10 / 26
第10話 【アラン側のお話】
しおりを挟む「はぁ……はぁ……」
僕は路地裏を上手く活用して、逃げ回っていた。
どうやらジャスティスたちは僕のことを通報したらしい。
そんな……ジャスティスめ、僕を罠にかけたのだ。
絶対に許せないけど……今はそれどころじゃないよね。
実際に起こったこととしては、僕のほうが圧倒的に不利な状況だ。
たとえジャスティスがなにかを企んでいたとしても、そんなこと、いい訳にならない。
僕はいつかジャスティスの闇を暴いて、復讐してやろうと考えていた。
だけど、それより先に、今はとりあえずこの状況を切り抜けないとな……。
「そうだ、ジャスティスの剣がある……!」
僕のアイテムボックスの中には、各種レアアイテムと、それから、ジャスティス愛用の勇者の剣が入っていた。
そういえば、ジャスティスが勇者として今のような力を手にしたのも、この剣を手に入れてからだった。
だから、僕がこの剣を使えば、僕もジャスティスなみに戦えるようになるのかもしれない。
普段の僕なら、そんな人のものを盗むようなことは考えないけれど……。
今回はピンチな状況だから、このくらいいいよね。
それに、ジャスティスのせいでこうなってるんだし……使えるものは使わないと。
僕はこの勇者の剣で、ジャスティスに復讐するんだ。
「ふふふ……!」
僕はアイテムボックスから勇者の剣を取り出して、それをニヤニヤと眺めていた。
なんだか不思議と、力が湧いてきた気がするな……。
今の僕なら、なんでもできてしまうような気がするぞ……!
「あ、いたぞ……! そこだ……!」
「捕まえろ……!」
すると、衛兵たちが僕のことを発見して、近づいてきた。
だけど、僕はもう逃げない。
今の僕は、あの勇者の剣を持っているんだ。
それに、バフや回復のアイテムも使い放題!
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
「うわ……!?」
――ズシャァ!!!!
僕は一瞬で、衛兵二人の首をはねとばした。
「すごい……! これが勇者の剣の力か……! まるで勝手に身体が動いたような……! はは! なんだ、ジャスティスも大したことないじゃないか。剣がこれだけ強ければ、僕だって……!」
僕は心の中に、なにかが目覚めていくのを感じていた。
そうか、これが勇者の力の目覚めか……!
きっとジャスティスも同じ思いを感じていたんだろうな……。
じゃあ、ジャスティスにはもともと、勇者の力なんてなかったってことか!?
僕が使っても、これだけ剣の性能を引き出せるんだったら……僕が勇者でもいいじゃないか!
ああ……どうしてもっと早くに気がつかなかったんだろうか。
こんなことならさっさと、勇者の剣をジャスティスから奪っておけばよかった。
今までは、預かるだけ預かって、僕一人のときは一切勇者の剣を出さなかったからな……。
もったいないことをしていた……。
この世界は奪うか、奪われるかの世界だ。
僕は今まで、この気弱な性格のせいで、ジャスティスにいろんなものを搾取されてきたんだ。
女の子や、武器や、地位や名誉――。
でも、それも今日で終わりだ。
「欲しいなら、奪い取ればいいんだ……!」
僕はニヤリと笑みを浮かべる。
どうしてこんな単純なことに気がつかなかったんだろうか。
この剣が、僕にすべてを教えてくれた気がする。
ずるいじゃないかジャスティス……こんないい剣に導かれていたなんて……。
「はっはっは……! でも、きっと僕のほうがこの剣を上手く使いこなす! 僕こそが……真の勇者なんだ……!」
◆
――アラン・ドランのカルマ値が、大幅に減少しました。
◆
「うーん……おっそろしいことになっとるのう……」
豹変するアランのことを、悩ましい顔で眺める神と天使。
もはや原作とはかけ離れた展開に、神も困惑し始めていた。
「どういうことなんです……!? 神様……! あのアランが、人殺しを……!」
天使は状況を飲み込めていないようだ。
天使の目からすると、さっきまでのアランの性格から考えて、彼がこんなことをするとはどうしても思えないのだった。
「そうじゃなぁ……原因は、あの剣にある」
「あの剣……ジャスティスが持っていた、勇者の剣ですか……!?」
「そうじゃ、あれは勇者の剣として偽装されておるが……実際は【邪剣ヲズワルド】なのじゃ」
「【邪剣ヲズワルド】……!?」
まさかの事実に、天使は驚く。
神は説明を続けた。
「原作の小説ではな、アランはヒロインのラフィアと出会い、真の勇者の力に覚醒するはずじゃった……」
「ですね……でも、ラフィアは先に、ジャスティスと出会ってしまっている……」
「そうじゃ。本来なら、ラフィアによって、【邪剣ヲズワルド】の正体が見破られ、アランは邪剣に飲まれずに済んだのじゃ……。それどころか、ラフィアの能力によって、邪剣を浄化し、聖剣として、二刀流の剣士になるはずじゃったのじゃ……」
「なんと……! っていうことは……」
「そうじゃ。ラフィアと出会えなかったせいで、邪剣だけが、アランの手元に残り……そのまま邪剣に飲まれてしまったということじゃの……。まあ、邪剣はその人物の元々持っている悪い部分を引き出すものじゃから、これもアランの本性ではあるのじゃが……」
「ということは……もともとのジャスティスも、邪剣に飲まれていただけっていうことですか……?」
「いや、そうとも限らん。ジャスティスは普通の悪人に輪をかけて畜生な性格をしておるからの……。邪剣と組んだときの能力はすさまじいのも事実じゃが……邪剣のないジャスティスも、そうとうのクズじゃ。戦闘力が低下したクズになるだけじゃよ……原作ではな」
「なるほど……でも、今回はそのジャスティスの性格自体が変わっている……」
「そうじゃな……じゃから、この先ジャスティスがどうなるかは……わしにもわからん……」
「って……神様……そんな楽しそうな顔しないでくださいよ……。報告書を書くの、私の仕事なんですからね……」
「ホッホッホ……」
今日も神はご機嫌でジャスティスとアランのことを観察しているのだった。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる