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《SANDBOX》
章間SS ぷるんぷるん
しおりを挟むある日、俺とアンジェはお互いの気持ちを確かめ合っていた。
「その……ユノンくんは、私のこと、好き……で、いいんだよね?」
「あ、ああ……お前も、そうなんだろ……?」
「う、うん……」
二人とも顔を真っ赤にして、すごく気まずい。
なんとも言えない空気だ。
まあ俺はスライムの見た目だから、真っ赤な顔というか、真っ赤なスライムだ。
「お二人とも好き同士なんですから、キスでもすればいいんじゃないですか?」
とイストワーリアがからかうように言う。
こいつはどうやら、俺とアンジェをくっつけたいようだ。
「で、でも……ユノンくん、スライムだし」
「あ、ああ……たしかに」
俺は少し、心を痛める。
もし俺が元の身体を持っていたら、アンジェと気持ちを確かめ合った後、もっと深い関係に慣れていたのだろうか。
そう考えると、ますます今の状態が憎い。
「すまないなアンジェ。スライムなんかとキスしてもしょうがないよな……」
「大丈夫だよユノンくん! ユノンくんはどんな姿でもユノンくんなんだから!」
「そ、そうか……?」
「そうだよ! スライムにでもよろこんでキスするよ!」
そう言ってもらえるのはありがたいのだが……。
正直スライムの口ってどこなのか自分でもよくわからない。
食事は体内に吸い込ませて溶かして取り込む形でとれるから、口なんかないのかもしれない。
「で、でしたら! マスター、私の身体をお使いください!」
「……? どういうことだ?」
「マスターはメタモルスライムなので、変身で私の身体をコピーしちゃってください!」
「おお! それはいいアイデアだ!」
どこぞの知らない男の身体に変身してアンジェといちゃつくのは絶対にごめんだが、イストワーリアのような美少女となら大丈夫だ。
やはり美少女同士がいちゃついているのはいい光景だからな。
「よし! 《変身》――!」
俺はメタモルスライムの能力を使って、イストワーリアの姿になった。
これで、俺もすっかり美少女だ。
しかし久しぶりに人間の形態になったから、妙に落ち着かない。
「おお……」
しかも目の前にぷるんぷるんがついている。
イストワーリアはいつもこんなものをぶらさげていたのか……。
「じゃ、じゃあアンジェ……キス、するぞ?」
「う、うん……なんだか、イストワーリアさんとキスするみたいで、緊張する……」
俺はアンジェの肩を抱き寄せ、そっと顔を近づける。
しかし――。
「やっぱりダメですうううううううう!」
「んん!?」
突然イストワーリアは、気が変わったのか、俺のことを突き飛ばして制止してきた。
だがその拍子に、思いっきりアンジェの唇と俺の唇が重なってしまう。
しかもそれだけじゃなく、俺の手がアンジェのあらぬところに……。
――ドーン!
イストワーリアに押される形で、俺はアンジェの上に覆いかぶさった。
そしてそのまま三人して地面に倒れる。
「いててて……」
三人の身体が複雑に絡み合って、とても大変なことになっていた。
アンジェの上にイストワーリア×2が覆いかぶさっている状態だ。
なんというかもう、ぷるんぷるんがたくさんあって、ぷるんぷるんだった。
俺はぷるんぷるんに挟まれながらも、自分自身ぷるんぷるんしてるので、もう何が何だかわけがわからない。
こんな経験、サキュバスの夢の中でも不可能だろう。
「お、重いよユノンくん……」
「す、すまん……」
「おい、イストワーリア。お前のせいだぞ」
「うぅ……マスター、アンジェちゃん。すみません……」
ということで、なんだかわけのわからないうちにこの話は終わっていた。
いったい俺はいつになればちゃんとアンジェと結ばれることが出来るんだろうか。
なんとかして、自分の身体を取り返したいものだ……!
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