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⑹
しおりを挟む知らない部屋の中で途方に暮れ、もう一度クローゼットを見る…無いよりはマシか…スリッパを履き、窓を開け、枠に手をかける。
ガチャ
ヤバい!!執事さん来ちゃったよ!窓枠に足をかけ、身を乗り出そうとした時、一瞬で目の前に来た巨体にベッドまでぶっ飛ばされた。痛っっ…!あまりの衝撃の強さに起き上がることが出来ない。身を捩り、少しだけ体を起こす。目の前には…殺気を全身にまとったオーランド様が…ひぃー!!怖い!!怖い!!怖い!!恐怖の感情に支配される。しっぽをくるりと足の間に巻き込み、体を小さくして防御の体勢を取る。何なになに?!何でそんなに俺に殺気を放ってるんですか?!身請けを拒否したからですか?!いや、俺だって任務だったんですよー!とは口が裂けても言えない…。オーランド様の巨体が目の前に迫ってくる。
「ルイ。何人にこの体を許した?」
はっ?今なんと…?
「ルイの容姿だ。すぐに客は取れただろう?いくらだ?いくら払えば好きに出来る?」
棘のある言葉と一緒に、俺の着ていた寝間着はズタボロにされた。えっ?オッ、オーランド様、もしや俺を…抱く気…?
「金は後払いだ」
*
「オッ、オーランド様っ…はっ…ゃぁ」
「元から感度がいいのか?もう勃っているぞ。淫乱めッ!!」
思い切り乳首を引っ張られる。んぁッ!!優しさを感じることの無い手つきに悲しみが込み上げる。だが、無情にも体は反応してしまう。胸をまさぐっていた手がどんどんと下にスライドしていく。目的地に到着した指が少し圧を加え刺激を与えてくる。指がもふもふしているので、少し擽ったい…。
「随分と硬く閉じているな。まるで、娼館で働いていたとは思えない程だ」
バッ!顔を勢いよく上げると、こちらを見据えているオーランド様と目が合う…。まさか…そんな…。
「蜜月の館でメンル殿を見た瞬間に全てを理解した。ルイ、お前は諜報部員だな?初めてお前に告白された時…全く気配を感じなかった。俺は気配には鋭い。だが、お前は気づけば傍に居た」
「…」
「何が目的だった?俺の何を調べていた?それとも任務の間の暇つぶしか?答えろ!!!!」
「…」
俺は腐っても諜報部員。情報漏洩は死を意味する。どんな拷問を受けても決して口は割らない…。けど…
「任務内容については一切公言出来ません。ですが、任務外の事はお話出来ます。確かに…俺は諜報部員です。ご存知だと思いますが、主な仕事は情報収集です。だから…あなたの情報を集めるなんて簡単です…。でも、でも俺は…あなたの口から知りたかった。どんな食べ物が好きか、苦手な食べ物はあるか、休日は何をしているのか…あなたの事を直接聞きたかった…。諜報部員のルイではなく、ただのルイとして…。あなたに恋をする一人として…」
あなたが風邪気味だと言えば、体に優しいお弁当を。あなたが疲れ気味だと言えば、精のつくお弁当を。時にはお菓子も一緒に入れた。毎回空っぽになっているバスケットを受け取る事が楽しみでしょうがなかった。娼館に行く事は決定している。終わりが決まっているからこそ、それまでの間、告白し続けようと思った。面白いぐらいにオーランド様には告白を流されたが。いっそ清々しいぐらいに!!からかったわけじゃないんですよ。でも…そうですね。気が済むのであれば…
「酷く抱いていただいても結構ですよ?俺、体は丈夫な方ですから」
言ってて辛くなるわ…。好きな人に愛もないのに抱かれるとか、どんな拷問だよ…。目に涙が溜まってきた…落ちるなよ!!との願いも虚しく、涙は一粒、一粒そして留まることなく流れ出す。見られたくなくて、手を伸ばし近くにあった枕で顔を隠し、声を押し殺す。泣くとか最悪だな…ほんと俺って最悪…。
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