主人公に「消えろ」と言われたので

えの

文字の大きさ
上 下
11 / 14

しおりを挟む
「お待ちしておりましたフレイ様、お連れ様。此方へどうぞ」


マスカレードマスクをしタキシードを着こなしたボーイに声を掛けられ、俺達はその後を付いて歩く。もちろん俺達も綺麗な刺繍が施されたマスカレードマスクを着用している。


仮面で目元を隠す事に違和感を覚えるべきだった。てっきりフレイは王弟だし?騒ぎになったら困るからとかありふれた理由だと思っていたが…はぁー俺もまだまだフレイについての理解力が足りないな。


席についてボーイからショーの説明が始まった。舞台の上に鎖で繋がれた数人の人間を指差す。


「今からこの人間達を鎖から解き放ちます。皆様にはこの中の誰が一番最後まで逃げる事が出来るかを当てていただきます。当たり前ですがオッズが高いほど皆様の儲けは多くなります。ショー開始前には人間達をパドック出来ますので、是非判断基準にしてください。今が丁度パドック中ですね…」


淡々と説明を聞いてはいたが…俺と同じ人間が…確かにショーに出場している奴等はまともな生き方をしていなかっただろう。真面目に生きていればこんな場所にいるはずがない。だからといって愉しめるか?と言われれば、答えはNOだ。不快な思いが勝る。


「フレイ様に提供して頂いた人間は今日の最後のショーに出場予定となっております。美麗しい人間がショーに出る事は稀ですからね。間違いなくメインイベントとなる事でしょう。では、何かありましたら呼び鈴を鳴らして下さい。扉の外に控えてますので」


扉が閉まる音と同時にフレイを仮面越しに睨みつけた。提供した人間だと?!俺は察しが悪い方ではない。間違いなくカノンの事だ。仕事を用意していると言っていたが…この事だったのか。


「フレイッ…おまッ…」


「怒ってる顔も可愛いね!仮面をしててもわかるよー。ユノの考えている通りだよ。俺のユノに手を出しておいてさ~こんなの生温いぐらいなんだけど」


そう言いながら、俺の手を引き自分の膝の上に座らせた。全ッ然伝わってない!!フレイの耳を引っ張りながら俺はお説教モードに突入した。


「わざわざ見に来なくていいだろ!!結末だけ…」


「お待たせしましたー!!!!」


突然、会場を揺るがすほどの大きな声がして、俺の声は簡単に掻き消されてしまった。なんだー?!なんてデカい声なんだ!!あの人か?舞台中央に真っ白なのっぺらぼうの様な仮面をつけた人が居た。俺の目は釘付けになる。えっ…あれ…衣装なの?ボディビルダーばりのマイクロビキニを履いてる。分厚い筋肉によくお似合いだ。仮面とビキニ…なんとも目を惹き付ける格好なこった。


「今宵、ショーにお集まりの皆様!!なんと!!今日はさるお方から素敵な人間を提供して頂きました!!きっと最高のショーとなることでしょう!!是非、最後までお付き合い頂きますようお願い致します。では…素敵なショーの開幕です…」


司会者の合図と共に一斉に人間達の鎖が解き放たれ、逃げ惑う様子が目に入った。足がもつれて転ける人、縮こまり背中を丸める人、一目散に走る人。
下衆なショーはまだ始まったばかりだ。






しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

悪役令息に転生しけど楽しまない選択肢はない!

みりん
BL
ユーリは前世の記憶を思い出した! そして自分がBL小説の悪役令息だということに気づく。 こんな美形に生まれたのに楽しまないなんてありえない! 主人公受けです。

悪役令息、皇子殿下(7歳)に転生する

めろ
BL
皇子殿下(7歳)に転生したっぽいけど、何も分からない。 侍従(8歳)と仲良くするように言われたけど、無表情すぎて何を考えてるのか分からない。 分からないことばかりの中、どうにか日々を過ごしていくうちに 主人公・イリヤはとある事件に巻き込まれて……? 思い出せない前世の死と 戸惑いながらも歩み始めた今世の生の狭間で、 ほんのりシリアスな主従ファンタジーBL開幕! .。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ HOTランキング入りしました😭🙌 ♡もエールもありがとうございます…!! ※第1話からプチ改稿中 (内容ほとんど変わりませんが、 サブタイトルがついている話は改稿済みになります) 大変お待たせしました!連載再開いたします…!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

処理中です...