魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
上 下
19 / 56
忌み子編

19.出会い

しおりを挟む

 翌日になって、昨晩の話題通り、一人の商人がレミーユ宅を訪ねた。

 彼は真っ赤な短髪に緑のバンダナをした風変わりな男で、ただの商人というにはみるからに怪しい。それでもレミーユとの親し気なやり取りをみるに、とりあえずは信用のおける男であることには違いない。

 彼はいつもレミーユとミレーユとの手紙のやり取りを手助けしているそうだ。

 他にもパンやチーズを届けたりなんかもしている。

「やあ、君が話にきいていたアルくんだね?」

 カイドと名乗ったその男は、アルに気がつくやいなや握手を求めた。

 どうやらレミーユの予想通り、ミレーユから大体の事情を聞いてきたらしい。

「ここに来る前、いつものように村に寄ったんだ。いつもそこで一泊して、旅の疲れを癒しているんだよ。その代わりにいろいろ届けたりもしてるって感じだ」

 カイドはアルにざっくりとした関係性を話した。

 ミュレットとも面識があるようで、彼らは軽い世間話で盛り上がった。

 カイド曰く、村にはまだカイべルヘルト家の刺客は来ていないみたいで、とりあえずのところはアルや村のみんなが危険に晒される心配はないということだ。

 念のため、カイドは奴隷の一人を村に置いてきたらしい。もしも村になにかあれば、彼がすぐに街まで駆けつけて知らせてくれる算段になっているそうだ。

「なにからなにまで……僕のために、ありがとうございます」

 アルは深々と礼を述べる。

「いやあいいんだよ。村の人やレミーユさんミレーユさんにはお世話になっているからね……。それに、置いてきた奴隷の男は、カロスって言うんだけど……彼は新しく雇った奴隷だから、村に行くのは今回が初めてだったんだ。だから村の人との交流も兼ねて、ちょうどいい機会さ」

 カイドの人のいい笑顔に、すっかりアルも彼を気に入った。

 だがある疑問が生まれた。

「あのー、僕も先日まで村に滞在していたんですが……その時にはカイドさん、一度も村に来ませんでしたよね……? なにか事情があったんですか?」

 アルが尋ねるとカイドの顔つきが変わった。

「ああ、ちょうど前回この街に来たときは、村を通らなかったんだ……。大量のゴブリンの死体を見つけてね……。あれはすごかったなぁ、いったいどんな生物があれをやったのか……今でも疑問だよ。まああの時はちょうど貴重な荷物を運んでたからね、村の人たちのことも心配だったけど……とりあえず大事を取って迂回したんだ」

 カイドが話すゴブリンの死骸について、アルには心当たりがあった。

「あははー……なるほどですねー……」

(うわぁ……そのゴブリン殺したの僕なんです……ごめんなさい)

 とまあそのような感じで談笑しつつ食事を楽しんだ。

 話を聞いてるうちに、このカイドという商人はなかなか貴重な品も扱っていることがわかった。

 昨日の買い物に心残りがあったアルにとってはこれは僥倖である。

 さっそくアルはカイドに心当たりを訊ねる。

「あのーカイドさん、微量な魔力しか持たない人でも魔法が使えるような杖ってありますか……?」

 アルは自分に魔力が全くないことなどはあえてぼかした。カイドは信用に足る男だったが、それでも差別や偏見の心を抱かないとは言い切れないからだ。

「いやーそんな杖は聞いたことがないなぁ……」

 あからさまにがっかりするアルを見て、「でも……」とカイドは話を続ける。

「そういった変わった杖を扱う人物を俺は知っている……」

「本当ですか!?」

 アルの顔つきが一気に明るくなる。

「ああ、ようはオーダーメイドでつくりゃあいい。腕のいい杖職人なら、それくらい朝飯前だよ。君の注文通りの杖をつくってやる」

 カイドは威勢よく言い放ち、服の袖を捲り上げる。

「で、その腕のいい杖職人というのは……」

 アルが目を輝かせ、前のめりになってカイドに迫るのを見て、レミーユはくすくす笑い出した。

「?」

「だから、目の前にいるだろ……?」

 カイドが自分の顔を指さす。

「ええええ!?」

「カイドさんは商人でもあり、腕のいい職人でもあるのよ?」

 レミーユがわがことのように自慢げに説明する。

「そ、そうなんですか……!」

「おう! 俺に任せておきな!」

 そういうことであれば、カイドが商人としてはいささかけったいな格好をしているのにも合点がいく。これは職人用の作業着なのだ。言われてみればなんということない、作業着以外のなにものでもない。

 こうしてアルとカイドは一度は機を逸したものの、無事出会い、のちにこの世界の杖に技術的な革新をもたらすことになるのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

処理中です...