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第33話 ようし、じゃあゴブリンに攻撃……!
しおりを挟む昨日、俺たちはダンジョンでイレギュラーに襲われた。
しかし、おもちとだいふくが巨大に進化したおかげで、難無きを得た。
でもさすがに、あれは気になるよなぁ。
いったいなにがどうなって、あんなことになったんだ?
ということで、俺はまたあの大学の教授を頼ることにした。
モンスターを専門に研究している、慶翠大学。
そこの美寄透音教授、この前もおもちとだいふくの体調の相談にのってくれた先生だ。
俺は美寄教授のもとを訪ねた。
「――ということがあったんです。どういうことなんですかね……?」
すると教授は、ある仮説を提唱した。
「これはあくまで私の仮説なんですが……。おそらく、辻風さんと二匹の間に、特別な力が働いているのでしょう。仮に、この状態を『テイム』と名付けます」
「はい……」
「テイム状態にある辻風さんは、おそらく二匹から魔力をもらっています。テイムしているモンスターの魔力を、一部借り受けているような感じでしょうか。お互いの魔力の境界が、薄くなっているのです」
「なるほど……?」
「ですから、辻風さんの魔力は、今常人離れしたまでに増大しているのだと思います。そのおかげで、強力な回復魔法がつかえたのでしょう」
つまり、俺は二匹から魔力をもらっているってことなのか?
俺が二匹をテイムすることで、俺の魔力が増大している?
そのおかげで、カレンを救うことができたのか。
教授は、少し待ってくれというと、奥からなにか装置を持ってきた。
そして、装置に手を置くように言う。
「これは、魔力を測るための装置です。辻風さんの魔力を一度はからせてもらってもいいですか?」
「もちろんです」
「では……」
俺は魔力を装置によってはかられた。
そして、数値がそこに表示される。
「これは……!」
「どうしましたか?」
「やはり、私の仮説は正しかったようです。辻風さんの魔力は、普通の人間が到達できるそれをはるかに超えています……。おそらく、魔物に近いほどの魔力です……」
魔物は、人間の数億倍の魔力をもっているという。
これで、さっきの仮説はほぼ正しかったと証明されたわけだ。
「じゃあ、二匹のおかげで俺の魔力が……」
「そういうことですね。そして、力をもらっているのは、どうやら辻風さんだけじゃないようです」
「というと……?」
「二匹が進化できたのは、おそらく辻風さんのおかげです。二匹もまた、辻風さんにテイムされることで、そのパワーを増しているのです。二匹が進化できたのは、おそらく辻風さんの生命エネルギーのようなものをつかったおかげかと……」
「なるほど……」
じゃあ、お互いにテイムすることで、強くなれるってわけか……。
「このようにモンスターと心をかよわせ、テイムしている人というのは、全世界でみても稀なケースです。なので、まだまだわからないことだらけですが……。おそらくはそういうことかと。辻風さん、私の研究にこれからも力を貸してください!」
「ええ、こちらこそ。先生にはまた助言を頼むことになりそうです……」
◆
この力は、使いこなせれば、さらに強くなれそうだ。
もし今後、またイレギュラーに襲われるかもしれない。
そうなったとき、身を守るためにも、この進化の力はコントロールする必要があるな。
また、ダンジョンに潜っていろいろとやってみよう。
ということで、俺はまたダンジョンへやってきた。
そして、いろいろと試してみようということになったのだ。
ついでだから、配信カメラもオンにしてみる。
「ようし、今日は実験をしてみよう」
上層で、弱いモンスター相手に試してみる。
「よし、二匹とも、進化だ……!」
すると、おもちもだいふくも、俺の言っている意味がわかるのだろうか。
二匹とも、昨日のように、大きくなった。
だいふくは大狼に、そしておもちは、狼型のスライムに。
「おお……! すごい……! ちゃんと進化できた……!」
もしかして、ピンチのときだけしか進化できないとかってことかと思ったが、杞憂だったようだ。
二匹はちゃんと、俺の言う通り進化してくれた。
「ようし、じゃあゴブリンに攻撃……!」
俺は二匹に命令を出す。
すると、
「がうがう!」「きゅいー!」
二匹はあっというまに、危なげなく、ゴブリンを蹴散らした。
「おおすごい! 強いぞ……!」
これだけ強ければ、上層だけじゃなく、もっと奥にも進めるかもしれないな。
上層でしか戦えなかったこの俺が、もっと奥にいけるかもしれない……!
だが、二匹に守ってもらってるだけじゃだめだ。
もしものときに、二匹を守れるようにならないと。
俺も、もっと強くならないとな……。
ということで、俺は魔法を練習することにした。
今までろくに攻撃魔法は勉強してこなかった。
回復魔法は得意だったんだけどな……。
ためにし、俺は攻撃魔法を唱えてみる。
今までにも、やってみたことはあった。
しかし、どうもうまくいかなかった。
だが、二匹をテイムして、魔力が大幅に増えた今の俺なら……?
もしかしたら、魔力の量だけじゃなく、質まで変わっているかもしれない。
俺にも攻撃魔法の適性が加わっているかもしれない。
ものはためしだ。
俺は攻撃魔法を唱えた。
「えい……! 火炎――!!!!」
すると――。
――ゴうううウウウウ……!!!!!
手からものすごい威力の火炎が出た。
そして火炎は、遠くのほうにいたゴブリンの集団を一瞬で焼き尽くす……。
「まじか……すげぇ…………」
思った以上の威力に、驚いてしまう。
ただの下級魔法なのに、上級魔法並みの威力だ。
そりゃあそうか。
それほどまでに、今の俺の魔力がすさまじいってことだ。
モンスターを二匹テイムしたことで、今の俺は常人離れした魔力をもっている。
つまり、理論上はSランクの探索者よりもすごい魔法が打てるってわけだ。
「はは……! これは、おもしろくなってきた……!」
『おっさんすげええええ……!!!!』
『やべえ威力』
『Sランク探索者よりももはや強いだろこれ……』
『これなら下層もいけるな……!』
『今のがただの火炎ってマジ……!?』
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