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第62話 薬草採取のクエスト
しおりを挟む冒険者登録を済ませた俺たちは、さっそくクエストを受けることにした。
まずは俺たちの冒険者ランクはFランクからということらしい。
俺たちの世界でも、ダンジョン探索者にはFからSのランクがつけられていたな。
向こうではAランク探索者のひかるんも、こっちではFランクからのやり直しというわけだ。
だが心配しなくても、クエストをクリアすればすぐにランクはあがっていくのだそうだ。
ランクの上げやすさと、報酬金から考えて、俺たちはクエストを選んだ。
俺たちが選んだのは、薬草採取のクエストだった。
薬草か、RPGぽいというか、いかにもファンタジーな世界のアイテムって感じだ。
ちなみにだが、ダンジョンにも薬草は存在する。
現代人は薬草からポーションを作り出したりして、いちおう、こっちでもそういうファンタジーなアイテムは存在する。
まあ、たぶんこっちの世界のポーションの作り方とは少し違うんだろうが……。
俺たちの世界では、ポーションは科学的な製品や機械を作って作り出す。
まあ、詳しいことは知らないが……。
だが、おそらくこっちの世界ではポーションは薬草を煮たりして作るものだろう。
どっちのポーションのほうが効果が高いかは知らないが、まあ、その辺も気になるところだな。
ちなみに、今回のクエストで採ってくる必要があるのは、普通の薬草ではない。
今回目標となるのは、超級薬草というアイテムだ。
ダンジョンでは、深層でさえも上級薬草までしか生えてなかった。
だから、その上の超級薬草ともなると、完全に未知のアイテムだ。
俺たちはダンジョンを通ってきているから、上級薬草とかなら持ち合わせがあるんだけどな……。
なぜ超級薬草なんていう伝説級のアイテムのクエストが、Fランクでも受けれるか。
それは、危険性が少ないからだそうだ。
超級薬草は、その数は少なく、見つけることは非常に困難だが、一応、そこらの森の中に普通に生えているのだそうだ。
なので、運さえよければFランク冒険者でも手に入れることが可能らしい。
だが、その確率は極めて低い。
宝くじを買うようなものらしい。
駆け出しのFランク冒険者が、このクエストを一攫千金狙いで受けて、クエストに失敗し、違約金で痛い目にあうというのがお決まりだそうだ。
だが、なぜそんな無謀なクエストを俺たちが受けたのか。
俺たちには、勝算があった。
「ひかるん、いけそうか?」
「たぶん……こっちのほうです」
俺たちは、近隣の森にやってきていた。
そして、ひかるんの案内に従って、進んでいく。
ひかるんの話によると、過去に、ひかるんは一度だけ、ダンジョンの中で超級薬草のようなものを手にしたことがあるらしい。
「そのときは、超級薬草とは思わなかったんですが……。それを使うと、一気に傷が回復したんです。あれはたぶん、超級薬草だったんだと思います。見たのは、そのとき一回だけだったんですけど……」
ひかるんは、そのときに、超級薬草の臭いをかいで、覚えているらしい。
そんな嘘みたいな話があるのかと思ったが、どうやら本当らしい。
そして、おそらくだが、近くにいけば、その匂いで超級薬草の生えている場所がわかるというのだ。
ひかるんの嗅覚、恐るべし……。
やはり、そこは獣人としての能力なのだろうか。
ひかるんは進化すると、臭いをたどって、森の中へと入っていった。
俺は、それについていく。
途中でモンスターに何度か出くわしたが、危なげなく倒していく。
どうやらこの森のモンスターじたいはさほど強くはないようだ。
しばらく歩いて、
「たぶん、ここです……!」
「よし!」
ひかるんの言う場所を調べると、
なんとそこには、本当に超級薬草とおもわしき植物が生えていた。
「すごい!すごいぞひかるん!」
「やりましたね、ハヤテさん!」
ひかるんのこの獣人ムーブにコメント欄が盛り上がる。
『ひかるんすげえwwwwwwww』
『犬で草』
『マジでひかるん獣出てるwwww』
『ナイスwww』
『さすがはケモミミ』
俺たちはさっそくそれをポケットにしまう。
すると、なにやらだいふくが、超級薬草の臭いをかぎだした。
そして、だいふくがあらぬ方向へと走り出す。
「あ。おい、だいふく! どこへいくんだ!」
だいふくがこんな行動をとるのははじめてだった。
いつもはリードつけなくても、いい子にしてるのに。
俺たちはだいふくを追いかける。
すると、だいふくが立ち止まり、なにやらクンカクンカしている。
そこをみると、なんとそこには、またもや超級薬草が生えているではないか!
「おお!? だいふく、お前もみつけたのか……!?」
「がるる」
すると、だいふくはドヤ顔でやったぜみたいな感じでこちらを見てくる。
まさか、ひかるんに対抗意識を燃やしてやったのか?
でも、ナイスだ。
クエストの内容は、超級薬草1個の納品だが、まあ余分にあって困るものでもないだろう。
俺はだいふくをよしよしと撫でる。
「すごいぞ、だいふく!」
「がう♪」
『だいふくひかるん意識してて草』
『はりあってて可愛いwwww』
『だいふくもすごいな』
二つ目の超級薬草をポケットにしまい、俺たちは帰路につく。
帰りはおっきくなったよもぎの背中にのせてもらって、ひとっとびだ。
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