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第84話 サリナ
しおりを挟むゲームにうつつを抜かしていた俺だったが、ようやくマイブームも過ぎ去った。
いまだにまあ、配信とかはちょっとはやってるけどな。
それも趣味みたいなもんだ。
あ、ちなみにプレデターウェアとの提携はさらにうまくいっていて、
俺をモチーフにしたゲーミングPCが発売されたりした。
おもちモチーフのゲーミングPCもあって、PCケースの側面にはおもちのイラストがプリントされている。
もちろん、だいふく、いなり、よもぎのバージョンもある。
どれもそれなりの売れ行きだったようだ。
そんなふうに日々を過ごしていた俺に、また連絡があった。
今度はサリナさんからだった。
【ハヤテくん、最近どうしてる? 会いたいな】
俺も、ちょうどサリナさんとはしばらく会っていなかったので、会いたいと思った。
俺はサリナさんを食事に誘うことにした。
トラオのときとは違って、今度は少し奮発して、いいお店を予約した。
個室のお店だから、変装もしなくていい。
俺は待ち合わせの時間に、転移で直接店へ。
「サリナさん、久しぶり」
「ハヤテくん、久しぶり」
なんだかこうやって改まって話すと、恥ずかしいな。
俺たちは食事をしながら、談笑を楽しんだ。
しばらく料理を食べたあと、俺たちは雰囲気のいいバーに移動する。
バーでお酒を飲みながら、二人で話す。
「ずっと異世界にいってたんだね」
「まあ、そうだな」
「いろいろ、大変だったってね」
「うーん、まあね」
「最近、カレンちゃんとひかるんと、ゲームやってるよね。楽しそうだね……」
「ああ、まあな」
「ずっと、私に連絡してこなかったじゃん……。さみしかったな……」
「ごめん……」
なんか、サリナさん酔ってるのかな……?
普段、こんなこと言ってこないと思うんだけど……。
「かえってきたら、一言くらい欲しかったな。さみしかったんだよ……?」
「ごめん……俺から連絡していいものかと思って……」
別にサリナさんを避けていたわけじゃない。
ただ、過度に俺から親しくしすぎるのも、なんだか変な感じがしただけだ。
俺もかなりの有名人になってしまったし、俺と関わると、少なからず迷惑をかけてしまう。
とくに、サリナさんもさりーにゃとしてそこそこ名が知れている。
俺は、有名になりすぎた。
それに、俺は勘違いした痛いおっさんにはなりたくなかった。
あくまでサリナさんは俺のことを友達だと思っているだけだし……。
「私、そんなに魅力ないかな……?」
「え……? いや、そんなこと……」
「けっこう、前からわかりやすくアピールしてたつもりなんだけどな」
「ご、ごめん……俺、そういうの疎くて」
え、なにこれ……俺もしかしてサリナさんに口説かれているのか……!?
いや、まあ確かに、サリナさんは俺に対して積極的だとは思ってたけど……。
だけど、俺はこの歳まで恋愛経験がない。
どうしたらいいものかと、わからずにいた。
「私ね、気づいたの。しばらく、ハヤテくんと離れてみて、あーやっぱり、本気で好きなんだなって。異世界に行ってる間、さみしくて、心配で……。ひかるんにもたくさん嫉妬した。あーなんで、私があそこにいないんだろうって」
「そう……だったんだ……」
「それでね、今日誘ったのは、ちゃんと気持ちを伝えたかったからなの。ハヤテくん、一気に有名人になっちゃって……。それで、連絡もなかったし、このままハヤテくんがどこか遠くに行っちゃう気がしたの。きっと、有名人になって、もっと魅力的な人がたくさん集まってくるだろうし……。だから、このタイミングしかないと思ったの」
「サリナさん……」
なんだか、バーのイイ感じの雰囲気も相まって、俺も、ドキドキした気持ちになっている。
サリナさんは俺のことを潤んだ目で見つめる。
「サリナって呼んで?」
「さ、サリナ……」
「ねえ、ハヤテくん。このあと、まだ時間……あるよね……?」
サリナは、俺の服の袖をちょん、とひっぱった。
そして上目づかいで、俺にきいてくる。
顔が近くて、吐息が触れる。
少し、お酒の匂いがした。
ああ……これ、本気で落としにきてるな……!?
「う、うん……」
俺はどぎまぎしながら、頷いた。
俺たちはバーを出て、しばらく夜の道を歩く。
行く先もわからずに、なんとなく、サリナと同じ方向に歩いていく。
お互いに、無言のままだった。
気が付くと、俺たちは高級なホテル街にいた。
薄暗い道路に、ピンクの証明がうるさい。
「じゃ、じゃあ……いこっか……」
「う、うん……」
サリナは、俺の手を繋いできた。
そして、俺は流されるまま、ホテルの中へ――。
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