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しおりを挟む「んッ…眩しッ…」
眼球に刺さる様な眩しさに開きかけた瞼をギュッと瞑り目を手で覆う。そして少しづつ意識も一緒に浮上してくる。そーいや俺…倒れたんだっけ?なんで…倒れたんだっけ…確か…。
「フレイッ!!」
意識が覚醒し、ガバッと体を勢いよく起こし辺りを見渡す。だが目が霞み良く見えない。何処だ?フレイ…?居ないのか…?
「起きたのか」
誰?声をかけてきた人を確認する為に、ぼやけた目を手の甲で擦り、顔をプルプルと横に振る。
「可愛いらしい仕草だな」
笑いを堪えるような声がすぐ側で聞こえた。声の主を見上げ顔を確認するが…えっ、ほんと…誰?え?困惑の色を浮かべる俺を他所に、その人は俺のベッドに腰掛けてきた。
「フレイが色々とすまない。だが許しやって欲しい…あいつが誰かに執着するなんて初めての事なんだ」
「フレイが…?ってか…誰ですか?」
この人…何となくだけどフレイに似てる気がする。雰囲気は全然違うけど、顔のパーツかな?んー。気づけば下から顔を覗き込みマジまじと観察していた。
「可愛い…ンンッ!!フレイは私の弟だ。君がユノだね?君のような子と家族になれるとは光栄だな」
歓迎の言葉と一緒に優しく微笑みながら頭を撫でてくれる。そういえばフレイには頭を撫でて貰った事無かったなー。大きな手だ。なんとなく安心する。ってか私の弟って事は…
「お兄ちゃん?」
「ブハァッ…!!」
鼻血を噴いて崩れ落ちるお兄ちゃん。なんだ?さすがフレイの兄弟だけはあるな。行動が意味不明だ。国の頂点と2番目がこんな人達で獣人国は大丈夫なのだろうか?普通に心配だ。
「くっそッ!!可愛すぎか…!!んッ、失礼した。フレイの事なのだが…何処まで知っている?」
「フレイの事ですか?あぁー…。俺…王弟って事しか知らなくて…その…すみません。浮気野郎って事は今日知りました」
「浮気野郎?!はぁ…そんな言葉が出てくるとは…。ユノ、フレイの昔話をしよう。そうだな…ケレス大陸を離れるまでの話になるが…」
ゆっくりとお兄ちゃんの口から紡ぎ出される言葉に耳を傾ける。信じられないエピソードの数々に目が点になる。えっ?フレイの話だよな?感情の起伏がない?絶対に笑わない?何に対しても無関心?俺の知っているフレイとかけ離れすぎてる…。
「…というわけでだ、フレイが君を連れ帰った時は驚いたもんだ。理解してくれたか?」
「今の話って本当にフレイですか?人違いじゃ…」
「それは本人に確認するといい。フレイ!!聞いているんだろう?」
そのセリフを合図に扉が開く。そこには無表情のフレイが突っ立っていた。こちらを見つめているのに動こうとしない。いつもなら両手を広げて近づいてくるはずなのに…。
「フレイ…俺…」
なんて言葉を続けて良いのかわからない。浮気野郎とか勘違いしてぶん殴ろうと思ってたし、俺を突き動かしていた動力源が無くなった今、めちゃくちゃ気まづい。
「さて、私は席を外そう」
お兄ちゃんの背中を見送り、部屋にフレイと二人きりになった。未だに扉の側から動こうとしない。フレイが何を思っているかなんて知らんが…とりあえず疑った事は謝ろう。ベッドから足を降ろし床の上に置く。何も身に付けていない足裏にひんやりと絨毯の冷たさが伝わってくる。一歩、一歩、ゆっくりと歩き触れそうな距離まで近づく。今度は俺が両手を広げて待つ。
「おいで」
俺の声が聞こえているはずなのに動こうとしないフレイ。お兄ちゃんの話を気にしてるのかもなー。知られたくなかった過去だったのかも。
「フレイ、おいで。俺はどんなフレイでも好きだ」
俺とフレイに足りない物。それは会話だ。俺はもっとフレイの事を知ろうと努力をすべきだった。それを怠った結果がきっと今回の様なことに繋がったんだ。フレイ、お前も一緒だ。俺の事を知ろうとしなかった。だからお互い様だな?
大きな背中に手をまわし、フレイの温もりを全身で堪能する。はぁー落ち着く。色々と聞きたいし、話したい事はあるが…とりあえず今はフレイを補給する事が最優先だ。
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