16 / 86
第16話 ふーん、じゃあ、私が狙っちゃおうかな?
しおりを挟む案件動画を撮った翌日、俺は天音サリナさんと会う約束をしていた。
天音サリナさん、以前ヨドバシカメラにダンカメを買いに行った帰りに、知り合った女性だ。
サリナさんも犬を飼っていて、それがきっかけでお近づきになれた。
我ながら、よく勇気を出したと思う。
サリナさんみたいな美人と出会う機会なんて、なかなかないぞ。
普段俺はカレンくらいしか異性の知り合いもいなかったから、これはチャンスなのだ。
こんなチャンスをくれたおもちとだいふくにはマジで感謝だな。
だけどまさか、サリナさんが有名ダンチューバーのさりーにゃだとは知らなかった。
いやまあ、俺がダンチューバーに疎いせいなのかもだけど。
さりーにゃがSNSにあげた画像のおかげで、俺の動画はさらにバズったわけで。
今回はそういったいろいろなことを話したり、さらにサリナさんとお近づきになるために、俺から誘ったのだった。
サリナさんとは駅前のおしゃれなカフェで待ち合わせだ。
俺は少し早めに行っておく。
少しして、サリナさんがやってきた。
ちなみに、愛犬のマロンも一緒だ。
俺もおもちとだいふくを連れている。
おもちは俺の膝の上に載っている。
あらかじめ、ペットオーケーなお店を選んでおいた。
東京だからそういう店も珍しくない。
「こんにちは、辻風さん。今日は誘ってくれて、どうもありがとうございます」
「いえいえこちらこそ、来てくれてありがとうございます。サリナさん。それにしても、まさかサリナさんがあんなに有名なダンチューバーさんだったなんて、知りませんでしたよ」
最初にダンチューバーをやってるときいたときは、カレンのような底辺ダンチューバーを想像した。
しかしそれがまさか、あのひかるんにも並ぶほどの有名ダンチューバー、さりーにゃだとは。
俺って今までぜんぜんダンチューバーとか見てなかったから、顔とかもぜんぜんわからないんだよな。
ひかるんのときも、ぜんぜん誰だかわからずに助けたわけだし。
「あはは、ごめんなさい。東京住んでて私のこと知らない人あまりいないから、珍しくって」
「すみません、疎くて」
「いえいえ、うれしかったんですよ?」
「え?」
「さりーにゃと知らない人とお友達になれると思って、うれしかったんです。いつも近づいてくる人はさりーにゃ目当てですからね」
「な、なるほど……そういうことですか。いろいろ大変そうですね有名人っていうのも」
俺はなんとか照れながらも会話をする。
サリナさんは美人だし、やっぱりまだまだ緊張するなぁ。
「動画、順調そうですね! めちゃくちゃ伸びてるじゃないですか」
「いやぁ、おかげさまで。やっぱり、さりーにゃさん……じゃなくて、サリナさんがSNSに画像あげてくれたのが大きいですよ。すごいリツイート数でしたもんね」
「いえいえ、私なんかそれほどですよ。それよりやっぱりいちばん大きいのは、ひかるんを助けたことじゃないですか?」
「はぁ……それですか」
正直、ひかるんを助けたとちまたでは言われているけど、あまり実感がない。
俺は元々、ダンジョンで困ってる人がいればいつも辻ヒールで助けていた。
あのときも、べつに困ってた人がいたから助けただけだ。
それがまさか有名ダンチューバーのひかるんで、配信中だなんて思わないじゃないか。
「私も切り抜きみましたもん。カッコ良かったですよ? 辻風さん。さっそうと現れてヒールして救っていく、まるでヒーローみたいでした」
「や、やめてください……そんないいもんじゃないですよ。俺はただ通りがかっただけで」
「でも、なかなかできることじゃありません。勇気ある行動です。普通イレギュラーをみたら、逃げちゃいますもん」
俺の場合、あまりダンジョンの奥にいかないので、危機感がないだけというか。
まあ生きているのが幸いだ。
逃げ足だけは自信があるからな。
正直俺は上層のモンスターでさえ苦戦するレベルで戦闘能力はない。
だから、せめて攻撃を避けれるようにはしてあるのだ。
「そういえば、ひかるん、あらためて辻風さんにお礼したいって言ってましたよ。配信で。そのうち、なにかあるかもしれませんね?」
「うーん、俺としてはもうお礼とかいらないんですけどね。むしろもう十分もらっているというか。動画もおかけでバズってますしね」
「これをだしにひかるんと付き合っちゃえばいいじゃないですか」
「ぶふーーーー!!!?」
サリナさんがとんでもないことをいいだすので、俺は思わず紅茶を吹き出す。
「そ、そんなのありえないでしょう! 俺みたいなオッサンが……それに、向こうは現役高校生の有名ダンチューバーですし」
「でも、もはや辻風さんも有名ダンチューバーですけどね? あ、もしかして彼女さんいました? この前動画でコラボしてた子ですかね?」
サリナさんが言っているのはカレンのことだろう。
「な、そんなわけないじゃないですか! カレンはただの元同僚ですよ」
「ふーん、じゃあ、私が狙っちゃおうかな?」
「へ……?」
いまサリナさんはとんでもないことを言ったような気がする。
しかし店内の雑音でよくききとれなかった。
「ふふふ、冗談です。あ、でも、こんど私ともコラボしてくださいね?」
「え、ええ。それはもう、もちろん」
ということで、俺たちは今度コラボするという約束をして、解散となった。
ふぅ、サリナさん、なかなかぶっ飛んでる人だなぁ。
74
お気に入りに追加
2,640
あなたにおすすめの小説

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜
むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。
そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。
それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……?
のんびりほのぼのとした現代スローライフです。
他サイトにも掲載中。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う
ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。
そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。
だけどその条件がなかなか厄介だった。
何故ならその条件というのが────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる