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《ランタック村》

15話 ゴブリン穴堀り部隊

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「こいつに使う――」

 俺はモンスター召喚メニューから、ゴブリンを選択した。
 一体につき300DPかかるから、今買えるのは3体だけだな。

 ――しゅわわわわわ!

「ゴブゴブ!」

 さっそくゴブリンが三体生成された。
 見た目だけだと、小さい緑のおっさんって感じだな。
 まあ俺は今スライムだから、俺の方が小さいけど……。

「マスター、この子たちには名前を付けないんですか?」

「ああ、今はまだな。いちいち全部の魔物に名前を付ける訳にもいかないだろう。それに、いくら俺に無尽蔵の魔力があるといっても、そう何体もネームドモンスターを維持できるわけじゃない」

 名前を付けてモンスターをネームドにするのは、強力なシステムだけど……。
 やはりそれだけに頼るわけにはいかないのだ。
 ネームドモンスターが生きている間、その命名につかった分の魔力は、常に俺からさっぴかれる。
 名前を付けるモンスターは、なるべく慎重に選びたい。

「よし名もなきゴブリンくんたちよ! 貴様らには穴掘りを行ってもらおう!」

「ゴブゴブ!」

 俺はアイテムボックスから、採掘用のシャベルやつるはしを取り出す。
 ゴブリンたちはそれを手に取ると、さっそくダンジョンの一番奥の壁へ歩いて行き、壁を削りだした。

「ユノンくん、これは……?」

 俺の横にいたアンジェが尋ねる。
 ちなみに、ユキハとコハネはもう寝室に行ってもらっている。
 危険があるといけないからな……。
 ユキハは病人だし、ダンジョンの空気は悪影響だ。

「これはダンジョンの拡張をしているんだ。DPを消費してエリアを拡張することもできるんだが、それでは効率が悪い。なるべくDPは他のことに使いたいからな。ゴブリンに任せておいたほうがいいんだ」

 これもゲームをプレイしているうちに学んだ裏技だ。
 一見非効率に見えるが、長い目でみればこのほうがいい。
 ゴブリンさえ最初に買っておけば、その後はいくらでも掘ってくれるからな。
 まあ時間がかかるのだけが欠点だが。

「それに、採掘中に魔石なんかも手に入る……あ、ホラ。さっそく一つ出た」

「ほんとだ……!」

 ゴブリンたちが掘った土の山から、青白く光る鉱石がポロンと零れ落ちる。
 それを一体のゴブリンが小さな手で拾って、俺のところに持ってきた。
 ものすごいどや顔で、どうだ! と俺に魔石を見せつける。

「よしよし、よくやったぞゴブリン1号! この調子で頼む」

「ゴブ!」

 褒めてやると、とても満足そうな顔で採掘に戻っていった。
 まるで犬だな……。
 あんな緑のおっさんでも、かわいいところがあるもんだな。

「この魔石を……DPに変換できるんだ! それ!」

 ――しゅううううん。

 俺がダンジョンメニューから指示すると、魔石は地面に吸い込まれていった。
 ダンジョンコアに取り込まれたんだ。
 あ、そういえばここのダンジョンコアってどこにあるんだろう……?
 また今度ちゃんと調べておかないとな……。

《魔石×1は50DPに変換されました――!》

「お、成功したようだ」

 システムメッセージが、それを知らせる。
 どうやら魔石の変換率はゲームと変わらないようだ。
 なにからなにまであのゲームのままで、若干気味が悪くなってきた。

「……とまあ、こんな感じで後はほっといても定期的にDPを得られる」

 俺が得意げにそう言うと……。

「ま、マスター! さすがです! イストワーリアは感嘆いたしました! マスターは天才ですか!?」

「いや、まぁ……単にもともと知ってただけなんだけどな……」

 これも夜な夜なゲームをしていたおかげだ。
 だがイストワーリアはそんな事情を知らない。
 俺をまたもや抱きかかえる。
 今日もぷるんぷるんだ。

「ちょっとあなたさっきから、ユノンくんに近すぎじゃない!?」

 アンジェが俺を奪おうと、イストワーリアの胸元に手を伸ばす。
 わわわわ、やめろ! そんなことしたら、イストワーリアのただでさえ薄い服が脱げてしまう!

「あなたこそなんですか! マスターは私のです!」

 イストワーリアも負けじと俺を引っ張る。
 いててて、スライムの身体がちぎれそうだ。
 それはそうと、アンジェもなかなかのだ……。
 ……じゃなくて!

「おいお前らいい加減にしろ! 仲良くしてくれよ! いつギルティアが襲ってきてもおかしくないんだからな!」

 それだけじゃない。
 ここには他の冒険者たちだってくるだろう。
 俺はどうせもう人間としては生きていくのが難しいだろうから、このダンジョンを大事にしたいんだ。
 内輪揉めは困る。
 人間として生きていくなら、他の人間の身体を借りなくちゃならないしな……。
 それはなんか、気が引ける。

「す、すみませんでしたマスター」

「ごめんねユノンくん」

「わかればいいのだ……」

 ひと段落した後は、飯の時間だ。
 飯の材料は、俺のアイテムボックスにあった素材で、当分はなんとかなりそう。
 まあ俺はスライムの身体だから、草でも食ってればいいんだが……。

 そしてその後は風呂だ……。
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