上 下
21 / 40

第21話 オーク襲来

しおりを挟む

「グオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 ――ドシン!
 ――ドシーン!

 大きな地鳴りと、雄たけび。
 森の奥から現れたのは、なんと身の丈3メートルほどはありそうな緑色の巨人だった。

「こ、これって……、ゴブリン……!? じゃ……ないよな……」

 明らかにさっきまでの小鬼たちとは違いすぎる。
 そう、こいつはオークと呼ぶにふさわしい見た目をしていた。
 それもただのオークじゃない。
 タイラントオーク――巨大化したオークだ!

「や、やべえってこれはさすがに……!」

 恐怖で足が震える。
 今すぐここから逃げなければならない。
 だけど、思うように足が動かなかった。
 さっきまでの戦いが、ゲームだったかのように生ぬるいものに感じる。
 こいつは正真正銘の怪物だ。

「うわああああああああ!」

 タイラントオークが俺の眼前に迫る。
 そして、大きく手を振りかぶった。
 だが俺はこの期に及んで動けずにいた。
 どうしても足がすくんでしまい、逃げられない。

 そんな……!
 せっかく平凡な暮らしを手に入れたというのに、ここで終わるのか……!?
 覚悟を決めて目を瞑った、その時――。

「ガルルルルル……!」
「シロ……!?」

 足元から小さな相棒が、巨大な強敵めがけてとびかかっていった。
 まずい、ただの犬っころであるシロに、あんなバケモノの相手……つとまるわけがない……!
 しかし、俺の予想に反して、悲鳴を上げたのはオークのほうだった。

「グオオオオオオオオオオオオ!!!?」

 シロはオークの足元にかみついて、離さない。

「シロ……!」

 小さな体だというのに、ものすごい威力の攻撃だ。
 きっと、俺がピンチだと察して助けてくれたのだろう。
 シロは俺に逃げろとばかりに尻尾をふって合図してくる。
 そして今も鼻息荒く、オークを絶対に離さないと食らいついている。

「シロ、お前……!」

 俺を思って、シロが勇気を出して前に出たことに感動してしまう。
 だが、このままだとシロが持たない。
 さすがにオークと体格差があるのか、いまにも引きはがされそうだ。
 オークも足元の痛みに慣れてきている。

「こんな小さな体で頑張ってくれてるのに、飼い主の俺が逃げるわけにいかないよな……!」

 俺はなにをビビッていたんだ。
 せっかく手に入れたセカンドライフを、友達を、守れるのはこの俺以外にいないじゃないか……!
 それに、俺には魔法という強力な武器もある。
 シロという、頼もしく忠実な相棒も……!

「うおおおお! あとは任せろ……!」
「ガルル……!」

 シロが作ってくれたこの好機を、逃すわけにはいかない!
 噛みつかれて身動きがとれなくなっているオークめがけて、俺は狙いをすました。
 もともと大きな的だ、絶対に外しはしない。

「ファイア……!!!!」

 ――ゴォオオ!!!!

 俺が唱えると、さっきまでとは比べ物にならないほどの業火が出現した。
 そしてオークの上半身を、一瞬にして黒焦げにした。

「ワンワン……!」

 着弾と同時に、シロがオークから離れてこちらへ戻ってくる。

「グオオオオオオオオオオオオ……!!!!」

 そのままオークは火だるまになって、地面に倒れた。
 ――ズドーン!

「やったぁ……!」

 なぜゴブリンを倒していたときよりも、魔法の威力があがったのだろうか。
 レベルという概念があるのか、それとも使い慣れただけなのか。
 いずれにせよ、戦えばそれだけパワーアップもできるみたいだ。

「よし……! よくやったぞシロ……! ありがとうな! お前のおかげでたすかったよ」
「ワンワン……!」

 シロを撫でてやると、尻尾を振って喜んでくれた。
 これは町に帰ったら、たくさん肉を買ってやらなきゃだな。
 クエストの報酬が出るから、それで賄えるだろう。
 こうして、俺の初めてのクエストはひやひやする場面もありながらも、無事に事なきをえた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。 しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。 とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。 『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』 これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

処理中です...