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第11話 居住区拡大
しおりを挟む「おはようございますー!」
私は朝、起きてすぐにツリーハウスから地上に降り立ちます。
【ネオエルフ】最初の2人、エルヴィンとエルシーラのようすが気になったのです。
あれから彼らはどうしているでしょうか……。
「あ! 神様だ!」
「ほんとだ! エルキアさまだぞ!」
あのー……。
なんだか、増えている気がするのですけど……気のせいでしょうか……?
農作業をしている人影が見えたので、そちらに近づいていったのですが……。
どう見てもエルヴィンとエルシーラ以外のエルフがそこにいました。
「えーっと……あなたたちは?」
「僕たちはエルヴィンとエルシーラの子供たちです!」
「えぇ!? あれから数日しか経ってないのに!?」
【ネオエルフ】の繁殖力ぅ……ですかね……。
それにしても、成長速度もすさまじいですね。
彼らはもう立派な少年です。
しかも全員超絶美形……。
まぁ、そこは元となった私が超絶美形なせいもあるかもしれませんが!
「ところで……そのエルヴィンとエルシーラはどこにいったのですか?」
もしかして、彼らの成長速度を考えると、おじいちゃんおばあちゃんになってしまっているのでは!?
それどころか、他界してしまっている可能性すらあります。
そうなっていたら悲しすぎます……。
「あ、エルキアさま! お久しぶりです!」
噂をすればなんとやらで……。
建物の中から、エルヴィンとエルシーラが現れました。
よかった……健在だったようです。
それにしても――。
「あれ? あなたたち、見た目がそのままですね……。歳をとらないのですか?」
彼らに関しては、以前と全く変わらない見た目をしていました。
17歳かそこらの若者のままです。
「我々の身体は、エルキアさまの生体情報をもとに創られていますからね。エルキアさま以上の歳にはならないんですよ。もちろん、不死でもあります」
「あ、そうなんですね……。それはよかったです」
彼らを失う悲しみは、経験しないで済みそうです。
まあもとより、彼らをなんとしても守り抜く覚悟ではありましたが。
「でもこれだと……家が足りなくなってくるんじゃないですか……? ていうか、今何人います?」
「えーっと、うちは10人になりますね」
【ネオエルフ】の繁殖力、恐ろしすぎます!
このままだとあっという間に国規模の集団に発展しますね。
「だとしたらやっぱり、居住区拡大が最重要ですね」
「え!? 神様が家を建ててくださるんですか!?」
「え……あなたたち、自分たちで建てるつもりだったんですか!?」
「ええ、そのつもりでしたが……」
「それだと追いつかないと思うので、私がやりますよ。すぐに出来ますしね」
「ありがとうございます! ありがとうございます! やっぱりエルキアさまは素晴らしい!」
まあ、私のスキルを使えば一瞬で済むことですし……。
わざわざ彼らに労働をさせる必要はないでしょう。
それに、リシアンさんとの約束のこともありますしね。
リシアンさんのルキアール王国では人口増加と食糧不足が大問題で、人が余っていると言っていました。
ルキアール王国の方々を受け入れるためにも、たくさんの住居は必要でしょう。
◇
さて、私はツリーハウスに戻ってきました。
ここからなら街を一望できますからね。
居住区の構想を立てるにしても、ここからのほうがやりやすいです。
「うーん、世界樹を中心に、円形に街を広げていきたいですねぇ……」
「どうしたんですか? ママ」
後ろから、ユシルが操作境界面を覗き込んできます。
操作境界面には、街の設計図が描かれていました。
「ははぁ、これは居住区の構想案ですね?」
「さすがユシルですね。理解が早い」
「何を悩んでいるんです?」
「それが……これほど街を広げるとなると、木を切り倒す必要が出てくるんですよね……。今までなら木の妖精にお願いして、退いてもらうだけでよかったんですが。これほどの広範囲ともなると、木と木の間が狭くなりすぎてしまいます……」
出来ることなら、なるべく木は切り倒したくないんですよね。
世界樹が切り倒されたことは、まだ許せないですし……。
私自身も、どんな木であろうと、大事にしたいです。
日に数本ならば森のバランスは保たれますが、大量伐採となると……。
それに、ユシルの目の前で木を切るというのもなんだか……申し訳なくなってしまいます。
「ママ……とっても優しいんですね! 分かりました! 私がなんとかします!」
「え、ユシル!? なんとかって、なんとかできるんですか!?」
「木の妖精さんにお願いしてみます。場所を移動してもらうのではなく、世界樹――私に取り込まれてもいいかどうか、聞いてみますね」
「なるほど、そんな手が……!」
切り倒すのではなく、ユシル――世界樹の一部として取り込むのであれば、木の妖精を傷つける心配はありません。
世界樹の補強、成長にもつながりますし、最高の解決策ですね。
◇
よし、これで準備は整いました。
ユシルのおかげで、木を一本も切り倒すことなく、開けた土地が手に入りましたよ!
「ありがとうございます、ユシル!」
「えへへ……ママに褒められました!」
次は実際に家を建てていきましょうか。
以前みたいに、私が下に降りて一軒ずつ建てていては時間がかかります。
今回は一つの国規模の住居をいっぺんに建てる必要がありますからね。
「建築カタログ・オープン! 一斉建築モード!」
操作境界面で建てる敷地を範囲指定して、いっぺんに建ててしまいましょう。
建てる建物のデザインは、カタログの中からランダムに数種類が選出されるようにプログラミングしておきます。
これで、自然な街並みが生成されるでしょう。
「ママ、建材はどうするんですか?」
ユシルが心配そうな顔で訊いてきます。
やはり、木を建材にするのは避けたいですね……。
「大丈夫ですよユシル。【無限キノコ】を使います」
「えぇ!? キノコを!? そんな家、大丈夫なんですか?」
「もちろん、そのままは使いませんよ。素材変換機!」
私が唱えると、操作境界面上に素材変換機のソフトウェアが開きます。
これは、あらゆる素材を――まあ特殊な条件だとか、制限などがあったりはしますが――別の素材に変換してしまえる魔法なんですよね。
「これに、【無限キノコ】を木材に変換するように命令します。これを見越して、今までに何箱か【無限キノコ】を蓄えておきましたからね。これで、資材には困りません」
「すごいです! さすがママ!」
「さあて、これで……。範囲指定内に、建築カタログ・クリエイト! さあ、街がどんどんできますよ。ベランダに出て見てみましょう」
私とユシルは急いでベランダに出ます。
地面を見ると、次々と建物が出来上がっていきます。
さすがにこれほど大量の同時建築ともなると、一瞬でというわけにはいきません。
「うわぁ! ニョキニョキ生えてますね……」
「えぇ、まるで植物みたいです」
しばらくそうして、私たちは建物のニョキニョキに目を奪われていました。
「ママ! あれはなんですか!?」
突然、ユシルが何かに気づき、指をさして知らせます。
あれは――。
「大変! ゴブリンです! 【ネオエルフ】の皆さんに知らせなくては!」
なんと、ゴブリンの大群が、森の奥からこちらへ向かってくるではありませんか――!
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