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《SANDBOX》
22話 宝箱とミミック作戦
しおりを挟むここで一度、我がダンジョンの現在の構造を見てみよう。
俺はダンジョンメニューに【ダンジョン内部の地図】を表示する。
――――――――――――――――――――――――
第一階層 入口、プロス君待機
――――――――――――――――――――――――
第二階層 酒場
――――――――――――――――――――――――
第三階層 居住区、コア、採掘場
――――――――――――――――――――――――
「うーん、これだとダンジョンに入って来た冒険者はすぐにプロスくんにやられることになるよなぁ……」
できればプロスくんは最後の切り札にとっておきたい。
それにもし、プロス一人で対処できなかった場合、後がないからな。
今後DPを大きく得ようと思うと、それなりに強い冒険者を呼び込む必要がある。
「えーっと、まずはプロスを第三階層に移動させよう」
これでプロスには居住区を護ってもらうことにしよう。
ユキハやコハネが安心して暮らせるようにしたい。
「じゃあ、第一階層を作っていくとするか……」
俺がダンジョンメニューとにらめっこしていると、アンジェがそれを横からのぞいてきた。
イストワーリアは研究ツリーを解除するための研究ポイントの産出で忙しいから、今は実質アンジェが助手みたいなものだ。
「ユノンくん、どうやって冒険者を集めるの?」
アンジェの疑問は当然だろう。
俺みたいにあのゲームをやっていたわけじゃないから、アンジェには知る由もない。
「ああ、それはだな……宝箱を置いて集めるんだよ。俺たちも冒険者としてダンジョンに潜っていたときは、それ目当てだっただろ?」
「え!? あれって、自然に発生するものじゃないの!?」
「いや、どうやらそれぞれのダンジョンマスターが置いているみたいだ」
俺もアレはゲームの中だけのことだと思っていたが。
こうして実際にダンジョン運営をしているが、いまだに宝箱が自然発生しないことからも、どうやら俺が設置せねばならんらしい。
まあ、普通に考えれば宝箱が地面から生えてくるわけがないよな……。
「でも、宝箱なんて……どうするの?」
「ふっふっふ……アンジェ、お前は俺のことを忘れたのか?」
「あ、そっか!」
「そうだ。俺にはアイテムボックスがあるだろ? そしてそこには、今までにギルティアたちと集めた【金色の刃】の戦利品すべてが入っているんだ!!!! なぁに、ギルティアたちに遠慮はいらんさ。せっかくだからこれを使わせてもらおう」
俺はギルティアに命を奪われてるんだからな。
あいつの武器を勝手に使ったところで、文句をいわれる筋合いはない。
「そうだな……これを第二階層に設置してみるか」
俺はアイテムボックスの中から、適当にレアそうなアイテムをいくつか見繕って、宝箱としてダンジョンの中に設置した。
これで冒険者にとって、このダンジョンの価値が上がったはずだ。
冒険者はあらかじめ、宝箱など戦利品の価値を知るスキルを使って、どのダンジョンを攻略するか見極める。
つまりまあ、宝箱さえ置いておけば、あとはアリみたいに冒険者が集まってくるというわけだな。
俺たちの持っていた装備やアイテムは、Aランクパーティーのものだからな。
他の冒険者たちにとっても、かなり価値のあるアイテムなはずだ。
これは入れ食い状態が期待できるな!
「じゃあ次は防衛だな」
ただ宝箱を置いただけでは、みすみす盗られてしまうだけだ。
それを護れるだけの設備や魔物を設置しなければいけない。
「どの魔物を使うの……?」
「ふっふっふ……俺に考えがある。なぜ第二階層にばかり宝箱を置いたか考えてみろ……」
「……?」
俺はダンジョンメニューの【魔物】の項目を開く。
――――――――――――――――――――――――
スライム 100
ゴブリン 300
ドワーフ 600
・
・
・
ミミック 800
――――――――――――――――――――――――
「あった……! こいつだ!」
そしてミミック×4を第二階層に設置!
合計で3200DPもの消費だが、そのぶん強力な魔物であるから仕方がない。
「うぇ……私ミミック嫌いだよ……」
アンジェは冒険していたころ、よくミミックに驚いてたっけな……。
「ああ、冒険者としては俺も大嫌いだ。あんなにがっかりすることはないからな……。宝箱だと思ったらミミックに腕を噛まれたり……。だが、味方としては頼れる魔物だ」
ゲームでも、短期間で多くのDPを貯めたいときに、俺はミミックをよく使っていた。
ミミックには特殊な能力がある。
普通なら、冒険者を倒したときに得られるのがDPだが……。
ミミックの場合、相手の武器などを食べてもDPが手に入る。
どういうことか……?
冒険者は最初、宝箱だと思ってミミックを開ける。
すると、ミミックが冒険者の腕にガブリと噛みつくわけだ。
その際、冒険者が手に持っていた武器やアイテムを奪い取る。
ミミックにとってはそのアイテムが食事みたいなものだから、ボーナスでDPが入る仕組みだ。
これなら効率的にDPを稼ぐことが出来る。
「すごいよユノンくん。冒険者としての経験が役に立ってるね!」
「まあな。冒険者目線にたてば、相手が嫌がることが手に取るようにわかるからな……」
第二階層にはまず、宝箱の山を設置した。
そしてその一番手前にミミックを置いたのだ。
これなら、宝に喜んだ冒険者が一番初めに開けるのはミミックになる。
我ながらいやらしい作戦だとは思う。
きっと彼らは浮かれていて、あっさり武器を喰われてしまうにちがいない。
そして武器を失った冒険者は、逃げるかミミックにそのまま食われるか……。
「どうしたの、ユノンくん」
「いや、なんでもない……」
俺が少し俯いていたのは、ぼーっとしていたからだ。
別に、今更人間を殺すことに葛藤や躊躇はない。
冒険者というのは、もともと命がけでダンジョンへと挑む、そういう仕事だ。
そこに手心を加えるようなことは、元冒険者としても許せない。
それに冒険者なんてのは、だいたいどっかで悪事をしているものだ。
まっとうなヤツならもっとまともな仕事についている。
これは、命と命を懸けた戦いなんだ。
ゲームではなく、そういう真剣勝負!
だからこそ俺は、全力で冒険者に相対す――!
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