主人公に「消えろ」と言われたので

えの

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「お待ちしておりましたフレイ様、お連れ様。此方へどうぞ」


マスカレードマスクをしタキシードを着こなしたボーイに声を掛けられ、俺達はその後を付いて歩く。もちろん俺達も綺麗な刺繍が施されたマスカレードマスクを着用している。


仮面で目元を隠す事に違和感を覚えるべきだった。てっきりフレイは王弟だし?騒ぎになったら困るからとかありふれた理由だと思っていたが…はぁー俺もまだまだフレイについての理解力が足りないな。


席についてボーイからショーの説明が始まった。舞台の上に鎖で繋がれた数人の人間を指差す。


「今からこの人間達を鎖から解き放ちます。皆様にはこの中の誰が一番最後まで逃げる事が出来るかを当てていただきます。当たり前ですがオッズが高いほど皆様の儲けは多くなります。ショー開始前には人間達をパドック出来ますので、是非判断基準にしてください。今が丁度パドック中ですね…」


淡々と説明を聞いてはいたが…俺と同じ人間が…確かにショーに出場している奴等はまともな生き方をしていなかっただろう。真面目に生きていればこんな場所にいるはずがない。だからといって愉しめるか?と言われれば、答えはNOだ。不快な思いが勝る。


「フレイ様に提供して頂いた人間は今日の最後のショーに出場予定となっております。美麗しい人間がショーに出る事は稀ですからね。間違いなくメインイベントとなる事でしょう。では、何かありましたら呼び鈴を鳴らして下さい。扉の外に控えてますので」


扉が閉まる音と同時にフレイを仮面越しに睨みつけた。提供した人間だと?!俺は察しが悪い方ではない。間違いなくカノンの事だ。仕事を用意していると言っていたが…この事だったのか。


「フレイッ…おまッ…」


「怒ってる顔も可愛いね!仮面をしててもわかるよー。ユノの考えている通りだよ。俺のユノに手を出しておいてさ~こんなの生温いぐらいなんだけど」


そう言いながら、俺の手を引き自分の膝の上に座らせた。全ッ然伝わってない!!フレイの耳を引っ張りながら俺はお説教モードに突入した。


「わざわざ見に来なくていいだろ!!結末だけ…」


「お待たせしましたー!!!!」


突然、会場を揺るがすほどの大きな声がして、俺の声は簡単に掻き消されてしまった。なんだー?!なんてデカい声なんだ!!あの人か?舞台中央に真っ白なのっぺらぼうの様な仮面をつけた人が居た。俺の目は釘付けになる。えっ…あれ…衣装なの?ボディビルダーばりのマイクロビキニを履いてる。分厚い筋肉によくお似合いだ。仮面とビキニ…なんとも目を惹き付ける格好なこった。


「今宵、ショーにお集まりの皆様!!なんと!!今日はさるお方から素敵な人間を提供して頂きました!!きっと最高のショーとなることでしょう!!是非、最後までお付き合い頂きますようお願い致します。では…素敵なショーの開幕です…」


司会者の合図と共に一斉に人間達の鎖が解き放たれ、逃げ惑う様子が目に入った。足がもつれて転ける人、縮こまり背中を丸める人、一目散に走る人。
下衆なショーはまだ始まったばかりだ。






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