28 / 86
第28話 まあ、今回はなんとかなったけどよ
しおりを挟む例の炎上の件についてだが……。
滝川アソレ=例のキモイコメントの男だということが某ハッカーによって暴露され、一気に沈静化することとなった。
滝川アソレのもとには誹謗中傷のコメントが大量に届いて、滝川アソレ信者でさえも愛想をつかしたようだった。
これまであくまで社会的な制裁を加える、正義の味方として活動してきた滝川アソレが、今回は私怨でひかるんを炎上させようとしたのだ。
しかも自作自演のコメントまでして。
当然、その火の粉はアソレ自身に降りかかる。
アソレは誹謗中傷のコメントに耐え兼ねたのか、自分が炎上することには耐えれなかったのか、そのアカウントを消して敗走した。
それによって、みんなこの話題からは手を引いたようだった。
事件がひと段落して、俺のもとにはファンからのあたたかいコメントが多数届いた。
『みんなおじさんのこと信用してます!』
『おじさん今回のことは気にするな!』
『ひかるんの厄介ファンが暴走しただけだからな』
『これからも応援しています!』
『アソレに目をつけられたのは気の毒でしたね』
『気にしないでくださいね!』
『おじさんはなにも悪くないですからね!』
一方で、ひかるんのほうのリプライ欄にも、あたたかいコメントが見られた。
『ひかるんはなにも悪くないよ!』
『ただお礼したかっただけだもんね』
『お礼できてよかったね!』
『今回のはアソレがアホなだけ』
『アソレが自作自演して自爆しただけだったな』
『一部のキモイガチ勢は黙れよ?』
『本当にひかるんのこと思うならいちいちこんなことで発狂するのはファン失格』
『これからも応援してるからね!』
まあ、ひかるんの方はまだガチ恋勢がいろいろ言ってそうだけど……。
ということで、俺は対策を考えた。
ユウジにも言われていたのだ。
事が済んでから、ユウジからまた電話がかかってきた――。
「まあ、今回はなんとかなったけどよ。気をつけろよ?」
「なにをだ……?」
「ひかるんのガチ恋勢たちにだよ。あいつら、すぐに騒ぐからな。お前にその気がなくても、ひかるんと関わるのはおすすめしない。また炎上させられかねないぞ」
「あーたしかにまあ……そうだな……俺も迂闊だった」
だが、そうはいってもな。
ひかるんのほうは俺にお礼したいといってきたり、向こうは交流したがってくれているんだ。
コラボしようともいわれている。
それをこちらから遠ざけたり、冷たくするのも違うよな。
「でもなぁ。だからといって、ひかるんを無視しろってのか?」
「いや、そうじゃないけど……。とにかく、身の振り方には気を付けねえと。ダンチューバーのファンっていろいろ厄介なのもいるからな」
「まあ、たしかに……」
今回の件で、俺にじゃなくてひかるんに発狂していた女性ファンもいるらしい。
辻ヒールおじさんとデートするのは許せない!とかっていっている俺の女性ファンが何人かいたのだとか……。
いったいこんなおじさんのどこに需要があるのかはわからないが……。
とにかく、ダンチューバーとしてやっていくというのは、そういったファンからの目線も気にしないといけないってことだ。
これまでみたいに、好き勝手にコラボしたりできる身分じゃないってことだ。
人気者ってのはそういうことらしい。
「まあ、有名税っていう奴だな。異性のダンチューバーとのコラボは、特に気を付けたほうがいい」
「ああ、まあ覚えておく」
「今のうちに、なにか手をうったほうがいいぜ? また炎上したら、今度はどうなるかわからねえからな」
「ああ、そうだな……」
俺は電話を切った。
俺は、考えた。
なにか身を守る手段を……と。
そこで、思いついたのだった――。
「よし……! カレンとコラボしよう……!」
「で……なんで私が呼ばれたんですか……?」
俺は後輩でダンチューバーの駆動区カレンを呼び出した。
「ひかるんとばかり絡むと、また妙な噂をたてられかねない。だが、ひかるん以上に仲良くしている異性のダンチューバーがいれば……? カレンとあらかじめ絡んでおいたら、ガチ恋勢たちからのヘイトも薄まるんじゃないかと思ってな」
「なるほど……ようは私が隠れ蓑ってことですか。まあ、いいですけどね……。先輩にはお世話になってますし。それに、先輩といっしょにいられるのは……その……うれしいですしね……」
カレンはなぜだかもじもじと赤くなる。
「でも、いいんですか? 今度は私との噂を立てられますよ……?」
と、カレンがきいてくる。
「は……? なんでだ……?」
「え……だって、私だって一応女のダンチューバーなんですよ!? それに、私にだってガチ恋してる人くらいいるんですからね!」
「あーまあ……そうか? でもなあ、俺たちは元職場の同僚だろ? それに、元々友達なんだし。大丈夫だろ。俺たちに異性の仲とかないって」
「……むー。はいはい、そうですね。先輩とはそういう仲にはなりませんよね」
「ああ、そうだろ?」
なんだかカレンは怒っているような気がするけど、なんでだろう……?
まあ、いいか。
これからは前以上に積極的にカレンとコラボしていこう。
カレンと一番仲良くしてさえおけば、ひかるんとの妙な噂も立てられずにすむだろう。
65
お気に入りに追加
2,640
あなたにおすすめの小説

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜
むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。
そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。
それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……?
のんびりほのぼのとした現代スローライフです。
他サイトにも掲載中。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う
ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。
そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。
だけどその条件がなかなか厄介だった。
何故ならその条件というのが────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる