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第46話 深層へ8
しおりを挟むとりあえず玄関で長話もなんなので、ひかるんの家にお邪魔することにした。
ひかるんはハーブティーを出してくれた。
「俺も行く。ひかるんが深層に行くっていうんなら、俺がいっていざというときは治療する」
「ハヤテさん……どうしてそこまで……」
「心配だからだ。決まってるだろ」
「やさしいですね」
「ていうかそもそも、なんでそこまでして深層踏破なんて言い出したんだ? 深層の攻略なんて、高校生のひかるんがやらなくても、攻略組がそのうちやるだろ。配信でもなんでもみればいい」
俺がそういうが、ひかるんは暗い顔をする。
どうやら別に深層が見たいとかってわけじゃないらしい。
「それじゃ意味ないんです。時間がたりない……。できれば、20歳までには深層に到達しないといけない……」
「どういうことだ……?」
話がいっこうに見えなかった。
ひかるんが深層にこだわるのは、単純な興味ではなく、なにか特別な理由がありそうだ。
「亜人症の子供の寿命って、20歳なんです」
「え…………」
俺は、血の気が引いていくような感じがした。
そんな……つまり、ひかるんは20歳までしか生きられないということか……?
目の前の、少し困ったところのある、お転婆で、可憐で活発な、この少女が。
それは、どれほどの思いだろうか。
それなのに、親にあんな扱いを受けて……。
「深層に行けば、ダンジョンをクリアすれば亜人症についてなにかわかる気がするんです。私の出自について。それがわかれば、治療法もわかるかもしれない。だから、私は深層を目指さないといけないんです」
ひかるんの必死の思いをきいて、俺はようやく納得した。
そうか、ひかるんは自分の命のために、亜人症の謎を解明するために、深層を目指そうというのだ。
「わかった……。そういうことか。なら、なおさら俺も行く。俺も、ひかるんの力になりたい。俺が、絶対にひかるんを死なせない」
「もう……ハヤテさん、これを言えば絶対にそう言うと思ってたから、言えなかったんですよ。やさしすぎます」
「あたりまえだろ。ひかるんを死なせてたまるか。もっと早く行ってくれ」
「もう、全部ハヤテさんにバレちゃいましたね……。耳のことも、もっと隠しておくつもりだったんですけど……」
「まあ、もう今更だな。一蓮托生。俺にまかせておけ」
20歳の寿命、それは高校生が背負うには、あまりにも辛い物語だ。
それを克服するために、グレートオーガにも立ち向かうなんて、なんだか泣けてくる。
俺がひかるんの歳に、そんな覚悟の決まったことできただろうか。
そう考えると、この子はすごいな……となんだか親心のようなものまで芽生えてくる。
俺が、絶対に死なせはしない。
俺がひかるんを絶対に、救ってみせる……!
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