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第22話 奴隷に奴隷を買わせよう

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 いろいろ奴隷を買ったり売ったりしていたら、俺は15歳になっていた。
 これまでに、かなりの大金が溜まった。奴隷たちの忠誠心もかなりのものだし、これはもう破滅フラグ回避したんじゃないのか……? と思うくらいだ。
 だが、問題がまだ残っていた。

「本編開始まで、あと1年か……」

 そう、俺が16歳になれば、ついに始まるのである。
 このゲーム世界、【エゴイスティック・ファンタジー】の本編世界が……!
 エゴイスティック・ファンタジー序盤の、主な舞台は【ハインリヒ貴族学園】だ。
 そして俺は16歳になる来年から、その学校に通うことになっている。
 もちろん、物語の本来の主人公だって、そこにやってくる。
 そうなれば、俺はおそらく破滅まっしぐら――そう、なにもしなければ。

 だが俺はこれまで、さんざん金を貯めてきた。そして、奴隷たちの信用もためてきた。破滅したときのために、回復魔法も修行してきた。もし破滅して俺が八つ裂きにされても、自分の回復魔法でなんとか復活できるように……!
 だから、今の俺なら、もしかしたら破滅フラグを回避できるかもしれない。
 だが、なにが起こるかわからないのが世の中だ。念には念を入れて、決して油断はできない。
 この世界の運命集積力と、俺の破滅フラグ回避能力、どちらが上か、ためさせてもらおうじゃないか。

 一番の問題は、主人公だな。
 エゴイスティック・ファンタジーの主人公、アルト・フランシフォン。やつは正義感にあふれる、光の勇者だ。
 本来の俺、エルド・シュマーケンは、そんなアルトと関わったせいで、彼に糾弾され、悪者として裁かれる運命にある。

「うん、絶対関わりたくねえな」

 俺は、学園に入っても、絶対にアルトとは関わらないと心に決めた。
 まあ、それが可能なら、だが。

 さて、だがまだ本編開始までは1年ほどの猶予がある。
 それまでに、まだまだできることをやっておこう。
 念には念を、保険は多いほうがいい。





 この数年で、俺の奴隷たちはかなり増えていた。そして、収益もどんどんうなぎ上りだ。
 それで、俺はあるアイテムを買うことに成功した。
 それがこれ――。

《魔導記録オーブ》
レア度 エピック
値段 5万G
説明 魔法をプログラミングし、オーブに封じ込めることができる

 これは魔導記録オーブといって、魔法を記録し、あとで自由に使用することができる特殊なアイテムだ。その値段はかなりの高額だが、俺はこれをいくつか用意した。俺の考えたやりたいことをやるためには、このオーブがどうしても複数必要だったのだ。俺は、このときを待っていた。
 このオーブの使い方は簡単だ。まず、記憶させたい魔法を、オーブに向けて放つ。
 そうすると、オーブに魔法が記録される。それから、あとはオーブを起動すれば、その魔法と同じ効果になるというわけだ。

 つまり、魔法をいつでも取り出せる装置だ。
 このアイテムのいいところは、誰でも使用できるということ。オーブを起動させるのは、魔法を使えない人物でもいい。つまり、魔法を他人に貸したりできるというわけだ。
 俺はこのアイテムを使って、あることを考えていた。

 俺はオーブに、回復魔法の最上級である【エクストラヒール】を閉じ込める。
 そして、エクストラヒールを閉じ込めたオーブを複数個用意する。
 それから、専属奴隷のアーデを呼び出した。

「よし、アーデ。俺はお前にいまから任務を授ける」
「はい、なんでもおっしゃってください。ご主人様」
「このオーブをお前に渡す、これで、適当な欠損奴隷を15人買ってきてくれ。そして、それを売りさばいて利益をあげるんだ」
「わ、わかりました! がんばってみます!」

 俺はアーデにオーブを15個渡す。
 そう。今までは、俺が直接奴隷を買って、それを治して、売っていた。
 だが、これからは俺もさらに忙しくなる。
 1年後には学園にもいかなきゃいけないし、他にもやりたいことだってある。
 破滅フラグ回避のためには、まだまだやらなきゃいけないことがあるのだ。

 だが、金は欲しい。今まで以上に金を貯めておきたい。だから、俺は考えた。
 そうだ、奴隷に奴隷を治させて、奴隷に売らせればいいじゃないか。
 つまりは、奴隷売買の自動化である。俺が直接働かなくても、奴隷売買のラインが自動で動くようになれば、これ以上楽なことはない。
 俺はただ、あらかじめオーブに魔法を注いでおけば、あとは寝ていても収益が入ってくるという算段だ。

「ということで、アーデ。あとはよろしくたのむ」
「はい、もちろんです!」

 試しに、まずはアーデに仕事を頼んでみる。
 アーデには、護衛として別の屈強な奴隷もつけておいた。
 これがうまくいけば、アーデ以外にも何人かに同じようにオーブを渡そう。
 それで、自動的に奴隷がどんどん、増えていくはずだ。
 奴隷に奴隷を売らせて、儲ける。我ながら、すごいアイデアだ。
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