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第43話 お布施
しおりを挟むエルド教に入れば、あらゆる病気が治る……などという、変な噂が立ち始めた。
まさかアルトが流してるのか……?
とにかく、俺は医者じゃないんだけどな……。
せっかく破滅フラグを回避して自由になったんだから、俺は医者の真似事をするつもりはない。
だが、困ったことに、その噂を鵜呑みにしてしまうやつらがいるのだ。
「エルド様ぁああああ! お願いします! うちの娘を治してください!!!!」
「うるさい……! 帰れ……!」
なんと朝から、俺の屋敷の前に、そんなことを叫ぶ男が現れたのだ。
まったく、クソ迷惑なことだ……。
ていうか、アルトのやつ、エルド教のエルド様が俺だって公言しているのか?
これから俺の家にいろいろ押しかけてくるってこと……?
ヤバくね……?
俺のプライバシーは……?
俺は医者じゃないんだから、縁もゆかりもない赤の他人のためにいちいち回復魔法を使ってなどはいられない。
俺は別に世界平和を望んでいるわけでもないし、ただで治してやろうというお人よしでもないんだからな。
「そこをなんとか……! お願いします! なんでもします! お金はあります! いくらでも払いますから……!」
「ん? 今いくらでもって言ったか……?」
俺はちょっと考えてみた。
たしかに俺は今腐るほど金を持っている。
だが、今後なにが起こるかわからない。
アルトがエルド教などというわけのわからないものを発足させたりしたからな。
またアルトがどんな暴走をするかわからないぞ。
だから、今後もお金は溜めておいたほうがいいだろう。
「よし、そういうことならこれを売ってやろう」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
俺は、回復のオーブをそいつに売ってやることにした。
オーブはもともと一個5万Gだから、俺は回復のオーブを10万Gで売ってやった。
これでもうけは5万Gだ。
「これはもしかしたら、いい稼ぎになるかもしれないぞ……?」
男が帰り、それから数週間が経った。
すると、今度はあの男以外にも俺の家の周りに行列ができていた。
「な、なんだこれは……」
「回復のオーブを売れと、朝から行列ができているんです……!」
門番の奴隷が俺にそう説明する。
はぁ……やっぱりこうなったか……。
だが、こうなったら追い返すわけにもいかない。
エルド教の評判が悪くなったりすれば、アルトからの俺への忠誠心も下がるかもしれないからな。
アルトはやはり依然として要注意人物だ。
俺が今後ハメツするとすれば、原因はアルトだろうからな。
そんなアルトの手綱を握っておくためにも、エルド教に加担するほうがいいだろう。
俺は仕方なく、そいつらにも回復のオーブを売ってやった。
「ありがとうございます! ありがとうございます! エルド様!」
「エルド教万歳! エルド教万歳!」
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