辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

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第18話 あはは……お邪魔してますー

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 そんな感じで、しばらく雑談をつづけた。
 我ながら、初配信のわりにかなりいい感じに話せたのではないかと思う。
 いつのまにやら、同時接続人数が5000人を超えていた。
 スパチャの合計額も、かなりすごそうだ。
 あまりにもスパチャをもらってしまって、もうしわけないような……。
 ここはなにかお礼をしたいところだ。
 視聴者サービスってやつだな。

「みなさん、本当にありがとうございます。ここで、ちょっとお礼も兼ねて、だいふくのご飯の時間なので、ごはんをあげる配信をしたいと思います」

 俺はビーフジャーキーを手にとった。

『おお! 来ました!』
『wktk』
『生だいふく!』
『いいねぇ!』
『サービスありがたい!』

 やはり視聴者はみんな、おもちとだいふくを目当てにやってきてくれているからな。
 俺が雑談ばかりしているよりも、おもちとだいふくを映したほうが喜ばれるだろう。
 俺はビーフジャーキーとボールを手に持った。
 実はこういうときのために、だいふくにはちょっとした芸を仕込んであるのだ。

「よしだいふく、これができたら、ビーフジャーキー食べれるからな」
「がうがう♪」

 俺はボールを手に持って、部屋の隅に向かって放り投げた。

「それ! とってこい!」
「がうがう!」

 だいふくはボールめがけて一直線。
 ボールをくわえて、すぐに俺のもとへ戻ってきた。
 俺はだいふくからボールを受け取り、頭をわしわしと撫でてやる。

「ようし、偉いぞだいふく!」

 コメント欄も盛り上がる。

『おお! さすがはだいふく!』
『かしこい!』
『えらい!』
『うちの馬鹿犬より賢い』
『はえーすっごい』
『ちゃんとしつけられてるな』
『ご褒美ご褒美!』

 俺はだいふくに、ビーフジャーキーを渡してやる。

「えらいぞー。ご褒美にこれ食べていいからな!」
「がうがうー♪」

『だいふくはおいしそうにたべるなぁ』
『かわいい』

 そうこうしているうちに、あっというまに配信開始から1時間が経とうとしていた。
 そろそろ切り上げるか、と思ったときだった。
 ふとコメント欄を見て、俺は驚いた。

『だいふくちゃんかわいい!』

 その何気ないコメント。
 そのコメントのアカウント名は――。

「ひかるん……!?」

 そう、俺が以前助けたという、あの有名配信者のひかるんが、俺の配信にコメントしてきたのである。
 突然のひかるんの登場に、コメント欄もざわつき始める。

『ひかるん……!?』
『まって、これ本物!?』
『これ本物だ!』
『ひかるん降臨キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
『ひかるんこれでおじさんにお礼言えるな』
『ひかるんとのコラボくるか!?』
『初接近!』
『盛り上がってまいりました!』

 まじか……このひかるん本物なのか……。
 ひかるんと言えば、俺が偶然イレギュラーから助けてしまった有名アイドルダンチューバーだ。
 そのせいで、俺はこうしてバズりちらかしているんだけど……。
 そのひかるんが俺のコメント欄なんかに現れて、いったいなんのようなのだろうか。

『ひかる:あはは……お邪魔してますー』

 コメント欄の反応に、ひかるんはそんな反応を返す。
 さすがにひかるんの影響力すごいな。
 一瞬でコメント欄がひかるん色だ。

『うおおおお! マジでひかるんだ!』
『神降臨!』
『ひかるんが他人の配信にコメするとかめちゃくちゃ珍しくないか?』
『だよな。あのひかるんが……』
『しかも男と絡むとか、ひかるんのファン発狂しそう』

 どうやらコメント欄の感じからしても、ひかるんがこうして他人の配信に現れたりするのはレアなようだ。
 しかも、ひかるんはアイドル性で売っているから、男性ダンチューバーともめったに絡まない。
 そんなひかるんが、わざわざ俺の配信に……。

『ひかる:あの、どうしてもお礼言いたくて。この前は、ありがとうございました』

 律儀な子だなぁ。
 俺は別にそんなに助けたつもりもないんだけどな……。

「いえいえ、あれくらい。気にしないでください。いつもやってることですから」

 ヒールなんて減るもんでもないし、俺は気が向いたときにはいつも辻ヒールしていた。
 それがたまたま、今回はひかるんだったってだけのことだ。
 俺は普通にそう答えただけなのだが、なぜかコメント欄がまた盛り上がり始める。

『かっけえw』
『さすがは辻おじ』
『いつもやってるところがすごいんだよなぁ』
『ぐう聖人』
『謙虚だなぁ』
『普通はあそこまで他人にヒールできないw』
『だよなぁ魔力切れとか気にするよなぁ』

 魔力切れか……そういえば気にしたことなかったな。
 俺は上層で雑魚モンスターと戯れているだけだし、そもそもそこまで魔力を使わないからなぁ。
 だから傷ついている人がいたら、気兼ねなく辻ヒールをしていたのだ。

『ひかる:とにかく、どうしてもそれだけ言いたかったんです。ありがとうございました。本当に。では、あまり長くお邪魔してもアレなので……。配信たのしかったです!がんばってください!』

 ひかるんはそれだけ残して、配信から去っていった。
 ほんとうにいい子だったなぁ。
 コメント欄も、ひかるんのことを名残惜しそうに見送る。
 ひかるんも去ったことだし、そろそろ俺も本当に配信を切り上げるかな。

「えーっとじゃあ、そろそろ配信を終わります。見てくださってありがとうございました。またよろしくお願いします」

『おつー!』
『楽しかった! ありがとう!』
『またやってね!』
『スパチャもっと投げさせろ!』
『ひかるんも見れたし、神配信だったな』
『次の動画も楽しみにしてる!』

 あたたかいコメント欄に見送られながら、俺は配信終了のボタンを押した。
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