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《ユノンの復讐》
章間SS ギルティアの最後――前編【side : ギルティア】
しおりを挟むこれはユノンとギルティアが戦っている間の、ギルティア側の視点のお話。
◆◆◆◆◆
「よう……ギルティア。待ちわびたよ」
「ゆ……ユノン……?」
俺は自分の目を疑った。
ユノンのような口ぶりで俺のなを呼ぶそいつは、スライムの姿をしていた。
「そうだ。よくわかったな……?」
「は……はは、マジでお前ユノンかよ……! そんなスライムの姿して! いいざまだな! 魔族にはお似合いの姿だ」
まさか本当に魔族だったとはな……。
俺の考えは正しかったわけだ。
それなのに王国の奴らは俺を犯罪者扱いしやがった!
絶対に許さねえ。
ユノンを再びぶちのめして、戻ったら王様に仕返しをしてやろう。
「なあギルティア……。お前、俺を殺したこと、覚えてるよな……?」
「覚えているに決まってるさ! あんな気持ちのいいことはない! 大衆の面前で、悪を裁く心地よさ!」
今でも俺ははっきりと感触が残っている。
悪を裁くことがこんなにも気持いなんて、それを教えてくれたユノンにはある意味感謝だな。
あの日から俺は――あの嘘つき少年ホラティアは、勇者ギルティアに生まれ変わったのだ!
もうだれにも俺の夢を嘘だとは言わせねえ!
「だったら、俺がお前をここで殺しても、文句はないよな……?」
「ああ! 殺せるもんならなぁ! 俺は勇者だぞ!? お前みたいなスライムに殺されるわけないだろ馬鹿が……!」
こいつは何を言ってるんだ……?
スライムごときが勇者に敵うはずはない。
俺がいくら疲弊していてもだ。
そんなことができたら、この世の理がひっくり返る。
「ふ……なら、よかったよ。一応、お前も幼馴染だからな……。だが、お前がそういうならようしゃなく殺せる。クズのままでいてくれて、ありがとうギルティア」
「……は?」
「《変身》――!」
すると、ユノンは俺の姿に変身した。
傷や汚れの位置まで正確に俺そのままだ。
「……な、なんだと!? 俺に変身した……!?」
「そうだ。自分の姿に殺される気分を味合わせてやる。俺がされたのと、同じようにな……!」
「……っは! 見た目だけ俺にしても、いみねーよ……!」
「……ん? 誰が見た目だけと言った?」
「俺は今、勇者の力を手にしているわけだ」
「なに!? 勇者は俺だ! 俺だけの力なんだ!」
「そうか……だが、これでどうかな……? 《跪け》――!」
「……っぐ……!?」
ユノンの言葉に、俺は抗えない。
地面に屈服させられてしまう。
どういうことだ……?
あのユノンが、俺の能力をコピーしただと!?
「ああ、それから……もう一つやることがあった」
「……?」
「よし……DPを使って……っと」
ユノンはなにやら操作をし始めた。
そういえばあいつはいつもなにか変わったアイテムをいじっていたな……?
俺は興味なかったが、薄気味悪いやつだったぜ。
「よし、これで俺は万全な状態のギルティアだ」
「なに……!?」
ユノンの身体が……いや、正確には俺の身体が……みるみるうちにぴかぴかになった。
すべての傷がふさがり、服の汚れも新品同然だ。
クソ……どういうマジックだ?
万全の状態の俺と、今のボロボロな状態の俺。
戦ったら負けるのはこのボロボロな俺自身だ。
俺の実力は俺が一番よくわかっている。
俺が、俺に負けるわけがない……!
「さあて……まずは誰から殺そうか?」
「うるせえええ! この死にぞこないが……! もういっぺん死ねえええ!」
こうなったら何が何でも負けるわけにはいかない!
こちらが不利なら、そういう立ち回りをするまでだ。
俺は先手必勝とばかりに剣を抜いた。
「ふん、雑魚が……!」
「ぐわああ!」
なに……!?
俺の剣が一瞬で弾かれただと……!?
「そんな……馬鹿な! 俺は勇者なんだぞ!」
「ああ、そうだな。だが、俺もお前だ。俺も……勇者だ」
「くそおおお! そんなのありかよ!」
「死ねえええええええええ!」
ユノンが俺に向かってくる。
しかし俺は、とっさにサブウェポンの短剣を抜いてそれを受け止めた。
危なかった……。
あと一歩遅れていたら、そのまま死んでいたところだ。
「クソがぁ! ユノン! 俺は勇者だぞ!? 簡単にやられてたまるかよぉおおおお!」
「それでいい……。そう簡単に死なれてもつまらんからな……。だが、最後には俺が勝つ……!」
それからいろいろあり、エルーナが倒されてしまった。
彼女は自分の魔法を喰らい、黒焦げだ。
っち……使えないエルフだ。
俺がこんなにも苦戦しているのに……!
どうしてもっと魔力を残しておかなかったんだアイツは!
「どうした勇者さま? もうおしまいか?」
「く……! 黙れ……!」
「いくぞ……! 《変身》――!」
「なに……!?」
ユノンは次はエルーナに変身した。
やっかいな力だ。
エルーナに変身するということは、大賢者の力を得たということ。
「さあ、第二ラウンドだ」
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