俺だけもらえるベーシックインカム~異世界ニートな俺が、働かなくてもいい理由~人生疲れて生きる意味を見失っていたけど、異世界行ったら余裕でした
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
文字の大きさ
大中小
30 / 40
第30話 暗躍
しおりを挟む「それで……レベッカ、これからどうするんだ?」
「うーん、ぼくはしばらく泊めてもらえるだけでもうれしいにゃ」
そういうことだったが、それだと根本的な解決にはならない。
レベッカがまた家を借りようとしても、大商人バッカスがまたいやがらせをしてくるかもしれない。
彼女が働いていた不動産屋も、くびになったそうだ。
そんな理不尽、本当に許せないよなぁって思う。
だってこの家だってレベッカのおかげで借りられたし、彼女はすごくいい従業員だったと思うのだ。
まるねこ食堂はなんとか大丈夫みたいだが……。
これ以上大商人バッカスがこの街に介入してきて、この街でまで獣人の肩身が狭くなるようなことは、なんとしても避けたい。
「よし、じゃあ……レベッカが寝てるうちに……」
俺はこっそりと、家を出た。
そして大商人バッカスの元へ乗り込むことにした。
シロの背中に乗っていけば、朝には戻ってこられるだろう。
バッカスの屋敷がどこにあるのか、それはシロが教えてくれた。
先日の商人の臭いをたどれば、簡単に突き止めることができるそうだ。
白狼ってのはそこまで鼻がいいんだな……。
◆
【sideバッカス】
「くそが……! 貴様はガキの使い程度もろくにこなせねえのか!」
大商人バッカスが、自らの部下をきつくどなりつける。
場所は彼の大豪邸の一室。
高級な花瓶が、無残にも地面に落ちて砕け散る。
しかしバッカスはそんなことも気にしないほど、目の前の男に怒りを向けていた。
「ひぃ……! も、申し訳ございませんバッカス様。あのエルドールとかいう町、門番にまで手が回っていなかったようで……」
「言い訳は聞きたくない! 賄賂くらいいくらでも渡せただろう!」
「そ、それが……謎の男に邪魔されまして……」
「謎の男ぉ……?」
「念のため、町長などに圧力はかけておきましたが……」
バッカスたちがそんな話をしていたときだった。
とつぜん、ベランダに謎の影が降りてきて――。
窓を突き破って、大きな狼があらわれた。
――バリィイン!
「な、なんだこいつは……!?」
バッカスほどの大商人であっても、見たこともないような巨大な白狼。
そして、その上にまたがる謎の青年。
「ば、バッカスさま! こ、この男です……!」
「なんだと……!?」
驚き、慌てふためく二人。
バッカスの部下は急いで衛兵を呼びに行った。
そんな二人とは対照的に、狼の上の青年は落ち着きはらっていた。
青年は、狼の上から、一つの袋を取り出した。
そして、バッカスの前にそれを掲げる。
「そ、それは……!?」
「なあオッサン。これでどうだ?」
「は、はぁ……!?」
青年がその袋の紐をほどくと、中からは大量の金貨がじゃらじゃらと零れ落ちてきた。
バッカスは、目の色を変えてそれを拾い集めた。
「おおおおお! こ、これは……! なんという嬉しい土産!」
「その金で、もうあの町からは手を引いてくれないか?」
青年の言葉は、もはやバッカスへは半分もきこえていなかった。
バッカスは目の前の金に夢中で、話半分で浮ついた返事を返す。
「わ、わかった……わかったから好きにせい。私は今金を集めるのに忙しい」
「それから、獣人のレベッカっていう女の子、その子の借金もこれで払っておいてくれ」
「ああわかった。わかった……! ぐほほほほ……! これは大量大量!」
「はぁ……まったく……どこまでもクズだな……だけど、あんたがクズで助かった。金なら、いくらでもあるしな……」
青年はそういうと、さらに金を出して地面にばらまいたのだった。
「これで窓の修理もしてくれ」
それだけ言い残して、青年は去っていった。
青年が去ったあと、ようやくバッカスの私兵が駆けつける。
「ば、バッカスさま……! ご無事ですか!」
「わ、わしは平気じゃ! それよりこの金をはやくしまえ! 誰かに奪われる前にな!」
「は、はい!」
「ぐへへ……それにしても、あの男何者……。まあいい。つくづくわしも運がいいわい」
それから数日後に、エルドールの街には謎の富豪が住んでいて、正義のために裏で暗躍しているという噂が流れることになるのだが――それはまた別の話。
◆
バッカス亭からの帰りみち、シロは背中の上のショウキチに話しかける。
「あんなに金を使ってよかったのか? 我々がクエストで稼いだ金のほとんどだろう?」
「いいんだ、別に。生活費は別でもらえるしな。こういうときに使わないでどうするって感じだ。俺はレベッカが守れるなら、いくらでも惜しくないよ」
「そうか、優しいのだなショウキチは」
予定通り、二人はレベッカが目覚める前に、家に帰り、なにごともなかったかのようにふるまうのだった。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~
岡本剛也
ファンタジー
駆け出しの冒険者であるシルヴァ・ベルハイスは、ダンジョン都市フェルミでダンジョン攻略を生業としていた。
順風満帆とはいかないものの、着実に力をつけてシルバーランク昇格。
そしてついに一つの壁とも言われる十階層の突破を成し遂げた。
仲間との絆も深まり、ここから冒険者としての明るい未来が待っていると確信した矢先——とある依頼が舞い込んできた。
その依頼とは勇者パーティの荷物持ちの依頼。
勇者の戦闘を近くで見られることができ、高い報酬ということもあって引き受けたのだが、この一回の依頼がシルヴァを地獄の底に叩き落されることとなった。
ダンジョン内で勇者達からゴミのような扱いを受け、信頼していた仲間にからも見放され……ダンジョンの奥地に放置されたシルヴァは、匂いに釣られてやってきた魔物に襲われた。
魔物に食われながら、シルヴァが心の底から願ったのは勇者への復讐。
そんな願いが叶ったのか、それとも叶わなかったのか。
事実のほどは神のみぞ知るが、シルヴァは記憶を持ったままとある魔物に転生した。
その魔物とは、最弱と名高いゴブリン。
追い打ちをかけるような最悪な状況に常人なら心が折れてもおかしくない中、シルヴァは折れることなく勇者への復讐を掲げた。
これは最弱のゴブリンに転生したシルヴァが、最強である勇者への復讐を果たす物語。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる