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SS 馬を治そう
しおりを挟むフェンリルを治療したことで、わかったことがある。
どうやら俺の回復魔法は、動物やモンスターにも有効らしい。
ということは、この能力はまだまだ使えるな。
俺は家畜を専門に売っている商人に連絡をとった。
「欠損やけがをした家畜を、殺すまえに俺に売ってほしい。金はいいねで出そう」
「けがをした家畜なんて、なにに使うんだい? まあ、いいけどね」
俺は、商人からけがをした家畜をかなりの安値で譲ってもらえることになった。
家畜商人のもとには、毎月けがをした家畜なんかが大量に送り返されてくるそうなのだ。
馬なんかは足をやるともう走れないので、殺されてしまう。
そういった家畜の処分なども、家畜商人の仕事だった。
乳の出が悪くなった牛なんかも、家畜商人がひきとって一斉に殺してしまうらしい。
だが、そんなのはもったいない。
農家のほんとんどは、家畜商人にひきとってもらうのもめんどくさがって、自分のところで殺してしまう人もいるんだとか。
そういう人のために、家畜商人には、けがをした家畜を引き取る際に農家に金を渡すように言った。
今後は家畜商人が、怪我をした動物を俺のところにもってきてくれるはずだ。
家畜商人としても、使い道のないけがをした家畜が金になって、よろこばしいことだろう。
俺は家畜商人から家畜を大量に購入し、奴隷たちに運ばせた。
そして屋敷の家畜小屋につなぎ、一斉に回復魔法をかける。
「えい! エクストラヒール……!」
足をやってしまった馬はふたたび走れるようになり、乳の出がわるくなった牛は健康そのものになった。
他にも足を狼に咬まれて失ってしまった犬なんかもいた。
みんな、俺の回復魔法で元通りだ。
「やった!」
それをみていたフェンリルのフェンが、感動のあまり涙を流す。
そして俺にもふもふの身体で抱き着いて来た。
「主……あなたはなんと尊いお方だ……動物たちのためにこんなことをしてくれて……。同じ獣族として、感謝感涙の極み……! さすがは我がみこんだお方だ……!」
「おいおい……大げさだなあ……」
そして俺は、健康になった家畜たちを売ることにした。
別の家畜商人に販売ルートをつくったところ、かなりいい儲けになった。
他にも、馬なんかはそのまま奴隷を買いに来た貴族におまけで売ってやったりもした。
買った奴隷を馬にのせて帰れば、一石二鳥だからな。
なによりも、動物が傷ついているのは、人間以上に見るに堪えない。
俺はたくさんの動物を救えたことで、少し気分がよくなった。
家畜の世話は、たくさんいる奴隷たちに任せておいた。
奴隷たちも父のもとで怒声をあびながら雑用をさせられるより、家畜の世話のほうがいいみたいで、みんな楽しそうにやってくれている。
犬なんかと触れ合うと、奴隷も心が落ち着いて、気の紛れになるようだ。
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