそれがわかるかというと、制服には色でクラスが区別できるように、それぞれ別のリボンがあしらわれている。それがまた生徒たちの競争心をあおるのだ。
これは向上心を持たせるために意図的に差別化されているのだが、必ずしもその影響がいい方向にでるとは限らないのだ。
アルとミュレットが同じテーブル――二人掛けのテーブル席――に腰かけ談笑しながら食事をしていると、それを咎めるように話しかけてくる男がいた。
先日の入学式でも会ったグリシャ・グリモエルというあの貴族のおぼっちゃんだ。
「おいおいなんだ? 君はFクラスの生徒と食べているのかい? Aクラスのくせにねぇ。ねえ、そんなやつほっといて、同じAクラスの僕と食べないかい?」
グリシャはミュレットの肩に手を置いてそう言った。
ミュレットはこの年になってますます美人になっていたから、そういった誘いを受けるのは当然とも思えた。
だがミュレットはその手を汚らわしいものを扱うように払いのける。
「いいえ、私はアルと食事をしているの。あなたなんかにはこれっぽっちも興味はないわ。だからさっさとそこをどいてくれるかな?」
ミュレットが珍しく怖い顔で怖い声色で威嚇したものだから、アルのほうもなんだかびっくりして萎縮してしまう。
「っち……」
グリシャはすんなりあきらめて別のテーブルへを探した。そして直後、別のAクラスの女生徒に声をかけているではないか。
「結局、ああいう輩は誰でもいいのよ。相手してくれる女生徒であればね……」
ミュレットが見透かしたように言う。
「それにしても、あんなに強く言う君は初めて見たよ。意外な一面もあるんだね……」
「ちょ、アル。なによ……」
ミュレットはなぜか顔を赤くする。
「いや別にホメたわけではないけどね……」
「もう、さっさと食べていくわよ」
「はいはい」
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