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第76話 もっとひどい目に合わせようぜ
しおりを挟むひかるんの母は、警察に捕まった。
そしてこれから裁判にかけられ、罪状がいいわたされることになる。
ひかるんの母の罪状は、懲役15年だった。
だが、この判決に、ネット上は荒れた。
普通の殺人未遂であれば、妥当な刑期だが、ひかるんの母が刺したのは世界の英雄でもある辻ヒーラーおじさんだ。
ネット上の辻おじファンたちは、ひかるんの母にもっとひどい罪を与えろと、怒り狂った。
◇
822: 名無しのダンチューバー
おいこんなんおかしいだろ
なんで死刑じゃねんだよ
823: 名無しのダンチューバー
クソババア、死ねよ
824: 名無しのダンチューバー
死ぬべきだろ
ダンジョンに置き去りにしろ
825: 名無しのダンチューバー
こんなんじゃ許せないよ
ひかるんのために死んでくれ
826: 名無しのダンチューバー
ひかるん傷つけて
辻おじ刺して
死刑じゃないなんて
827: 名無しのダンチューバー
死刑じゃすまされない
もっとひどい目に合わせようぜ
828: 名無しのダンチューバー
これもう私刑するしかねえぜ
829: 名無しのダンチューバー
警察に任せてられねえ
830: 名無しのダンチューバー
よし、俺に任せろ
831: 名無しのダンチューバー
ひかるんの母攫ってダンジョンに置き去りにしてくるわw
832: 名無しのダンチューバー
おいマジかよw
さすがにその書き込みはやばいだろ……
833: 名無しのダンチューバー
いや、俺マジでやるから
834: 名無しのダンチューバー
捕まるぞ
835: 名無しのダンチューバー
俺はひかるんのためにババアを殺すぜ
◇
最後にそう書き込んだのは、滝川アソレこと、関口俊太郎だった。
彼はあれからも、ひかるんの熱心なファンであり続けた。
今回のこと、ひかるんの母がひかるんにしたこと、関口はそれがどうしても許せなかった。
「ひかるんは僕が守るんだ……! あのババアを裁くのは僕にしかできない……! 待っててねひかるん!」
関口は、裁判所まで車を飛ばした。
裁判所から、ひかるんの母が、連行されるそのとき。
一瞬の隙を、関口は狙った。
連行する警察たちに、攻撃魔法を飛ばす。
そして一瞬のうちに、ひかるんの母を攫い、自分の車に乗せたのだ。
「な、なんなのあなたは……!?」
「僕はひかるんのファンだ。ひかるんの代わりに、あんたを殺す……!」
「ひぃ……!? あ、頭がおかしいわ……」
関口は、車を飛ばしてダンジョンにやってきた。
そして、ダンジョンをどんどんと進んでいく。
ダンジョンの下層について、関口はひかるん母の手をようやく放した。
「じゃあな、二度とこっから戻ってくるな。ひかるんのために、死んでくれ」
「な、なにをいっているの。バカなことはやめて……!」
「うるさい! 馬鹿はお前だろ! ひかるんを傷つけやがって! 許せない……!」
関口は、ダンジョンにぽっかりと開いた穴に、ひかるんの母を突き落とした。
「きゃああああああああああああ!!!!」
「はっはっは、ざまぁみろ! 地獄で後悔するんだな!」
そのときだった。
関口を追いかけてきた警官隊に、関口は後ろから羽交い絞めにされる。
「拘束しろ……!」
「ふん……僕の目的はもう達成した。もう遅い!」
◇
その日の夕方、ニュースが流れた。
「滝川アソレこと、関口俊太郎容疑者が、殺害容疑で逮捕されました。関口容疑者は、人気ダンチューバーひかるんの母親、錦木野楓さんをダンジョンの奥地に連れ出し、突き落したとの罪でつかまっています。関口容疑者は、これがひかるんのためだとかなんだとか、わけのわからない供述を繰り返しており……」
◇
121: 名無しのダンチューバー
おいニュース観たか?
122: 名無しのダンチューバー
あれ滝川アソレだったのかよw
123: 名無しのダンチューバー
あいつマジでやりやがったのか……
124: 名無しのダンチューバー
アホだな
125: 名無しのダンチューバー
でもナイス
正直せいせいした
126: 名無しのダンチューバー
わかる
ひかるんの母とか死ねばいいしな
127: 名無しのダンチューバー
ちゃんと死んでくれてラッキーだわ
128: 名無しのダンチューバー
おいお前ら、不謹慎だぞ
さすがにないわ
129: 名無しのダンチューバー
は?あんなババア死んで当然だろ
130: 名無しのダンチューバー
ついでにアソレもつかまってくれてラッキーだわw
あいつ嫌いw
131: 名無しのダンチューバー
どっちも地獄に落ちろ
◇
「きゃあああああああああああああ……!!!!」
ひかるんの母、楓は、ダンジョンの大穴を真っ逆さまに落ちていった。
そして、ぽよん、なにかにぶち当たり、地面に倒れる。
ぶつかったのは、大きなスライムの身体だった。
スライムのおかげで、なんとか一命は採り遂げたのだ。
「な、なんとかなったわ……ここはどこ……? くそ、なんてこと……! 最悪な目にあったわ……。それもこれも、全部あの子のせいよ。もとはといえば、こんな忌々しいダンジョンなんかが世界に出来たせいよ」
そのときだった。
スライムの後ろから、巨大な熊のモンスター、ブラッディベアが顔を出した。
お腹を空かせたベアは、楓にとびかかった。
「きゃあ……!?」
「ぐるああああああ!!!!」
「いやああああああああ!!!!」
ベアは楓の腹を一気に引き裂いた。
そして、生きたまま肉を喰らい始める。
「いやあああああ! 痛い痛い! やめてええええええええ!!!!」
ダンジョンに、断末魔の悲鳴がこだまする。
「いやよ! 絶対嫌! こんな獣に食われて死ぬのなんて、嫌ああああああああ!!!!」
そして、楓の意識はゆっくりと、痛みの中で途絶えていった。
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